線減弱係数
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線減弱係数(linear attenuation coefficient, μ)は、単色X線ビームの強度が物体中を距離xだけ進むとき、に従って指数関数的に減少することを表す量である[1]。μのSI次元は長さの逆で、実務では cm−1 などが用いられる[2]。物質量に依存しない指標として質量減衰係数(μ/ρ)が用いられ、単位は m2/kg(慣用的には cm2/g)である[2]。関連する基本式はベール–ランベルトの法則で、吸光(減弱)を係数と経路長の積により記述する[3]。減衰係数の定義にはネイピア(自然対数)形式と十進(常用対数)形式があり、十進減衰係数 μ10 は μ/ln10 により換算される[4]。これらの用語・単位を区別して用いることが、データベース値の引用や測定結果の比較に不可欠である[1]。
物理的背景と主要相互作用
電離放射線の線減弱は、光子が物質中で失われる「吸収」と進行方向を変える「散乱」の総和として表され、全線減弱係数 μ は各相互作用の部分係数の和で記述される[1]。X線・γ線では主に(1)光電効果、(2)コンプトン散乱、(3)電子対生成が関与する。光電効果は低~中エネルギー域で高Z物質ほど優位となり、K吸収端などの内殻吸収端に依存する[2]。コンプトン散乱は中エネルギー域で電子密度に比例して支配的となり、組成よりも密度の影響を強く反映する[5]。電子対生成はしきい値1.022 MeV以上で生じ、高エネルギーかつ高Zで寄与が増す[2]。混合物や化合物の質量減衰係数は加成則(混合則)で近似でき、標準参照データベースで表や計算ツールが公開されている[5][6]。これら相互作用のエネルギー依存性は、分光情報に基づく画像再構成・物質分離(デュアルエネルギーCTなど)の物理的根拠でもある[7]。
エネルギー・物質依存性
線減弱係数はエネルギーE・物質特性(密度ρ・原子番号Z)に強く依存する。低エネルギーでは光電効果が卓越し、概ねZ^n依存(nは3–4程度)とEの減少に伴う増大を示し、元素固有のK吸収端で不連続な跳躍を示す[3][8]。中間エネルギー域ではコンプトン散乱が支配的で、電子密度(概略 ρ·Z/A)に比例した依存性を示す[8]。高エネルギーでは1.022 MeVをしきい値とする電子対生成が増大し、Z依存性が再び強くなる[2]。混合物や化合物の質量減衰係数は、構成元素の質量分率による加重和で良く近似でき(加成則)、線減弱係数はμ=(μ/ρ)ρで与えられる[9]。また実用のX線束は多色であるため、低エネルギー成分の選択的減弱によりビームハードニングが生じ、見かけのμや実効エネルギーが深さとともに変化する。このスペクトル依存性は、エネルギー選択的画像再構成の理論にも直結する[3][7]。