寝ぼけ署長
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作品一覧
終戦直後に書かれた作品だが、作中の時代設定は戦前となっており、作中に登場する警察機構も内務省時代のものである。
ある地方都市の警察署に、五道三省(ごどう さんしょう)という風変わりな署長が赴任してきた。署でも官舎でも寝てばかりで、口さがない新聞からは「寝ぼけ署長」というあだ名をつけられ、署内でも世間からもお人よしの無能だと思われていた署長だが、5年後に離任することになった際には、署内からも世間からも別れを惜しむ人々が続出し、貧民街では留任運動すら起こされることとなった。
五道署長の在任中、犯罪事件は前後の時期の十分の一、起訴件数も四割以上減少していた。そのため「寝ぼけ署長でも勤まる」などと揶揄されていたが、実は切れ者で辣腕家の署長が、いち早く真相を突き止めており、しかも、人情家の署長が、罪を憎んで人を憎まずの精神から、過ちで罪を犯してしまった人間を可能な限り救済しようと、巧妙に工作していたからだったのである。そんな署長の活躍ぶりを、署長の秘書のような役割をつとめていた「私」が回想する。
- 中央銀行三十万円紛失事件(『新青年』1946年12月号)
- 海南氏恐喝事件(1947年1月号)
- 一粒の真珠(1947年2月号)
- 新生座事件(1947年3月号)
- 眼の中の砂(1947年4月号)
- 夜毎十二時(1947年5月号)
毛骨屋 ()親分(1947年9月号)- 十目十指(1947年10月号)
- 我が歌終る(1947年12月号)
- 最後の挨拶(1948年1月号)
当初は全3話の予定だったが、読者人気が高かったため連載を延長した[1]。
主な登場人物
- 五道三省(ごどう さんしょう)
- ある地方都市の警察署長。署でも官舎でも寝てばかりいるため、毎朝新聞から「寝ぼけ署長」というあだ名をつけられた。年齢は40-41歳くらい。太っており、二重あごで腹のせり出た鈍重そうな体つき。独身。
- 一見するとぐうたらな無能者にしか見えないが、じつは極めて有能で、たいていの仕事は1時間もあれば片づけてしまうため、暇をもて余して寝ている、というのが真相である。すさまじい読書量の持ち主で、英・独・仏の三か国語のほか、漢文も読みこなせる。愛読書は詩、詩論、文学史などの評論書。
- 極度の人情家で、罪を憎んで人を憎まずの精神を徹底させている。そのため、事件の摘発よりもソフトランディングの方を優先しており、そのためなら時には違法行為すらも厭わない。
- 赴任してくる前は警視庁で13年間を過ごしたが、その際は警視総監も手を焼く横紙破りで通し、善しと信じたら司法大臣と組み打ちしてもやりぬいてきた。そのため、3度も官房主事に推されながら、3度とも棒に振っている。桃井裁判所長は学校の後輩、渡辺検事正は同期生であり、財部知事と三人で五道を警察署長として呼び寄せた(「毛骨屋親分」)。
- 私
- 本作の語り手。独身。五道署長の秘書のような役割を果たしている。
- 太田(おおた)
- 署の司法主任。
- 青野庄助(あおの しょうすけ)
- 毎朝新聞社会部の記者。「寝ぼけ署長」の名づけ親で、他にも「嗜眠性脳炎おやじ」というあだ名をつけている。口が悪いが、「私」からは「正義感のつよい信頼のできる男」と評されている(「新生座事件」)。五道署長の真の手腕を知ってからは熱狂的なファンとなる。