紫式部日記

紫式部によって記された日記 From Wikipedia, the free encyclopedia

『紫式部日記』(むらさきしきぶにっき)は、平安時代中期に紫式部が記したと伝わる日記文学で、藤原彰子(一条天皇中宮)に出仕した時期の宮廷生活や儀礼、所感などを記す。記事はおおむね寛弘年間(11世紀初頭)の出来事を扱い、日々の連続記録(「日次の記」)ではなく回想的にまとめられた作品とされる。[1][2]

古写本・伝本の題名としては「紫日記」(むらさきにっき)が用いられることがあり、宮内庁書陵部の所蔵目録でも同名で登録される。[3]

概要

作品の中心は、彰子の里邸であった土御門邸を舞台とする出産前後の緊張と祝賀、行幸、産養などの宮廷儀礼の記録である。加えて、女房たちの人物評や自己省察を含む「消息文」と呼ばれる書簡体・随想的部分が挿入され、記録性と内省・批評性が併存する点が特徴とされる。[4]

成立と作品の性格

記述対象の時期・舞台

辞典類では、寛弘5年(1008年)後半の記事が分量の中心で、寛弘6・7年の記事は断続的であることが指摘される。[1][2] また、岩波文庫校注本の解説要約では、寛弘5年夏頃から約1年半ほどの出来事と消息文から成る趣旨が述べられる。[5]

日次ではない点/構成上の特徴

『紫式部日記』は日次の連続記録ではなく回想録的にまとめられた作品とされ、消息文的部分や年時不明の断片が入り込む配列の問題、現存形態が執筆当初の姿をどこまで伝えるか等をめぐり議論がある。[1][2]

題名・作者帰属

宮内庁書陵部の目録では「紫日記」として登録され、「一名:紫式部日記」とされる。[3] 作者名が本文に直接現れないこと、題名の揺れがあることなどから、作品名・作者帰属の扱いは伝承・伝本の事情を踏まえて説明される。[1]

内容

宮廷儀礼・行事の記録

本作は皇子誕生とそれに伴う祝賀・儀礼の連鎖を軸に、後宮・貴族社会の具体的な行事運営や装束・応対などを描く点で、宮廷儀礼・風俗史料としての価値が高いとされる。[2][1]

人物評・随想(消息文)

消息文的部分では、同僚女房の描写に加え、同時代の才女への批評や、自身の生き方・心境への省察などが展開されると説明される。[1][2]

構成

辞典類では2巻構成とされ、日記的記述と消息文的部分から成る点が共通して説明される。[4]

伝本・本文

写本

宮内庁書陵部(図書寮文庫)は「紫日記」を所蔵し、黒川家旧蔵本で江戸期写本である旨を紹介している。[6]

校訂・注釈本(主要刊本)

以下は、本文参照や研究で頻用される主要な刊本・注釈書の例である。

  • 池田亀鑑・秋山虔 校注『紫式部日記』岩波書店〈岩波文庫〉、1964年。[5]
  • 萩谷朴『紫式部日記全注釈』角川書店(上下:1971年・1973年)。[7]
  • 山本利達 校注『新潮日本古典集成〈新装版〉 紫式部日記 紫式部集』新潮社、2016年。[8]
  • 『新編 日本古典文学全集26 和泉式部日記/紫式部日記/更級日記/讃岐典侍日記』小学館、1994年。[9]

受容と研究

史料・文学作品としての位置づけ

宮廷儀礼・生活の精細な記録であると同時に、観察と人物把握、内省・批評を備えた記録文学として高く評価されることがある。[1][2]

『源氏物語』研究との関係(最古級言及)

宮内庁書陵部の展示解説では、寛弘5年11月1日の条において藤原公任が「若紫」に触れる場面が紹介され、これが『源氏物語』に関する最も古い記録である旨が述べられている。[6] 同趣旨は、東京国立博物館の解説記事でも言及されている。[10]

「古典の日」と源氏物語千年紀

2008年11月1日に京都で「古典の日」宣言が行われたことが、推進団体の沿革として示されている。[11] その後、「古典の日に関する法律」により、古典の日は11月1日と定められた。[12]

近世以降の研究史(概説)

近世には『源氏物語』注釈・作者論の文脈で『紫式部日記』が参照され、安藤為章『紫女七論』を引きつつ論じる研究もある。[13]

関連資料

紫式部日記絵詞(国宝)

『紫式部日記』を題材とする絵画資料として、文化庁の国指定文化財等データベースは「紙本著色紫式部日記絵詞〈絵三面/詞三面〉」を国宝(1956年指定)として掲げ、五島美術館(東京都)所蔵であることを示している。[14]

翻訳

日本語(現代語訳)

  • 与謝野晶子 訳『与謝野晶子訳 紫式部日記・和泉式部日記』KADOKAWA〈角川ソフィア文庫〉、2023年。[15]

外国語訳

  • The Diary of Lady Murasaki(Richard Bowring訳、Penguin Classics)。[16]
  • Murasaki Shikibu: Her Diary and Poetic Memoirs(Richard Bowring訳、Princeton University Press)。[17]

脚注

関連項目

外部リンク

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