橈骨動脈
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分枝
橈骨動脈は上腕動脈が肘窩のあたりで分岐することで始まる[1]。前腕の前側を遠位方向へ走行している[1]。橈骨動脈は前腕の前区画と後区画の境界の目印となり、橈骨動脈の外側から後区画となる。橈骨動脈は手首のあたりで外側へ曲がり、解剖学的嗅ぎタバコ入れを通過して第1背側骨間筋の2頭の間を通る。更に母指内転筋の2頭の間を抜けて、尺骨動脈から来た深掌動脈弓で吻合する[1]。
橈骨動脈の名称のある枝は3つの位置で分類できる。
前腕
- 橈側反回動脈 - 橈骨動脈が上腕動脈から分岐してからすぐに分枝する。上行して肘関節周囲で上腕深動脈と吻合する[3]。
- 橈骨動脈掌側手根枝 - 方形回内筋の下縁近くで生じる小さい分枝である。尺骨動脈の掌側手根枝、前骨間動脈の枝、深掌動脈弓からの反回枝などが合わさって掌側手根動脈網を形成する[3]。
- 橈骨動脈浅掌枝 - 橈骨動脈が外側へ曲がるあたりで分枝する。母指球筋を栄養しながら進み、浅掌動脈弓で終わる[3]。
手首
- 橈骨動脈背側手根枝 - 母指へ向かう伸筋の腱のすぐ下層で分祀する[3]。
- 第1背側中手動脈 - 橈骨動脈が第1骨間筋の2頭の間を通過する前に分かれて母指の尺側と示指の橈側を栄養する。母指の橈側は橈骨動脈から直接分枝した動脈により栄養される[4]。
手
- 母指主動脈 - 橈骨動脈が手の深層において内側へ曲がっていくころに母指に向かって分枝する[4]。
- 示指橈側動脈 - 母指主動脈の近くで分枝する。母指主動脈と共通幹を作った後に分枝する変異もあり、この場合の共通幹を第1掌側中手動脈という[4]。
- 深掌動脈弓 - 橈骨動脈の終点となる部分であり、尺骨動脈の枝と吻合する[4]。
破格
橈骨動脈は1%程度の確立で解剖学的嗅ぎタバコ入れの部分でより浅層を走行していることがある[5]。この破格(解剖学的変異)が橈側皮静脈と見間違えられ、誤って静脈穿刺に使用してしまった例が報告されている[6]。誤穿刺が起きないために、触診により脈拍の有無を確認しておくべきである[6]。
臨床的重要性
橈骨動脈は橈骨の遠位端の前側(屈側)の浅層にあり、腕橈骨筋腱と長・短橈側手根屈筋の間に挟まれている。この部分は臨床的に脈をとることができる部位であり、簡便に心拍数を計算するときに用いられる。橈骨動脈で脈をとれれば拡張期血圧が少なくとも80mmHg以上あるといわれているが、実際の血圧が80mmHgより低くても触れることができる例も多く、低血圧を過大評価する虞がある[7]。通常脈をとる位置よりは分かりにくいが、解剖学的嗅ぎタバコ入れでも脈をとることはできる。橈骨動脈は冠動脈大動脈バイパス移植術(CABG)に用いることができ、近年よく使われるようになってきている[8]。大伏在静脈をグラフトとして用いる場合よりも術前・術後の経過が良いという研究結果も示されている[9]。
橈骨動脈は血液ガス分析の採血をするために動脈穿刺を行う場所として用いられる。動脈穿刺を行う前にはアレンテストにより血流閉塞が無いかを確認することがある[10]。アレンテストでは手の側副血行路を評価する。橈骨動脈と尺骨動脈を同時に圧迫すると手掌は蒼白になる。ここで片方の圧迫をやめてから通常の色に戻るまでの時間により、もう片方からの側副血行路が適度に存在しているかを確かめることができる[11]。
橈骨動脈は動脈ラインを挿入するための場所としても使われ、ICUにおける血圧モニタリングなどを行える。脳の血管造影にも有用であり、脳卒中[12]、脳動脈瘤などの治療に使われる[13]。橈骨動脈はアクセスしやすく、血栓を合併するリスクも低いために選ばれやすい[14]。
ギャラリー
- 前腕の中央部の断面。
- 橈骨動脈と尺骨動脈。
- 右上肢の前側(屈側)。骨、動脈、神経を体表に描いた。
- 橈骨動静脈。
- 解剖学的嗅ぎタバコ入れ上の領域における橈骨動脈。
- 橈骨動脈の仮性動脈瘤。
