悲しみ

負の感情のひとつ From Wikipedia, the free encyclopedia

悲しみ(かなしみ、: sadnessあるいはsorrowあるいはgrief)とは、する人や物を失うといった自分では修復することが困難な事態によって引き起こされる情動(emotion)であり、切なさや泣きたくなるような心の痛みだけでなく、あきらめや無力感を伴う[1]

概説

が締め付けられるといった身体的感覚と共に、がでる、意欲・行動力・運動能力の低下などが起きる。

心理学者のロバート・プルチック(Robert Plutchik)の1962年の文献によれば、悲しみは人間の基本情動の8要素(喜び,受容,驚き,恐れ,悲しみ,嫌悪,期待,怒り)の一つであり、情動を円環状に配置した図では、喜びと対照的な情動として、対極の位置に配置される[1]。一方で、悲しみを基本的情動に入れるか否かで研究者の間で意見が分かれているという[2]

悲しみという情動は、それによって特定の行動が発現するというよりもむしろ活動の低下や引きこもり(他者との接触を避けること)が起きることが特徴である[1]

一般的に愛着の"対象が失われた" 時に感じられる情動である。愛着の対象というのは、人、自分の身体の一部、自分の役割などのほか、物品など、さまざまな人やコトやモノがありうる。

悲しみは「深い、浅い」と表現され、対象と自身とのつながりが強い程、また自分ではどうにもならない、と感じられるほど深い悲しみが訪れる。「対象が失われる」の最たる例は身近な人のである。また自分の身体の一部(腕や脚、運動能力、眼や耳、視覚や聴覚や味覚などの感覚)を失うことや、身体的健康を失ってしまうことも含まれる。恋人との破局、配偶者との離婚なども含まれる。大事にしていた物が壊れて直せない、楽しみにしていた行事が無くなり自分ではどうにもならない、といったことも含まれる。また自分が大切に思っていた自分の役割を失い自分ではどうにもならないこと、たとえば母親としての役割や父親としての役割を失う、指導者や指揮官としての立場を失う、友人としての役割を失う、ということも含まれる。またさらには、距離が遠くなること、たとえば単身赴任や、子供が家庭から巣立ってしまいめったに会えなくなる、といったことも含まれる。

多くの場合、何かを失ったと気づいた直後は、反射的になにがしかの怒りを感じ、と同時に反射的に "どうにかする" ために心の一部が働き始めるが、次に "自分ではどうにもならない"と 気づくとともにこみ上げてくる感情である。したがって怒りと悲しみの感情は心に同居することもある。過去を回想して "自分は 失った" と何度も噛みしめる場合は、逆の順番でつまり悲しみの情動の次に怒りが感じられたり、どちらが先とか後ではなく、怒りと悲しみの情動が交互に繰り返し現れることもある。

英語ではsadnessやsorrowと言い、特に深い悲しみは grief(グリーフ)と言う。

グリーフ(深い悲しみ)

英語で深い悲しみを指す「grief グリーフ」は、心理学用語としては「悲嘆」などと和訳する[1]

グリーフは身体的症状や生理的反応まで引き起こす。心理学的にはグリーフは4つの側面の反応から成ると理解されている[1]。 (1) 悲しみや怒りなどの情動[1][1]
(2) 故人への没頭などの認知[1] (故人のことばかり思い出してしまうこと)
(3) 故人を探し求めるなどの行動[1](故人の姿、痕跡を探しまわってしまうこと)
(4) 故人と類似した身体愁訴などの身体的変動[1] (故人の身体症状に似た身体症状が自分に現れること)
こうした反応自体は人類におおむね共通している[1]

ただし、グリーフ(深い悲しみ)をどのように表現するかは、喪の儀式のように、各社会の社会的規範によって規定される[1]

小此木啓吾の1979年の文献『対象喪失 ― 悲しむということ』によれば、精神分析学では愛情や依存の対象である人物・所有物・環境・身体の一部などを失う体験を「対象喪失 (object loss)」と呼び、喪失体験後の心理過程を「悲哀 (mourning)」とよぶ[1]

親類を亡くした際、葬式の後に「に服す」期間があるのが一般的であるが、これは悲しみを克服するための期間であり、フロイトはこの期間で己がなすべきことを「悲哀の仕事」と名づけた。

悲しみを克服する期間が十分に与えられない場合、人間は抑圧状態となり、うつ病引きこもり不感症多幸症などといった症状があらわれたり、それらが引き金となり、悲しみを忘れようとして他の物事に熱中し、過労になったりする等、悲しみという感情は時に怒り憎しみ以上に感情や行動に狂いを生じさせてしまう事がある。

年齢と悲しみ

これに関しては、心理学者のマイケル・ルイス英語版 が1993年の文献で提示された発達理論がある。それによると、悲しみは生後6ヵ月以前にすでに観察される原始的情動の一つであり、各人の学習や経験によらず発達の早期段階から見いだされる。また心理学者のマイケル・コールの1986年の文献によれば、悲しみの制御は2歳以降にその強弱の調整が、たとえば眉間に皺を寄せるといったネガティブな情動の自己制御などとして見られ、4歳以降はポーカーフェイスなどによる"中性化"、6歳以降はマスキング(悲しいのに楽しそうに装うといった情動が逆転した態度形成)が可能になる。さらに成人では自我機能が発達とともに、さまざまな心理的な防衛機制を用いた悲しみへの対処が可能になり[1]、たとえば 意識から追い払う、あるいは抑えるといった、心理学用語で言う "(情動の)抑圧 repression"が可能になる[1]

脚注

関連文献

関連項目

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