物理吸着
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多孔質の存在する真空中にある流体分子を導入すると、多孔質外のバルクに流体分子があるときよりも多孔質の持つ細孔内に分子が進入したときの方が、細孔表面との間に働くファンデルワールス力の分だけ安定である。このバルクとの安定化エネルギーの差分を推進力に、細孔内に流体分子が濃縮されていく過程が物理吸着である。一般に、バルクの状態が低温で高圧のとき、つまり分子運動がおだやかで分子密度が高いときほど、吸着量は増加する。
吸着量と圧力、あるいは吸着量と温度は非線形的な関係にあることが多い。これは、細孔表面に吸着される初期段階の吸着に比べ、吸着質によって表面が被覆されて以降の吸着では細孔壁による安定化への寄与が大きく減少するためである。つまり、表面から遠い流体分子ほどバルク的な挙動を示す。
細孔内への吸着量はある温度と圧力の条件で急激に増加することが多く、それがバルクの気液相転移つまり凝縮と近しい現象であることから、近年では細孔内でも相転移が起こると考えられている。特に、メソ孔の下限域のナノ細孔(孔径2~10nm程度)への物理吸着は、気体から液体への相転移と捉えられている。また、現在は、固体への相転移に拡張した、三態相図に関する研究が盛んである。
吸脱着が可逆であること、ミクロな現象がマクロな操作変数である圧力や温度で精密に制御されうること、これらの利点を工業的に利用すべく研究が進められている。主な利用法は分離と貯蔵、および触媒を担持した反応場としての利用に分けられ、多成分流体の分離や水素などの気体燃料の貯蔵を目的とした研究などが進められている。