球晶
From Wikipedia, the free encyclopedia

高分子物理学において球晶(spherulites)とは、非分枝の直鎖状ポリマーによく見られる、球状の半結晶。溶融状態のポリマーを冷却することで生成する。球晶の形状は、ポリマーの分子構造、核となる物質の量、冷却速度など、多くの要素の影響を受ける。球晶の大きさは条件で大きく異なり、数μmから数mmになることもある。球晶自体はポリマーの規則的な配列(ラメラ)から成るため高密度で丈夫である。球晶同士は、アモルファス(球晶にならなかった)状態のポリマーで結合されている。ただし球晶同士の結合力は小さいため、大きな球晶を数多く含む材料は脆い場合が多い。球晶は、その中心からラメラ構造が放射状に広がっているため、ラメラの持つ複屈折の性質により、 光学顕微鏡で観察すると十字状の模様がみられる。

溶融した直鎖状ポリマー(例えばポリエチレン)を急速に冷却すると、溶融状態で複雑に絡み合っていた構造がほぼそのままで固まるため、固化した後も分子が無秩序に並んだ構造となる。それに対して、溶融状態からゆっくりと冷却すると、ポリマー鎖の一部が規則的な折りたたみ構造(ラメラ構造)となりながら固化していく[2] 。
冷却が進んでいくにつれて、固化したポリマーの周りに新たに溶融ポリマーが付着していく。その際、無秩序に付着するわけでは無く、できるだけラメラ構造に近い形となるように付着していくため、結果としてラメラが放射状に成長したような構造となる。ラメラ構造同士がぶつかると、ラメラ構造の終端はポリマー分子が曲がりまたはねじれの構造を取って、成長が止まる。ラメラ構造の間には、ラメラとなれなかったアモルファス(非晶質)状態のポリマー分子で埋められる。こうして球晶が形成される。つまり、球晶の中には半結晶性の部分(ラメラ)と非晶質(アモルファス)の部分とが混在する[2][3] 。
球晶のサイズは、球晶のできかたによって異なる。数マイクロメートルとなる場合もあり、大きい場合には1センチメートルぐらいになることもある[4]。溶融ポリマーを急速に冷却すると球晶は小さくなり、ゆっくりと冷却すると球晶は大きくなる。
また、溶融ポリマー中に核の種となるような物質があった場合には、球晶は小さくなる[5][6]:67-83。球晶が大きく成長すると、材料としては脆くなる場合が多いので、核の種となるような物質を溶融ポリマー中に意図的に混入する場合もある。核の種としては、可塑剤、フィラー、顔料などが挙げられる。ただし、このふるまいは複雑であり、あるポリマーで核の種となりやすい物質が、別のポリマーでは核の種として働かない場合もある。核の種となる性質を持つ物質を造核剤と言う[1] 。

