武井彩佳
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| 人物情報 | |
|---|---|
| 生誕 |
1971年 日本・愛知県 |
| 出身校 | 早稲田大学第一文学部史学科 |
| 学問 | |
| 研究分野 |
ドイツ現代史 ホロコースト エスニシティ |
| 研究機関 | 学習院女子大学 |
| 学位 | 博士(文学)(早稲田大学)[1] |
| 主要な作品 | 『歴史修正主義』[2][3] |
| 学会 |
ドイツ現代史学会 日本ユダヤ学会 ほか[4] |
| 公式サイト | |
| researchmap | |
武井彩佳(たけい あやか、1971年- )は、日本の歴史学者[2][5]。学習院女子大学国際文化交流学部教授[6][2]、副学長[7][8]。専門はドイツ現代史、ホロコースト研究、エスニシティ研究[4][9]。著書に『歴史修正主義』『戦後ドイツのユダヤ人』『ユダヤ人財産はだれのものか』『〈和解〉のリアルポリティクス』、訳書に『ホロコースト・スタディーズ』、監訳書に『ヒトラーの娘たち』などがある[10][2]。
研究・見解
ドイツ現代史、ホロコースト研究を専門とし、著書『歴史修正主義』では、ホロコースト否定論を中心に、歴史修正主義の歴史的展開やその社会的影響、欧米における法規制・司法対応を論じている[13][3][14]。
武井は、歴史的事実を意図的に否定したり、矮小化したり、一側面のみを誇張したりすることで過去の評価を変えようとする動きを「歴史修正主義」と整理する一方、歴史記述そのものは本来、新史料の発見などによって修正されうるものであり、両者は区別されるべきだとしている[15][5][7]。また、欧米では、最初から事実と異なる歴史像を広める意図で史実を否定する言説は「歴史修正主義」ではなく「否定論(歴史否定主義)」と呼ばれると説明している[16][14][17]。そのうえで、日本で「歴史修正主義」と総称される言説の一部は欧米でいう否定論に相当すると整理し、南京事件や慰安婦問題をめぐる否定的言説をその例として挙げている[18][5]。
また、歴史修正主義的言説の典型的な論法として、既に大量の証拠が示されていても「証拠がない」と主張し続け、さらに証拠の捏造を疑って立証責任を相手に転嫁することで、蓋然性の高い見解と低い見解との境界を曖昧にしていく点を指摘している[19]。また、こうした言説は被害者やその集団を傷つける性質を持つことから、欧米ではヘイトスピーチの一種として法的規制の対象とされる場合がある一方、国家が「正しい歴史」を定めることには慎重な立場を示している[20][5][17]。
さらに、武井は、戦争犯罪や人権侵害の当事者が自己保身のために歴史を否認する段階を「歴史修正主義1.0」、後の世代が負の歴史を足かせとみなして「有益な過去」を求める段階を「同2.0」と整理したうえで、近年は、政治・経済・軍事と密接に結びつき、出来事の発生とほぼ同時に事実の否認が始まり、情報戦や制度化を通じて特定の歴史認識が既成事実化していく段階を「歴史修正主義3.0」と位置づけている[21][7]。加えて、歴史否定的言説に対して歴史家が距離を置きがちなこと自体も問題視しており、放置すれば学問的知見に基づく歴史解釈が骨抜きにされうるとして、研究者による継続的な情報発信の必要性を述べている[14][7][5]。
著書
単著
- 『戦後ドイツのユダヤ人』(白水社、2005年)
- 『ユダヤ人財産はだれのものか : ホロコーストからパレスチナ問題へ』白水社、2008年
- 『〈和解〉のリアルポリティクス : ドイツ人とユダヤ人』みすず書房、2017年
- 『歴史修正主義 : ヒトラー賛美、ホロコースト否定論から法規制まで』中央公論新社、2021年[22][3]
- 『ホロコースト後の機能不全 : ドイツ、イスラエル、犠牲と加害の関係』角川新書、2026年[6][23]
共著
訳書・監修・解説
- 『ホロコースト・スタディーズ:最新研究への手引き』ダン・ストーン:著, 武井彩佳:単訳、白水社、2012年
- 『ヒトラーの娘たち:ホロコーストに加担したドイツ女性』ウェンディ・ロワー:著, 武井彩佳:監修、明石書店、2016年
- 『終わらぬ歴史ホロコースト』ダン・ストーン:著, 大山晶:訳, 武井彩佳:解説、みすず書房、2025年2月
連載
- 「国籍・国境・格差」 - WEBみすず
主な論文
- "The “Gemeinde Problem”: The Jewish Restitution Successor Organization and the Postwar Jewish Communities in Germany, 1947-1954", Holocaust and Genocide Studies 16(2), 2002, pp.266-288[24]
- 「戦後ヨーロッパの相続人なきユダヤ人財産――90年代の返還問題の起源とドイツのユダヤ人継承組織(JRSO)」『史観』151号、2004年、pp.69-85[25]
- 「第二次世界大戦後のヨーロッパにおけるユダヤ人財産の返還――近年の返還訴訟の歴史的起源」『比較法学』39巻3号、2006年、pp.95-118
- 「強制移住と財産移転――民族ドイツ人の「帰還事業」を例に」『現代史研究』60号、2014年、pp.1-19[26]
- 「ベウジェツ裁判の中の「普通の人びと」あるいは「普通のナチ」」『ドイツ研究』58号、2024年、pp.65-76[27]
- 「歴史否定論は歴史学では扱えない」『世界』1002号、2026年2月