村松喬 (細胞生物学者)
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若い研究者の時は、糖タンパク質の糖鎖を大きく切り出すエンドグリコシダーゼが存在することを発見した[3]。このとき見出された酵素(Endo-D)は免疫グロブリンに結合する糖鎖の機能を明らかにするのに役立った[4]。Endo-Dなどのエンドグリコシダーゼはアスパラギンに結合した糖鎖の生合成機構解明でも重要な役割を果たした。つづいて多分化能を持つEC細胞(ES細胞の原型)に、糖タンパク質結合性の巨大な糖鎖を発見した[5]。この糖鎖はこれらの細胞を特徴づけるマーカーの、いくつかを担っていた[6][7]。
研究室を主宰するようになって、多くの共同研究者と共にEC細胞を出発点として、より幅広く仕事を進めた。まず、成長因子あるいはサイトカインに属するミッドカインを発見し[8]、その生理的、病理的意義を明らかにした[9][10][11]。特に注目されるのは、炎症性細胞の遊走を促進するなど免疫現象と深く関わること[10]、傷害を受けた組織の生存と修復を助けること、そして様々ながんで発現が増強し、がんの発生と進展に寄与すること[11]である。
また、免疫グロブリン様構造と特異な膜貫通領域を持つ細胞膜糖タンパク質、エンビジン(GP70)を発見した[12]。さらに類似の構造を持つタンパク質を見出し、ベイシジンと命名した[13]。細胞膜糖タンパク質の新ファミリーが発見されたのであり[7][14]、その後、世界各地の研究で、このファミリーは多彩な機能を果たすことが分かった[15][16]。ベイシジンはマラリアの発症にも重要である。村松らはベイシジンが精子形成[17]、網膜細胞の機能と生存維持[18]に必要なことを明らかにした。
そして糖鎖のN―アセチルグルコサミンに硫酸基を転移する酵素(GlcNAc6ST)を分子クローニングによって初めて同定し[19]、その産物の糖鎖が免疫現象、ことにリンパ球ホーミングで果たす役割を国際共同研究で解明した[20]。
略歴
- 1959年 東海高等学校卒業
- 1963年 東京大学理学部生物化学科卒業
- 1968年 東京大学大学院理学系研究科博士課程修了
- 1968年 アルバートアインシュタイン医科大学研究員
- 1972年 神戸大学医学部講師
- 1973年 神戸大学医学部助教授
- 1977年 パスツール研究所客員研究員
- 1980年 鹿児島大学医学部教授
- 1993年 名古屋大学医学部教授
- 2004年 名古屋大学名誉教授
- 2004年 愛知学院大学心身科学部健康科学科教授
- 2008年 愛知学院大学心身科学研究所所長[21]