工場
製品を生産・製造したり、既成製品のメンテナンスを行ったりする施設
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工場(こうじょう、こうば、英語:factory)は、
- 生産用の機械をそなえておりそれを使用して工員が製品の製造や加工に従事する施設。製造・生産や加工するための施設や家屋。生産のための工場を生産工場、加工のための工場を加工工場と総称する。
- 既成の機械製品の整備(点検・保守も含む)を行う施設。整備のための工場を整備工場と総称する。
工場(こうじょう)は大規模な施設を指し、工場(こうば)は小規模な施設を示すことが一般的である[1]。生産のための工場は製作所、製造所と呼ばれることもある(それが社名になっている会社もある[2])[3][4]。そのほか企業内では事業所、事業場などと呼ばれることもある[5]。なお、かなり小規模で一人ないし数名程度が働く施設は工房ということが多い[6]。
概要
歴史
- 古代

2世紀頃には製粉工場であるバルブガル水道と水車群跡がローマ帝国の領域内、現在の南フランスに当たる場所で建設され、4世紀頃までには一日あたり28トンの穀粉[7]、ローマ帝国の住民で言うと80,000人分に相当にする穀粉を生産できる状態になっていた[8][9][10]。なお、近年の研究ではこの工場で製造された穀粉は主に輸出されていた(主目的はその地域での消費ではなかった)と推定されている。
- 産業革命期
近代的な工場が出来たのは1770年頃のイギリスである。1769年にイギリスのリチャード・アークライト(Richard Arkwright)が水力を使った紡績機を発明した。この紡績機は非常に高速で強い糸を紡ぐことが出来たが、利用するには水車のある場所に設置しなければならなかった。アークライトは1770年頃、靴下製造業者であったサミュエル・ニード、ジェディダイア・ストラットらと組んで、ダービーシャー州のクロムフォードに、何台もの紡績機を集め、全ての紡績機の動力となる水車を備えた紡績工場であるクロムフォード・ミル(Cromford Mill)を作った。これが近代的な工場の出発点とされ、産業革命の要因の1つともなった[11]。
1782年にもリチャード・アークライトとそのパートナーらによってシュッドヒル・ミル(Shudehill Mill、シンプソンズ・ミル Simpson’s Millとも)がマンチェスターの中心部に建設された。これも水車 (water-mill)式の綿の紡績工場だった。
1786年にデイヴィッド・デイル(David Dale)がスコットランドのニューラナークに水車式の綿紡績工場群を建造。
アークライトはイギリスで特許を取得した自身の発明、そのメカニズムを厳重に秘匿し、イギリス政府もそれを重視し国外に漏らされないように漏洩者は厳罰に処すとしていた。

だが、ドイツ人のヨハン・ゴットフリード・ブリューゲルマン(Johann Gottfried Brügelmann)がイギリスのクロムフォード・ミルに労働者として潜り込んで長期間働くことでメカニズムの秘密を入手することに成功。ドイツに帰国し、クロムフォード工場をモデルとして(敬意を払い "クロムフォード"の名を冠し)テキスティルファブリク・クロムフォルド(Textilfabrik Cromford)と命名した工場を1783年にドイツのラティンゲン(Ratingen)で建設した。製造棟が2棟の工場だった。当時の市況は紡績需要に製造が追いついていない好都合な状態だったうえに、選帝侯が1784年にこの機械式紡績工場の操業に関する12年間の特権(独占権)を与えてくれ、独占のおかげもあり工場の業績は極めて順調で、大儲けしたお金で5階建ての壮大な工場建物も建設され、1787年には2万ライヒスターラーをかけた豪華な紳士館と、マクシミリアン・フリードリヒ・ヴァイエが設計した部分的にバロック、部分的に英国式の庭園(現在のポエンスゲン公園)まで造られた。開業から10年後(1794年頃)には従業員数が400人と当時として驚異的な人数になり、1802年(創業者ブリューゲルマンの死の直後)には従業員数が600人に達していた。だが独占が12年で失効していたこともありやがて競合工場が出現したことで1802年がピークとなり、それ以降の生産量は縮小していった。
1789年–1790年にはピーター・ドリンクウォーター(Peter Drinkwater)がマンチェスターでピカディリー・ミル(Piccadilly Mill)を建設した。この工場はボールトン・アンド・ワット製の8馬力の蒸気機関を動力とするものだった。
種類
製造業や加工業は業種が細分化されており、工場も業種の数だけ細分化されている。製造業の工場も業種ごとに分けられ、また加工工程ごとに細分化されている。
繊維から糸を紡ぐ工場は紡績工場、糸を織り織物を作る工場は織物工場(あるいは織布工場)、布を裁断しミシンで縫い合わせる工場は縫製工場、糸を機械で編んで編物(ニット)を作る工場は編物工場(ニット工場)という。
穀類から穀粉を製造する工場は製粉工場(製粉所)という。水産物を加工する工場は水産加工工場という。食肉を生産するための工場は食肉工場ということもあるが、と畜場や食鳥処理場ということが多い。野菜を洗浄したりカット・加熱などする工場は野菜工場や野菜加工工場、食品メーカーが食品を製造するための工場は食品製造工場という。
丸太(ログ)から材木を生産する工場は製材工場といい、木材の加工を行う工場は木工所(もっこうじょ)という。
造船会社が船舶を建造する施設は造船所という。軍艦・兵器・軍需品の工場は工廠や兵器工場(アーセナル)と言う。
金属素材を生産する工場については、製銑[注釈 1]・製鋼[注釈 2]・圧延をして鉄材や鋼材を生産する工場は製鉄所、アルミを精錬する工場はアルミ精錬工場、銅を生産する工場は銅溶錬工場などと分類する。アルミは何度でも溶かしてリサイクルされ一旦精錬されたアルミの75%は何度でも再利用され続けているので[12]、アルミ精錬工場の数は減ってきており代わりにアルミリサイクル工場が増えてきている。
鋳鉄・銅合金・アルミニウム合金・鋼などを溶かして型に流し込み鋳物を作る工場は鋳物工場という。
金属を加工するための工場も、鉄材や鋼材を加工する工場は鉄工所、その中で切削加工に特化した工場は切削工場、研磨加工に特化した工場は研磨工場などと細かい分類も可能で、メッキ加工をするための工場はメッキ工場、塗装するための工場は塗装工場などと加工の種類だけ細分化できる。
化学物質を製造する工場は化学工場と言い、その中核となっている生産施設や装置を化学プラント(en:Chemical plant)という。
完成品の工場については、たとえば木材を加工して最終的に家具を製造する工場は家具工場、楽器メーカーが楽器を製造するための工場は楽器工場、バッテリーメーカーがバッテリーを製造するための工場はバッテリー工場、自動車メーカーが部品工場を運営する会社から納入された部品を集めて組み立てて自動車を製造するための工場は自動車工場、などと分類される。半導体(集積回路類)を製造するための工場は半導体工場という[注釈 3]。パソコンの完成品を組み立てるための工場は多数存在し大量に生産しているのだが、まだ固定した分類名が無い[注釈 4]。
乗り物の整備工場としては自動車整備工場、オートバイ整備工場、船舶整備工場[注釈 5]、航空機整備工場(機体整備工場)など、乗り物の種類ごとにある。(なお、自動車整備工場やオートバイ整備工場は多くの一般人が車検毎に使い、一般人も馴染みのある工場である)。 自動車のボディーのへこみを直す工場は板金工場(ばんきんこうじょう)という。
- 紡績工場
- 織物工場
- 縫製工場
- 製粉工場
- 食品工場
- 製材所
- 木工所
- スタインウェイのピアノ工場
- 金属工場
- 製鉄所の圧延工程
- 鋳物工場
- めっき工場
- 化学工場
- 自動車工場
- ボーイング社の航空機工場
- 自動車整備工場
中華人民共和国の工場
- 歴史
歴史的工場を挙げる。歴史的工場のほとんどは操業を停止し、工場遺産や文化遺産などに指定されている。
- 北京二七机车厂(遺産) - 所在地は北京市丰台区長辛店。1897年創立の鉄道機車・車輛の製造工場・修理工場。1923年の二七大罢工の舞台となった。かつての工場敷地は現在では「二七厂1897文化科技创新城」として再開発され、旧工場の欧風建築や工場建造物 (廠房) が保存されている。2024年には「智能制造园区」(スマート製造区) として再整備が開始された。
- 华新水泥厂(遺産) - 所在地は湖北省黄石市黄石港区。1907年創業の近代水泥 (セメント) 工場。とうに操業は停止しているが、1946年からの“湿法水泥旋窑” (wet‑process cement rotary kiln) 設備を含む工場施設が残存。現在は旧工場を「华新1907文化遗址公园 (HuaXin 1907 文化遺産公園)」として保全し、文化公園や産業遺産として利用されている。
- 浦镇机厂 - 所在地は江苏省南京市浦口区顶山街道。1908年創立の鉄道機械工場 (機厂)。かつての鉄道関連の工場建築 (英式別墅、西洋建築、工場建物など) が遺されており、工場遺産として認定されている。
- 江南水泥厂(遺産) - 所在地は江苏省南京市栖霞区栖霞镇。1934年建設の水泥 (セメント) 工場。かつて中華人民共和国国内で最大規模かつ先端であった水泥工場のひとつ。旧工場建築 (旋窑、筒仓、栈房、仓库など) は現在「工业遗产 (工業遺産)」のリストに含まれている。
- 永利铔厂(遺産) - 所在地は江苏省南京市六合区。1930年代に建設された化学肥料工場・化学工場。かつて「远东第一大厂」("極東で最大")とも称された。現在は操業しておらず、西洋建築の事務所および職員住宅、圧縮機、硝酸塔、工場建物などを含む複合工場施設が遺産リストに入っている。
- 先進工場
5G通信 + 工業用インターネット(中国語:5G+工业互联网)を導入した工場は、生産効率・品質管理の向上、生産ラインや物流の自動化・省人化、柔軟な生産 (多品種少量生産や速やかな生産切り替え) などが可能となるとされ、中国国内でモデル工場 (示范厂)として注目されている。
- 中兴通讯 南京滨江工厂 - "中兴南京智能滨江5G工厂"とも。所在地は南京市江宁区。AIを駆使したスマート工場 (智能工厂)。「5G专网 (プライベート5Gネットワーク)」を敷設し、5G + 工业互联网 (industrial Internet) + Cloud/AI/スマート制御/AGV/機械ビジョンなどを駆使してスマート工場を実現している。製造しているのは、5G装置、サーバー・ストレージ機器などで、柔性生産ライン (混線/多機種混合ライン)や“黑灯工厂 (lights-out factory。無人夜間運転)” と称される無人の工場運営を実現している。2024年に「首个五星5G工厂 (five-star 5G factory)」の認定を受けた。広さは約2万平方米。
- 美的集团(Midea)の順徳工場群 - 所在地は广东省順徳。この会社の工場の中でも特に厨房機器・家電などの製造拠点のひとつが「5G+全连接智能制造示范工厂 (5G+工業インターネット 智能工場)」として報じられており、5G通信、AI、IoT、スマート倉庫 (スマート物流)、機械アームによる自動化、生産設備の相互接続などにより、工場のスマート化 (智造)が実現されている。2023年に同社の家電、冷蔵庫、空調、洗濯機など事業部の工場が、国家レベルの「5G工厂名录 (5Gファクトリーリスト)」に選定された。
- 金华市の5G式ソーラーセル工場 - 所在地は浙江省金华市。5G + 工業インターネットの技術を導入し、機械視覚 (マシンビジョン)/AI/産業インターネット プラットフォームなどを用いた「智能化生産 (スマート生産)」が行われている。生産ラインにおいて自動搬送車 (AGV) による搬送、クラウド+インターネット経由での設備・生産データ収集および管理、品質管理・不良品検査の自動化などが特徴。
日本の工場
日本には、2017年現在で、およそ36万もの工場がある[13]
- 分類
日本において、働く人の数が300人以上の工場を「大工場」、300人未満の工場を「中小工場」と呼ぶ[14]。さらに29人以下の工場は「小工場」と呼ばれる。
大工場の例としては、自動車工場や化学工場、電化製品工場などが挙げられる[15]。ほとんどは重化学工業である。
中小工場の例としては、部品工場や食品工場、繊維工場、日用品工場などが挙げられる[13]。中小工場は、大企業の下請けが多く、大工場でつくっている製品の部品などを作っている工場が多い。部品工場のことを、最終製品を作っている工場からの視点で、関連工場ともいう。
2017年現在で、36万の工場の99%以上が中小工場であり、大工場はわずか1%未満である[13]。外国に比べると、日本の中小工場の割合は大きい[16]。しかし、中小工場に仕事を発注する大工場の海外移転の増加などに伴い、日本の中小工場の数は年々減少傾向にある[17]。日本の全工場で大工場と中小工場を比較した場合、従業員数は中小工場が約7割を占めるが、生産額は中小工場が全体のおよそ半分である[18]。
中小工場ではそれぞれの優れた技術を持つ職人が多く働いているが、従業員の高齢化による後継者不足が問題となっている。また、中小工場は景気の影響を受けやすいため、経営的に厳しい状況になることもある。
| 大工場 | 中小工場 | 総数 | |||
|---|---|---|---|---|---|
| 工場数 | 3248 | 0.9% | 35万7596 | 99.1% | 36万844 |
| 従業員数 | 249万人 | 31.5% | 541万人 | 68.5% | 790万人 |
| 工業生産額 | 169兆4089億円 | 52.6% | 152兆6613億円 | 47.4% | 322兆703億円 |
- 日本の歴史的工場の画像
- その他、日本の工場
- 製粉工場
- 食品工場
- 製材所
- 木工所
- オートバイ製造工場の入口
- 造船所(造船工場)
- 製鉄所(JFEスチール東日本製鉄所・千葉地区)。特に大規模な工場の例
- 町工場
- めっき工場におけるめっき作業
- バスの整備工場
他
- 立地
小規模から中規模の工場は、内陸地域に設置されることが多い。特定の地域に工場が自然と集中し工業集積地(工業地域)となることも多い。また意図的に開発された工業団地内に建設されることも多くなった。 一方、石油や鉄鋼などの大規模な工場は、原料の搬入や製造した製品の搬出の便を図るために、海岸沿いの臨海部に設置されることが多い。石油コンビナート、製鉄所などはそれ自体が非常に規模が大きく、また関連工場も多くは近隣に設けられ、一大工業地区を形成する。
- 工場と周辺地域の関係
特に大規模な工場や工場集積地は多くの労働者を必要とするので、労働者が使う店舗も工場の周辺に集まることもある。工場を中心として形成される生活圏を企業城下町と呼ぶこともある。
工場見学
工場見学と呼ばれる内部見学を行うツアーが組まれることがある[19][20]。また、工場によっては見学用の施設を設置する場合もある[21]。
- 何が鑑賞されるか
工場では細いパイプが幾層にも入り組み、様々な設備がむき出しになっており不思議さやシュール感を見る人にもたらす。夜は照明にそれらが浮かび上がり、さらに独特な雰囲気を醸し出す。配管はできるだけ曲がり角をなくして最短距離をとるのが効率的だが、建物の構造上、簡単にはいかないこともある。この場合の不規則な配管では職人の努力と工夫が見え、迷路のように入り組んだ配管独自の美を感じさせる[22][23]。特にコンビナートやプラント群などの多い無機質な工場地帯の景観は、「工場萌え」としてブームとなり、夜景観賞バスツアーを主催する自治体もある[24]。
- 工場内部を見学する番組の例