ある日、日本の国土を構成する約2000の島々が、その上の住民ごと忽然と地球上から消滅した。残された世界の人々がどれだけ調査を重ねても原因がわかることはなかった。
それから30年後。かつて日本列島があった海の上を1隻の船が運行していた。その船上にて、駒木咲夫と名乗る一人の日本人船員が、乗り合わせた乗客の一人に、「私が日本を売りとばしたいきさつを、おききになりませんか?」と語り始める。
30年前、下級船員でペテン師だった駒木は、マルセーユの安酒場で、金持ちらしい、カエルのような奇妙な小男に出会った。「どこか島を買いたい」という男に、彼は手付金をだまし取ってやろうと、「日本そのものを買いませんか?」と持ちかける。話を本気にした男は、駒木を代理人契約書にサインさせる。ペテンをしかけるつもりだった駒木は、気がつけば男の言いなりになるがまま、日本列島の不動産買い占めに奔走する羽目になる。そして日本列島の土地という土地は、巧妙な手段で、誰にも気づかれぬまま男の所有になっていく。