月館の殺人
From Wikipedia, the free encyclopedia
ゆいレールしか鉄道がない沖縄県で育った女子高生の雁ヶ谷空海は、鉄道嫌いの母の影響もあり、未だかつて電車に乗ったことがない。母の死から2か月後、弁護士の中在家に「母方の祖父が生きていて、財産相続の件でぜひ北海道まで来てほしい」と伝えられる。祖父の待つ月館へは、鉄道で行かなければならないとのことである。空海が乗るのは、20時40分稚瀬布発月館行の「幻夜」号。迎えに来た中在家の運転で稚瀬布駅へ向かう途中、車がスリップして立往生してしまうが、同じく「幻夜」に乗るという青年・日置が通りかかり、空海は日置の車に同乗して稚瀬布駅へ向かう。
「幻夜」はオリエント急行の車輌を用いた編成で、革張りのソファ、カーペット敷きの床、バーやピアノまで完備された豪奢な内装を持つ列車だった。乗客は全部で7人だが、空海以外の6人は皆「テツ」で、しかも祖父の招待客らしい。そして空海はこの6人の中から結婚相手を選ぶことが、財産相続の条件だと思い込む。いつしか話題は「首都圏連続殺人事件」に及ぶ。犯人は必ず死体の側にあるカードを残していくという。そして犠牲者は全員それぞれに名の通ったテツであることがわかってくる。
深夜、「寒くて眠れない」という乗客の苦情により、日置の客室を覗いてみると、そこには彼の惨殺死体と、首都圏連続殺人犯が残していくというカードが残されていた。
登場人物
主要人物
- 雁ヶ谷 空海(かりがや そらみ)
- 高校3年生。沖縄出身。好物はバナナ。
- 鉄道を極端に嫌う母親のため、モノレールを含めあらゆる鉄道に乗ったことがなく、修学旅行にさえ行かせてもらえなかった。
- 亡くなった父親はパイロットだったが、飛行機にも乗ったことがない。
- 小・中学生時代は男子に「クウカイ」呼ばわりされからかわれていた。そのため、軽度の男性不信の節がある。
- 日置 健太郎(ひおき けんたろう)
- 26歳。千葉出身。カエデ探偵事務所に勤務。自称・鉄道考古学テツ。
- 「幻夜」の乗客として稚瀬布駅に向かう途中、雪で車が立往生した空海と中在家に遭遇し、空海を連れて「幻夜」に乗車する。
- テツの中では最も常識的な言動で空海の信頼を得るが、深夜に個室で死亡しているのが発見される。
- 今福 健至(いまふく けんじ)
- 35歳。埼玉出身。獣医師で専門は内科。好物はジャーマンハンバーグ定食。
- コレクションテツで、車中の様々なものを盗み出そうとしては止められる。
- 中ノ郷 清(なかのごう きよし)
- 40歳。東京出身。機器メーカーエンジニア。好物は柿ピーと冷凍みかん。
- 撮りテツで、あらゆる休みを全て山口線の撮影に費やしており、それが原因で妻と離婚した。
- 杉津 治彦(すいづ はるひこ)
- 30歳。京都出身。フリーター。好物はイチゴジャムを塗った食パン。
- 乗りテツ。鉄道全駅の全設備を使い切った乗降を達成している。毎回駅の公衆電話で実家に電話しては親に迷惑がられている。
- 沼尻 孝一(ぬまじり こういち)
- 24歳。新潟出身。市職員。好物は新潟名物へぎそば。時刻表テツで「理想のダイヤ」を考案し、それがJRに一部採用される。
- 空海に一目惚れし「空海とオレのラブ・ダイヤ」を作成する。
- 竜ヶ森 集(りゅうがもり しゅう)
- 23歳。鎌倉出身。本人曰く「何もしてない」というが、大学に籍は残っているとのこと。
- 好物はカレーライス。模型テツで、車内のあらゆるものを黙々と採寸する。
- 両親も住む敷地30坪の自宅に、実物に換算すると総延長500キロメートルに相当する約3.3キロメートルのNゲージの鉄道模型レールを張り巡らせている。
- 聞かれもしないのに自らの得意分野を語り倒す他のテツと異なり、自ら進んで話すことは稀で、他者から何かを問われても非常に短い言葉を発するのみ。場の空気に囚われずマイペースを貫く。
「幻夜」乗務員
- 川俣 孝夫(かわまた たかお)
- 車掌。
- 宮田 一郎(みやた いちろう)
- 機関士。
- 添田 二郎(そえだ じろう)
- 機関助士。
- 三国 信一(みくに しんいち)
- サービスマン。窓からアライグマに餌をやっていた。
- 唐津 勘助(からつ かんすけ)
- バーテンダー。ミステリー小説が好きでピアノバー車に本を置いている。
- 倉吉 修(くらよし おさむ)
- ピアニスト兼料理人。ピアノのレパートリーは広く、『救急戦隊ゴーゴーファイブ』の主題歌も演奏できる。
月館家関係者
- 中在家 勉(なかざいけ つとむ)
- 月館家の顧問弁護士。母親を亡くし孤独の身となった空海を迎えに来る。元検事(ヤメ検)だが民事専門で、得意分野は相続関係。
- 愛車はトヨタ・セルシオ。
- 月館 十蔵(つきだて じゅうぞう)
- みずほの父。北海道在住の資産家にして究極の鉄道マニアで、巷では「キング・オブ・テツ」の異名をとる。
- 鉄道を偏愛して家庭を顧みず、さらには「娘の結婚にも鉄道マンを」と口を出そうとしたことから、みずほに離反されてしまう。
- みずほの死を聞き、唯一の肉親である空海に遺産相続の話をするべく、北海道へ空海を招く。
- 室木(むろき)
- 月館家の執事。
- 魚沼(うおぬま)
- 月館家の料理人。
- 小本(おもと)
- 月館家のメイド。
- 大隅(おおすみ)
- 月館家の使用人。
- 小松島(こまつしま)
- 月館家の使用人。
その他
「幻夜」号
本作品の舞台となる列車「幻夜(げんや)」号は、D51形蒸気機関車がオリエント急行の客車6両をけん引する架空の夜行列車である。
編成
- 機関車(D51 241) - 実車は国鉄において最後まで現役で営業運転された蒸気機関車だが、1976年に追分機関区で保管中に火災で焼失したため、現実世界では現存していない。
- 1号車 - 荷物車。これ以降の客車はすべてオリエント急行の車両。荷物室の他、調理準備室や工作室がある。日本の鉄道車両にはほとんどないキューポラを持つ。
- 2号車 - 食堂車。ロングテーブルが置かれ、ディナー会場となる。
- 3号車 - プルマン車(プルマン式の食堂車)。向かい掛けの2人用テーブル席と個室からなる。
- 4号車 - ピアノバー車。
- 5号車 - 寝台車。一等寝台個室で全10室。部屋割は以下の通り。
- 1、2号室:空室、3号室:中在家(乗車せず)、4号室:竜ヶ森、5号室:沼尻、6号室:中ノ郷、7号室:空海、8号室:杉津、9号室:今福、10号室:日置。
- 6号車 - スタッフ車。3人部屋個室。
通過駅・時刻
途中駅はすべて無停車。登場する地名・駅名は全て架空のものである。
- 20時40分 稚瀬布(ちせっぷ)発
- 20時45分 毛内別(けねべつ)
- 21時17分 樽昼(たるびる)
- 21時51分 幌沸(ほろふつ)
- 22時30分 色別(いろべつ)
- 23時5分 楓古潭(かえでこたん)
- 23時30分 越冠(こしかっぷ)
- 1時34分 留津(るっつ)
- 2時 幸国(こうこく)
- 4時34分 曲呂(まがろ)
- 5時6分 志振戸井(しぶりとい)
- 5時31分 北向(ほっこ)
- 6時 無定渓(むじょうけい)
- 7時 月館(つきだて)着