アメリカ国務省報道官のショーン・マコーマックは、事件について「我々は責任ある国際的な諸海洋機関や諸条約の加盟国として我々の責務を果たし、公海上での遭難信号に対応したのです。」と説明した[7]。
北朝鮮の国営通信社である朝鮮中央通信は、この事件についてアメリカに対し前例がないほど好意的な声明を発した。アメリカの支援に謝意を表するとともに[8][9]、アメリカと北朝鮮の協力によって事件が解決されたと強調したのである[10][11]。さらにこの事件が「テロとの闘いにおける」両国間の「協力の象徴」であるとも述べていた[7]。
なおアメリカは1987年以来、北朝鮮をテロ支援国家に指定していた[12]。ただ9月には、北朝鮮が洪水時のアメリカによる人道支援に感謝する声明を発していた。また7月に国内の原子炉の稼働を停止するなど核問題を解決する姿勢を見せ、それによりアメリカとの関係を改善しテロ支援国家指定を解除させる道を模索していた[7]。アメリカや韓国もこうした北朝鮮の動きを「非常に協力的」だと評価していた[7]。大紅湍号事件はそうした関係改善の兆しが生まれたさなかに発生した事件であった[7]。アメリカ側も、11月2日に国務次官補で北朝鮮核問題をめぐるアメリカ代表派遣団団長のクリストファー・ヒルが大紅湍号事件について、アメリカ軍は善意のしるしとして北朝鮮船を助けたのだと述べた[7]。この事件を機に北朝鮮はテロ支援国家指定解除プロセスの加速を目指し[7]、翌2008年10月11日にアメリカが北朝鮮をテロ支援国家から除外するに至った[13]。
韓国のメディアであるデイリーNKによれば、北朝鮮国内のメディアは大紅湍号事件を報じておらず、北朝鮮国民にも事件の存在自体が知らされていなかった[14]。北朝鮮半国営の労働新聞は、11月3日にもアメリカが「南北朝鮮の調和、連帯、統一への主要な障害」であり、外交的には「平和」「和解」などの言葉を発しているが国内向けには「北朝鮮への侵略」を促している、などと従来通りアメリカを激しく非難する論調の記事を出していた[14]。デイリーNKの取材を受けたある脱北者は、国内向けに強大な軍事力を誇示している北朝鮮にとって船員が海賊に捕らえられたと認めるのは恥であり、またアメリカの支援によって北朝鮮人が生還したと認めるとも考え難い、と分析している[14]。