宇根豊

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宇根 豊(うね ゆたか、旧姓 永藤、1950年6月2日 - )は、日本の百姓にして思想家。農と自然の研究所代表。百姓の経験を思想化し表現することに生涯をかけて来た。

1950年長崎県島原市で生まれた。島原高校卒業、九州大学農学部農学科卒業。1973年より福岡県の農業改良普及員。1974年宇根公代と結婚し、宇根姓を名乗る。1978年より減農薬稲作を提唱した。1988年糸島郡二丈町(現糸島市)にて就農。2000年福岡県庁を退職。NPO法人「農と自然の研究所」を百姓仲間と設立し、代表理事に選任される。2004年社会人入学していた九州大学より農学博士の学位を授与。2010年農と自然の研究所はNPO法人を解散して任意団体へ移行。

日本農業経営大学校講師、東京農業大学客員教授、福岡県生物多様性策定委員。

業績

1978年より「虫見板」を用いた「減農薬稲作」を技術化、理論化して、普及した。それまでの農薬のスケジュール散布を科学的に批判し、百姓自らが散布の是非を判断するもので、それまでの上意下達の近代化技術の実践的な変革運動となった。1983年には、「減農薬米」の産直を福岡市農協と生協県連(現在のグリーンコープ)とで始めた。これは米流通の革新であった。1984年には害虫・益虫以外の虫が多いことに気づき、「ただの虫」と命名し、現在は広く使われ、学会等でも使用されている。

減農薬運動は1985年宇根が『減農薬稲作のすすめ』4000部を自費出版することによって、一挙に広がった。その後この本は農文協から『減農薬のイネつくり』としてリメイクされ出版されると、さらに全国に広がった。

1990年代の宇根は、田んぼの生きものと百姓仕事の関係を明らかにしていった。日本の赤とんぼ(主に薄羽黄トンボや秋茜)のほとんどが田んぼで生まれることを突きとめ、農業生産物に生きものたちも含めるように提案し、作物同様に生きものも育てる「環境稲作」を技術化した。1997年には『第1回農業と自然環境全国シンポジウム』を百姓主導で開催し、全国から1200人の参加者が前原市(現糸島市)に集うほどの広がりをもった。

2000年代は「農と自然の研究所[1]」に拠って、田んぼの「生きもの調査」の手法の開発・普及、農業を「自然環境まで生産している」という考えに転換させる「環境支払い」政策を具体的に提案、田んぼの生きものとごはん一杯の関係を数値化し、さらに図示することに成功[2]、田んぼの「生きもの指標」と「草花指標」を製作して、百姓のまなざしを豊かにとりもどす方法を提示、田んぼの生きもの(動物・植物・微生物)を多くの人の協力で「田んぼの生きもの全種リスト」してまとめて、改訂を重ねて、日本に棲息する5668種をリスト化[3]。これは世界でも前例がない取組みであった。

2010年代は、百姓に専念しながら、農業の近代化を深く問い直す思想的な営みを続けている。まず2011年に出版した『百姓学宣言』で、「百姓学」の理論化をすすめ「内からのまなざし」をその核に据えた。その後「農の本質」への思索から「農本主義」の発掘と再評価に取り組み、現代に生かす「(新)農本主義」の本を相次いで出版した。さらに、百姓の「天地自然論」をまとめ、最近はICT、AI技術の農業への導入に危機感をもち「反スマート農業」の理論化をすすめている。

引用元

  1. 『減農薬のイネつくり』(農文協)
  2. 『農は天地有情 宇根豊聞き書き』佐藤弘(西日本新聞社)活動実績はこの本による。
  3. 『田んぼの忘れもの』(葦書房)
  4. 『天地有情の農学』(コモンズ)宇根豊の学位論文
  5. 『宇根豊の減農薬稲作から農本主義への思想展開』大石和男(「農林業問題研究」第56巻・第3号、2020年9月)思想展開はこの論文による。
  6. 「農と自然の研究所」ホームページ(http://hb7.seikyou.ne.jp/home/N-une/)

受賞歴

  • 1985年 「第11回山崎農業賞」(山崎農業研究所)
  • 1998年 「地上50周年記念論文賞」(家の光協会)
  • 1998年 「第4回地方自治研究賞」(自治労)
  • 1999年 「水環境学会」九州支部文化賞(水環境学会九州支部)
  • 2000年 「日本農業普及学会」第1回奨励賞(日本農業普及学会)
  • 2003年 「日本作物学会」第2回技術賞(減農薬稲作技術の研究と普及、日本作物学会)
  • 2006年 「第23回農業ジャーナリスト賞」特別賞(『国民のための百姓学』、農政ジャーナリストの会)
  • 2006年 「第7回明日への環境賞」(朝日新聞社、農と自然の研究所)
  • 2009年 「第1回環境アワード」(環境省・イオン財団、農と自然の研究所)
  • 2020年 「日本農業普及学会」学術賞(日本農業普及学会)

評価

著書

脚注

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