生態系保全護岸は、水中の生物や植物の産卵・生育、また、洪水時の避難場所などの機能をもつ護岸であり、魚類、ホタル、自然植生野鳥などの保全を目的としている。
魚類保全護岸は魚類や水中生物の棲息空間や避難場所を確保することが主目的であるから、水中生物が移動しやすくまた、魚類のエサの流入や採光、産卵などの点に考慮することが必要となる。
魚類保全護岸は護岸形態によって、魚巣ブロック護岸、段岸魚巣ブロック護岸、人工ワンド、魚類配慮根固めブロック護岸の4種類に分類できる。そして、魚類保全護岸は目的別に以下のように使い分けを行う。
- 魚類保全目的 - 魚巣ブロックによる魚類保全護岸, 根固めブロックによる魚類保全護岸, 人工ワンドによる魚類保全護岸
- 魚類保全親水目的 - 段岸魚巣ブロックによる護岸
- 魚類保全、親水景観保全目的 - 魚巣ブロックと円弧法枠ブロック内張芝階段護岸
魚巣ブロック護岸は、魚巣ブロックと呼ばれる異形ブロックを組み合わせて、護岸本来の機能と魚類の生息条件を充足させる護岸の手法である。魚巣ブロックは、内部に空洞を設けたもので、これらを積み上げて護岸とする。
こうした魚巣ブロック護岸が設けられる背景としては、内水面漁業の振興や汚れて魚の住まなくなった河川を再び魚の住む河川に戻し、地域住民のやすらぎを与える場を確保すること、あるいは、河川の景観をよくすることなどがあげられる。
段岸魚巣ブロック護岸は、段岸魚巣ブロックを階段状に積んだ護岸で
あり、魚類保全に加えて、親水性の点からみても優れているといえるが、護岸の事例は米之津川(鹿児島県)、一ツ瀬川(宮崎県)、田川、蛇尾川、秋由川(以上、栃木県)にみられる。
これらの事例では、高水敷があるところでは、段岸、ブロックが使われ、高水敷がないところでは、先にみた魚巣ブロックが使われている。また、段岸魚巣ブロック護岸と魚巣ブロック護岸との使い分けもそれほど明瞭なものではない。
ワンドとは、主として治水や舟運のため流れに、そだ沈床と捨石によって構築され、流れに突きだされたT型の水制とそこに堆積した流砂によって形成される湾部である。ワンドは、静水域になっていることや本流に比べて水質が良好であることなどから魚類の棲息環境としては、良好な空間といえる。
主な魚類のワンド内に棲息する生物は、一般的に次のようなものである。
- フナ・タイリクバラタナゴ、オイカワ.モツゴ - ワンド内の岸から中心部に及ぶ広い範囲を生活場所としている。
- ニゴイ・スゴモロコ・ワタカ・ハスなど遊水魚やゼゼラ・ヨシノボリ・スジシマドジョウ・カマツカなど底性魚 - 岸に近い部分だけを生活場所とし、中心部はあまり利用しない。
- コクレン・ハクレン - ワンドの中央部のみを生活場所とする。
このような魚類の棲息環境としてのワンドを保全することは、自然保護の面からも重要であり、人工ワンドの造成が必要となる場合がある。
ワンドは、豊富な魚類が棲息し、住みわけ、食いわけ、産みわけを可能にする多様性があり、人工ワンド造成に当たっては、こうした多様な環境をいかにつくりだすかがポイントとなる。そのために、広さ、水深、水際部、底質などの内容についての配慮が必要となる。
人工ワンドの代表的な事例は、淀川にみられる。淀川に棲息する魚類は、約50種にのぼり、そのうち約半数の種類は、ワンドにのみ棲息し、また、稚魚が多いといわれている。また、天然記念物に指定されているイタセンバラも棲息している。
こうした魚類の棲息環境保全のため、連続ブロックと自然石空積によって、ワンド護岸を整備しており、治水上の安全性を確保しながら、ワンドの保全が図られている。
ワンド護岸は、透水性のある構造をもつ。