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火災警報

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火災警報(かさいけいほう)とは、日本において、火災が発生しやすい気象条件のとき、市町村長が発令する警報。住民らに対して警戒を呼びかけ、自治体の消防はこの発令により警戒態勢を高める。消防法に基づく[1]。

火災警報が発令中の自治体では、火災予防条例による火の使用制限が課せられ、違反した場合には消防法により処罰されることがある[2]。

自治体によっては火災注意報(かさいちゅういほう)の制度を定め、住民らに対して注意を呼びかけるために発令しているところがある。ただし、実質的に火災警報に代わる情報として運用されている場合もある[3]。

また、自治体によっては、山火事(林野火災)が発生しやすい気象条件のときに発令する林野火災警報(りんやかさいけいほう)および林野火災注意報(りんやかさいちゅういほう)の制度を定めているところがある[4]。

火災警報と火災気象通報の制度

湿度が低下した乾燥状態や、一定以上の風が吹く強風状態が続くと、火災が発生しやすく、また発生した火災が延焼しやすくなり、人命に関わるリスクが増大する。火災警報は、火災の発生を未然に防ぐとともに、その被害を最小限に抑えることを目的として発令される。住民に対して注意喚起を行い、主に屋外での火の使用を制限する一方で、消防機関は特別警戒体制に入り予防・即応体制を強化する[1]。

火災警報の発令を支援するため、気象台は火災気象通報(かさいきしょうつうほう)を各都道府県に通報する[5]。

法律上の根拠

「火災警報」は、消防法第22条第3項に基づく警報である。市町村長は、火災気象通報を受けたとき、または、独自に気象の状況が火災の予防上危険であると認めるとき、火災警報を発令できる(第3項)[6]。気象台は都道府県に「火災気象通報」を行い、都道府県を経由して市町村に伝達される(第22条第1項・第2項)[6]。

火災警報が発表されてから解除されるまでの間、その市町村内では、火災予防条例(火の使用制限の規定は第29条に統一されている)で定められた火の使用制限に従わなければならない(消防法法第22条第3項)[1][4][6]。

また、市町村長は、災害対策基本法第56条の規定により、発表した火災警報や伝達された火災気象通報を、住民や関係機関などに周知する責務を負う[1]。

火災気象通報の発表基準は、担当気象台と都道府県の協議により定められている。火災警報の発令基準は、市町村の条例などにより定められている[6]。

火災注意報は、火災警報とは異なり消防法ではなく、一部の市町村が告示などに基づき発令している[3]。

林野火災警報は、消防法に基づく火災警報の枠組み内に、林野火災予防に特化したものとして設けられている[4]。

発令基準

火災気象通報の基準

火災気象通報の通報基準は、担当気象台と都道府県の協議により定められていて、地域により若干の差がある[7][8]。

気象庁は、基準作成の指針として東京の気候から次の数値を示し、これに地域の特性を反映して変更するものとした。この指針は1949年(昭和24年)に出されたものである[7][9]。

一 実効湿度が60 %以下で、最少湿度が40 %を下り、最大風速が7メートル[注釈 1]を超える見込みのとき。

二 平均風速10メートル以上の風が1時間以上連続して吹く見込みのとき(降雨、降雪中は通報しないこともある。)。

但し、火災の発生し易い気象条件は地域又は季節によって多少の差異があるので地域の特性に応じた基準を設けて行うものとする。

なお、実効湿度は過去数日間の湿度を組み入れた数値で、木材の乾燥特性を反映したものである[1][10]。

過去には、2002年ごろの岡山県のように、各市町村が火災警報発令に利用しやすくするため、発表が頻繁になりすぎないよう火災気象通報の基準を変更する例もあった[11]。

2019年からは全国的な見直しが行われ、湿度は乾燥注意報、風速は強風注意報の基準と同じ値に揃えられた。同時に、発表区域が府県予報区または一次細分区域だったものが、二次細分区域へと細分化された。また、毎日5:00の天気予報と同じタイミングで定時の通報を行い、その時点から予報に変更があった場合は、乾燥注意報または強風注意報の発表により随時の通報を行う運用が始まった[12]。

この見直しは、2017年12月の糸魚川市の大規模火災を契機にしたものだが、発表区域が大きいため県内で気象条件が違う場合に精度の荒い情報になってしまう、などの課題がその前から指摘されており、一部で試験的な区域細分化が行われていた[12][13]。

一例として、熊本県の基準は地域防災計画で次のとおり規定されている[14]。

(前略)火災気象通報を行う場合の基準は、次のとおりである。

熊本地方気象台が定めた「乾燥注意報」及び陸上を対象とした「強風注意報」の基準と同一とし、「乾燥注意報」もしくは陸上を対象とした「強風注意報」の発表が予想される場合は、火災気象通報として通報する。

なお、陸上を対象とした「強風注意報」の発表が予想され、火災気象通報基準に該当するすべての地域・時間帯で降水(降雪を含む)が予想される場合は、火災気象通報に該当しない。

具体的に、熊本県の乾燥注意報の基準は、最小湿度40 %、かつ実効湿度65 %である。強風注意報の基準は、陸上・海上ともに平均風速10メートル毎秒である[15]。

火災警報の基準

火災警報の発令基準は、市町村の条例や規則、消防本部の「火災警報発令基準」などに定められている[7][16]。

国家消防庁(消防庁の前身機関)は1949年に火災気象通報の通報基準作成の指針と同じ次の数値を示し、これに地域の事情を反映して変更するものとした[1][17]。

消防信号の取り扱いについて(昭和24年国消管発第136号)

実効湿度が60 %以下で、最低湿度が40 %を下り、最大風速が7メートルを超える見込みのとき。

平均風速10メートル以上の風が1時間以上連続して吹く見込みのとき。

それぞれの地域の気象、消防力その他の特殊な実情に基づき、上記基準と異なる基準を設けて差し支えない。

一例として、東京都(東京消防庁管内)の基準は次のとおり[1][18]。

東京消防庁消防信号等に関する規程(抄)

第5条 火災警報は、気象状況が次のいずれかの基準に該当し、火災発生及び延焼拡大の危険が極めて大であると認める場合に発令し、平常の気象に復したとき解除する。

一 実効湿度が50 %以下であって、最小湿度が25 %以下になる見込みのとき。

二 平均風速13メートル以上の風が吹く見込みのとき。

三 実効湿度が60 %以下であって、最小湿度が30 %以下となり、平均風速10メートル以上の風が吹く見込みのとき。

埼玉県三郷市(三郷市消防本部管内)の基準は次のとおり[19]。

三郷市消防本部 火災警報発令基準規程(抄)

第2条 気象の状況が次の基準に該当し、火災発生及び延焼拡大の危険が極めて大であると認める場合は、火災警報を発令し、平常の気象に復したときは解除する。

(1) 実効湿度が55 %以下で最少湿度が25 %以下になったとき。

(2) 実効湿度が60 %以下で最少湿度が30 %以下となり、最大風速毎秒10メートルを超える見込みのとき。

(3) 風速毎秒12メートル以上の風が1時間以上連続して吹く見込みのとき。

火の使用制限と罰則

既述のとおり、火災警報が発令中の自治体では、各自治体が火災予防条例で定める火の使用制限が課せられる(消防法第22条第4項)。違反した場合には20万円以下の罰金又は拘留に処される場合がある(消防法第44条)[20]。

火災予防条例は、消防庁の火災予防条例準則[注釈 2][1]に準じて、各市町村で制定されている。火の使用制限に関する事項は第29条に記載されている[4]。

具体例として、福島県いわき市の火災予防条例は以下のとおり[21]。

いわき市火災予防条例 第29条

火災に関する警報(法第22条第3項に規定する火災に関する警報をいう。以下同じ。)が発せられた場合における火の使用については、次に定めるところによらなければならない。

(1) 山林、原野等において火入れをしないこと。

(2) 煙火を消費しないこと。[注釈 3]

(3) 屋外において火遊び又はたき火をしないこと。

(4) 屋外においては、可燃性の物品その他の可燃物の付近で喫煙をしないこと。

(5) 山林、原野等において屋外で喫煙をしないこと。

(6) 残火(たばこの吸い殻を含む。)、取灰又は火粉を始末すること。

周知

市町村は、発表した火災警報、および都道府県から伝達された火災気象通報を、住民や関係機関などに周知する責務を負う。伝達方法は地域防災計画に規定されている[1]。

具体的には、主に防災行政無線の放送、広報車、消防車の巡回により伝えられる。消防署などへの懸垂幕や吹き流しの掲出、ホームページ、自治体の登録制メール、ケーブルテレビやラジオを通じた放送などの手段を使う自治体もある[1][23][7][24]。

火災注意報の制度と火災警報の課題

火災気象通報と火災警報のほかに火災に注意を促す情報としては、気象台が発表する乾燥注意報と強風注意報、市町村が発令する火災注意報がある[7][3]。

火災注意報は、火災警報とは異なり強制力を伴わない形で、火の使用に注意を呼びかける形をとる[3][25]。2005年に直近年度に林野火災が多かった地域を対象に行われたアンケート調査(82の消防機関から回答)では、火災注意報の制度をもつ市町村は調査対象の4分の1に過ぎなかった[26]。

一例として、富山県高岡市(高岡市消防本部管内)の基準は次のとおり[23][27]。

高岡市消防本部の火災注意報の基準 - 高岡市消防火災注意報発令要領より

1. 相対湿度が45 %以下、かつ風速が毎秒7メートル以上となり、消防長が必要と認めるとき。

2. 平均風速が毎秒8メートル以上となり、消防長が必要と認めるとき。

(参考)高岡市消防本部の火災警報発令基準 - 高岡市火災予防規則第3条より

1. 実効湿度65 %以下、最低湿度40 %以下で最大風速が7メートルを超える見込みのとき。

2. 平均風速10メートル以上の風が1時間以上連続して吹く見込みのとき。ただし、当日に降水が見込まれる場合は、発令しないことができる。

火災注意報と火災警報の両方を定め、段階的に運用している自治体も一部あるが、その運用実態はまちまちで、火災注意報が明確に火災警報の前段階に位置付けられてはいない状況にある。住民の生活に厳しい制限を課す措置を避けたいなどの理由から、火災警報を発令せずに、強制力を伴わない火災注意報を発表することで対応している自治体もある[7][3][25]。

裸火を扱う企業活動への影響との折り合い、対応にかかる人員や予算が厳しい地域の問題、火の使用制限にまつわる住民トラブルなどの課題も挙げられる[28]。また、火災警報の基準に達しても警報は発表せず、広報やパトロールなどの対応に留めるという自治体もある[28]。

2005年の消防庁の報告書では、いきなりの火災警報発令は社会的な影響も大きくなることから、その前段階に火災注意報を位置付け、住民への呼びかけを行う必要があるとしたほか、将来的には(火災警報と同じように)火災予防条例に組み込むことを検討すべきと言及している[3]。

林野火災警報・注意報

2025年2月に発生した大船渡市山林火災を契機として、林野火災に特化した林野火災警報、林野火災注意報が創設された。少雨が長期間続くと、林野火災が発生しやすくなり、家屋への延焼被害、市境・県境を越えた延焼、森林資源の大量消失などのリスクが増大する。こうした被害の防止・抑制のために発令される[29]。

日本の林野火災の原因の大半は、たき火や火入れなどの人為的原因が占めている実態があり、林野火災でも予防意識の醸成に効果があることが背景にある[29]。

林野火災警報は法令上、「消防法第22条に基づく火災警報のうち、林野火災予防を目的としたものについて、林野火災警報の通称を用いる」ものに位置付けられている。火災警報と同様に、各自治体の火災予防条例(第29条および第29条の9)に基づいて罰則を伴う火の使用制限が課せられる。また、火災警報が市町村内全体を制限の対象とするのに対して、林野火災警報は林野周辺に対象区域が設定される[29]。

林野火災注意報は、各自治体が火災予防条例などに定めるもので、火災警報の前段階として、住民らに注意喚起を行う。強制力はないものの、火の使用制限の努力義務を課すものとなっている。林野火災警報・注意報の発令権者は市町村長とすることが基本だが、消防庁通知では、協議の上地方自治法[注釈 4]に基づき消防長に事務委任をすることなども考えられるとしている[30]。

火災の防止や早期発見のため、警戒パトロールなども行われる。火災予防条例に基づくたき火の届出制度、森林法[注釈 5]に基づく火入れの許可制度をそれぞれ徹底させる、消防による防火指導も併用される[30]。

消防庁は発令基準の設定例を次のように示している[30]。

【林野火災注意報の発令指標の設定例】

以下の(1)又は(2)のいずれかの条件に該当する場合

(1) 前3日間の合計降水量が1 mm以下 かつ 前30日間の合計降水量が30 mm以下

(2) 前3日間の合計降水量が1 mm以下 かつ 乾燥注意報が発表

※ 当日に降水が見込まれる場合や積雪がある場合には、発令しないことも可能である。

【林野火災警報の発令指標の設定例】

林野火災注意報の発令指標に加え、強風注意報が発表されている場合

(中略)林野火災注意報の発令対象期間としては、基本的に1~5月は対象期間とすることとし、それ以外の期間については各地域の気象特性等を踏まえて市町村の判断により対象期間とする。

(中略)…、発令対象期間、…については、林野火災注意報の考え方を準用できることから、林野火災注意報の項目を参照すること。

林野火災の発生は特定の季節に集中する傾向があることから、対象期間が設定される[30]。

一例として、東京都(東京消防庁管内)の基準は次のとおり[18]。

東京消防庁消防信号等に関する規程(抄)

第5条の2 山林、原野等における火災の予防を目的とする火災警報は、次項に定める区域が属する市町村において強風注意報が発表された場合において、当該市町村における前3日間の合計降水量が1ミリメートル以下であり、かつ、気象状況が次の各号のいずれかの基準に該当したときに発令し、平常の気象に復した場合に解除する。

一 前30日間の合計降水量が30ミリメートル以下であるとき。

二 乾燥注意報が発表されたとき。

(中略)

(第5条第)3(項) 第1項の火災警報を発令する期間は、毎年1月1日から5月31日までとする。

なお消防庁は、管内に林野を有していないか、林野を有していても、面積の狭さ、消防力の高さ、林野周辺の消防水利の状況などから、林野火災発生時に広範囲に延焼する危険性が低いと考えられる林野のみである場合、必ずしも林野火災警報・注意報を設けることは要しないとしている[31]。

発令時の効果的な広報手段として、消防団や自主防災組織、町内会など住民を巻き込んだ巡回広報、登山やレクリエーション入山者が利用する施設での広報、対象地域で工事を行う関係者への呼びかけや巡回などが挙げられる[32][33]。

脚注

参考文献

関連項目

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