プリオン病と治療可能な疾患の鑑別診断のためいくつかのプリオン病のバイオマーカーの検査が行われる。
- PMCA法
PMCA(protein misfolding cyclic amplificaiton)法は異常プリオン蛋白を短期間に人工的に増幅させる技術である。プリオン感染脳乳剤(異常プリオン蛋白を含む)と正常動物由来の脳乳剤を混合する。混合すると正常プリオンの蛋白が異常プリオン蛋白への変換が開始される。適宜超音波処理を行い、異常プリオン蛋白の凝集体を断片化することで変換効率が高まる。培養と超音波処理を繰り返すことで異常プリオン蛋白を増幅させる。PMCA法は極微量の異常プリオン蛋白を検出可能な量にまで増幅することができるためプリオン病の早期の診断法として期待されていた。しかしPMCA法の試験管に増幅に条件が動物によって、プリオンの種類によって異なり、孤発型CJDの高効率な増幅は未だに達成されていない。
- RT-QUIC法
長崎大学の新らは脳乳化剤の代わりに大量調整の容易な大腸菌由来リコンビナントPrP(recPrP)を変換反応基質とする異常型PrP増幅系を開発した。recPrPを用いた場合に超音波処理をだけではなく間欠的に激しく撹拌することによっても増幅が劇的に促進されることが判明し、この方法をQUIC(quaking-induced conversion)法と命名した。QUIC法ではrecPrPのアミロイドフィブリルの形成が相対的に起こりにくいためアミロイドフィブリルに特異的に結合し蛍光を発するチオフラビンT(ThT)の蛍光強度測定で測定することが多い。その後QUIC法はより簡便なアッセイ系への発展が期待された。その後、新らはシード依存的なrecPrPフィブリルの増幅過程を蛍光プレートリーダーでモニターすることで、検体中の異常プリオン蛋白の有無を判定できる高感度な異常型PrP増幅法を開発した。これをRT-QUIC(real-time QUIC)法と命名し、長崎大学で測定可能である。
RT-QUIC法は主に髄液から異常プリオン蛋白を検出する目的で用いられており2011年の新らの報告では感度87.5%であり[4]、2012年のgreenらの報告では感度88.6%であった[5]。髄腋のほか嗅上皮での診断の有効性も報告されている[6]。
急速進行性認知症の重要な原因疾患として脳悪性リンパ腫もあげられる。中枢神経系原発悪性リンパ腫による急速進行性認知症は治療可能なことが多いという報告がある[7]。血管内リンパ腫による急速進行性認知症も多数報告されており、死亡例の報告が多い[8][9][10][11]が改善例[12][9]の報告もある。神経症状は小血管内腔に腫瘍細胞が充満した結果の虚血と考えられている[13][14]。血管内リンパ腫の頭部MRI所見としては橋のT2延長病変、非特異的白質病変、梗塞様病変、髄膜肥厚の4パターンが報告されている[15]。さらに腫瘤性病変も加えて5パターンとする報告もある[16]。MRIにおけるT2延長病変は虚血性病変と考えられている[17][18][19][20][21]が、治療によってMRI所見が改善する例もある[22][16]ため腫瘍による細胞密度の増加を示している可能性もある。また剖検例と比較するとMRIではすべての病変が検出できているわけではないと考えられる[23][16]。
膠原病やサルコイドーシス、橋本脳症など免疫介在性認知症においても急速進行性認知症は報告されている[2]。
- サルコイドーシス
サルコイドーシスによる急速進行性認知症も報告されている[24][25][26]。神経サルコイドーシスによる認知症と報告されている例にはしばしば病理学的にはサルコイドーシスと診断されていない例も含まれている。脳サルコイドーシスの脳実質病変は3パターンの頭部MRI所見が知られている[27]。
急速に進行するレビー小体型認知症の報告があり急速進行性びまん性レビー小体病という[28]。