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棺桶ハウス (香港)

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棺桶ハウス(かんおけハウス、英: coffin home、coffin cubicle、繁体字中国語: 棺材房)は、香港でみられる極めて狭い居住区画の通称である。既存の住戸内部を細かく区切り、1人が横になれる程度の空間を木板や合板などで箱状に囲ったものを指す[1][2]。

香港の住宅地区、旺角にある商店街

香港の極小住宅には複数の形態があり、棺桶ハウスと、金網で寝床を囲う籠屋(英語: cage home)、一般的な劏房(分割住宅、subdivided unit)などは必ずしも同一ではない。『ガーディアン』は2025年、棺桶ハウスをシングルベッドよりわずかに大きい箱状の空間、籠屋を同程度の大きさながら金網で囲われた空間として区別している[2]。香港政府にはこれらとは別に、一定の条件を満たす住戸を「床位寓所」(bedspace apartment)として規制する法制度がある[3]。

名称と類似する居住形態

日本語では、ロイターが2025年の特集記事で「棺桶ハウス」の名称を用いている[1]。英語圏の報道ではcoffin homeやcoffin cubicle、中国語では「棺材房」などと呼ばれている。

棺桶ハウスと密接に関連する居住形態として籠屋(cage home)がある。籠屋では寝床を金網で囲うのに対し、棺桶ハウスでは木板や合板などによって寝床の周囲を閉鎖するものが多い。『ガーディアン』は2017年、香港ではそれ以前の約10年間に金網式の籠屋が減少する一方、木板で閉じられた寝床へ置き換わってきたと報じ、約15平方フィート(約1.4平方メートル)の木製の箱状空間を「coffin cubicles」と説明した[4]。ロイターも2025年、籠屋を棺桶ハウスとは別の形態として紹介し、金網式の籠屋は減少して棺桶ハウスに置き換わっていると報じている[1]。

一方、香港政府が用いる床位寓所(bedspace apartment)は物理的な形状ではなく法令上の区分である。香港政府は「caged home」は一般にbedspace apartmentとして知られるものの、「caged home」という語そのものは《床位寓所條例》(Bedspace Apartments Ordinance、香港法例第447章)の定義語ではないとしている。同条例では、個人の寝泊まりに用いられる床面、ベッド、二段ベッドその他の寝具を「床位」とし、賃貸契約に基づき使用される、または使用を予定された床位が12以上ある住戸などを「床位寓所」としている[3][5]。

香港政府はまた、cubicle apartmentについて、1950年代から1960年代に完成した唐楼などで一般的にみられた簡易な木製の間仕切りによる居住区画と説明している。この形態では上部に換気や採光のための開口部が設けられ、トイレや台所を他の居住者と共有することが多かった[3]。このように、香港で用いられる「籠屋」「床位寓所」「cubicle apartment」「劏房」などは互いに関連するものの、それぞれ形態や法的な定義が異なる。

形態と居住環境

棺桶ハウスは、一つの住戸の内部に多数の小さな寝床区画を設ける形でつくられる。『ガーディアン』が2017年に紹介した例では、約400平方フィート(約37平方メートル)の住戸を細分し、上下2段に配置した閉鎖型の寝床を20区画近く収容する例が報じられている[4]。

ロイターが2024年に香港で取材し、2025年に公開した記事では、窓のない棺桶ハウスの例として1区画あたり約1.4 - 1.7平方メートルのものが紹介されている。人が横になり、わずかな所持品を置ける程度の大きさで、換気設備がない区画では住民が小さな引き戸を開けたまま生活していた。また、多い場合には約20人でトイレを共用する例があった[1]。同じ取材で撮影された棺桶ハウスには、幅約0.9メートル、奥行き約1.8メートルの区画や、上下に積み重ねられた区画もみられた[1]。

これらは香港の古い市街地にある既存の住宅建築内部に設けられることが多い。ロイターは深水埗や旺角で多数の棺桶ハウスを取材しており、こうした地区では交通の利便性も、低所得者が狭小な住居を選択する背景の一つになっていると報じている[1]。

歴史

香港では、限られた住宅内部を多数の居住者が分け合う形式の住宅は棺桶ハウスという呼称が広まる以前から存在した。香港政府によれば、木製の間仕切りによるcubicle apartmentは1950年代から1960年代に建設された古い集合住宅で一般的にみられた[3]。

また、金網で寝床を囲う籠屋も香港の低所得者向け住宅の一形態として長く存在した。香港中文大学法学部のLuke Marshは2016年、『Asian Journal of Law and Society』に発表した論文で香港の「cage-home crisis」を取り上げ、籠屋の居住者をめぐる住宅福祉政策や社会権・居住権の問題を論じている[6]。ただし、この研究が対象とする「cage-home」は棺桶ハウスだけを意味するものではなく、香港の極小な床位住宅をめぐるより広い問題を扱ったものである。

2017年までには、金網による籠屋から、寝床を木板で密閉する棺桶型の区画への変化が国際的に報じられるようになった。『ガーディアン』は同年、金網式籠屋の数が減り、木板で囲った「coffin cubicles」に置き換わってきたと報じた[4]。2025年のロイターによる取材でも、従来型の籠屋はより少なくなり、棺桶ハウスに取って代わられていると説明されている[1]。

社会問題

棺桶ハウスは、香港における住宅費の高さ、公営住宅の需要、低所得者の住宅確保などと関連する社会問題として報道されている。ロイターは2025年、棺桶ハウスやその他の細分化された住居を、香港の厳しい住宅事情を示す例として長期取材した[1]。『ガーディアン』も2017年および2025年に棺桶ハウスや籠屋の居住実態を取り上げている[4][2]。

一方で、棺桶ハウスの居住者を単一の属性で説明することはできない。2025年のロイターの取材には、高齢者、清掃などに従事する就労者、中国本土から香港へ移住した人、公営住宅への入居を待つ人など、異なる経歴を持つ居住者が登場している[1]。そのため、棺桶ハウスを特定の職業、疾病、生活歴などと一律に結びつけることは適切ではない。

法規制

香港では、床位住宅や細分化された住宅について複数の法制度が存在する。

《床位寓所條例》(Bedspace Apartments Ordinance、香港法例第447章)は1994年に制定され、床位寓所について防火、建物の構造安全、衛生状態などを許可制度によって規制することを目的としている[7]。12以上の床位を賃貸契約に基づいて提供する床位寓所を営業する場合、香港政府の牌照事務処(Office of the Licensing Authority)から許可を取得する必要がある[5]。条例上、住戸内部に間仕切りが存在するかどうかは、床位寓所に該当するかを判断する際の基準とはされない[7]。

細分化された住宅(subdivided unit)の賃貸借については、《業主與租客(綜合)條例》のPart IVAによる規制が2022年1月22日に施行された。同制度では、規制対象となる細分化住宅の賃貸借期間や契約更新などについて規定している[8]。

さらに、細分化住宅に最低限の居住基準を導入する《簡樸房條例》(Basic Housing Units Ordinance、香港法例第658章)が2026年3月1日に施行された[9]。同条例は、既存の法制度によって規制される床位寓所などを適用範囲から除外しており、床位寓所については引き続き《床位寓所條例》による規制が行われる[10]。

脚注

関連項目

外部リンク

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