臨時通貨法

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法令番号 昭和13年法律第86号
提出区分 閣法
効力 廃止
臨時通貨法
日本国政府国章(準)
日本の法令
法令番号 昭和13年法律第86号
提出区分 閣法
種類 行政手続法
効力 廃止
成立 1938年3月19日
公布 1938年6月1日
施行 1938年6月1日
主な内容 臨時補助貨幣の額面・種類等について
関連法令 通貨の単位及び貨幣の発行等に関する法律貨幣法
条文リンク 臨時通貨法・御署名原本・昭和十三年・法律第八六号
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臨時通貨法(りんじつうかほう、昭和13年6月1日法律第86号)は、「貨幣法」(明治30年法律第16号)で規定されている貨幣の他に、臨時補助貨幣ならびに小額政府紙幣を発行することに関する日本法律である。

通貨の単位及び貨幣の発行等に関する法律」(昭和62年法律第42号)施行に伴い廃止された。

背景

日本の硬貨は1871年(明治4年)制定の新貨条例、次いで、1897年(明治30年)制定の貨幣法を根拠に本位貨幣ならびに補助貨幣が発行されてきた。貨幣法では硬貨の額面・素材・品位・量目を定めていた。1903年(明治36年)頃から銀の価格が上昇し銀貨の素材価値が額面を超えるのに対応して量目を減らしたり品位を落とす必要が生じたが、都度帝国議会で法改正を諮るために時間を要し閉会中は審議できないなど対応が後手に回り銀貨が鋳潰されるなど混乱がおきた。一方で、1931年(昭和6年)に満州事変が生起すると軍需物資であるニッケルを輸入・備蓄する口実として硬貨の素材をニッケルに変更したが、これにも法改正を要した。

制定

1937年(昭和12年)に勃発した支那事変日中戦争)を機に、翌1938年(昭和13年)に臨時通貨法を制定し、帝国議会による貨幣法の改正を経ることなく、随時勅令で素材、品位、量目及び形式を定めて、貨幣法で規定された「貨幣」以外の「臨時補助貨幣」を時局の推移に応じて発行する事を可能とした。

補助貨幣の素材でもある軍需用金属ニッケルなど)の需要に対応し、またニッケルはその大部分を輸入に頼っていたため、これらの金属の使用を差し控えて、日本国内や外地・占領地で豊富に産出される、または調達の容易な金属で代替した貨幣を製造することとした。

支那事変終了後一年までの時限立法として施行されたが、1942年(昭和17年)2月には、大東亜戦争太平洋戦争)終了後一年まで期限を延長した。

運用

制定当初、アルミニウム青銅貨やアルミニウム貨を発行し、貨幣法下で制定したニッケル貨や黄銅貨が回収されて軍需に回された。また、五十銭小額政府紙幣を発行して五十銭銀貨を回収した。1940年(昭和15年)にはアルミニウム青銅貨をアルミニウム貨に置き換え銅を回収した。1941年(昭和16年)に太平洋戦争が始まり戦火が拡大して以降は、アルミニウムを航空機材料に充当するため、アルミニウム貨の量目の削減が2度にわたり行われた。1944年(昭和19年)になるとアルミニウムにも事欠き、占領地である東南アジアで産出する錫を素材とする錫貨、錫・亜鉛合金貨が発行されたが、やがて制海権を失い錫の輸送も途絶すると小額日本銀行券に置き換えられた。

戦後

戦争終了後の1946年(昭和21年)には条文中の「必要ある時」から「当分の内」に改めるとともに、期限を規定していた附則第二項が削除された。以後も国会で改正を重ねてより高額面の貨種を順次追加し、1981年(昭和56年)に500円の貨種を追加して1982年昭和57年)より五百円硬貨が発行された。

この間も貨幣法は存続していたものの有名無実化し、専ら臨時通貨法を根拠とし、その形式を政令で定めた「臨時」補助貨幣が発行され流通する状況が凡そ半世紀の間継続した。

なお、貨幣法の改正を行わずに臨時通貨法の改正による臨時補助貨幣の額面の追加を行う理由として、1946年(昭和21年)7月6日の貴族院「臨時通貨法の一部を改正する法律案特別委員会」において、素材の需給状況から貨幣法による補助貨幣の製造発行が当分困難であり、貨幣法の改正では金貨の問題があって手がつけられず、臨時補助貨幣及び小額紙幣の発行を継続する必要がある旨を、当時の大蔵大臣石橋湛山が発言している。

条文

以下は、1938年(昭和13年)6月1日に公布された内容である(その後の改正等は#改正を参照の事)。

第一條
政府ハ必要アルトキハ貨幣法第三條ニ規定スルモノノ外臨時補助貨幣ヲ發行スルコトヲ得
第二條
臨時補助貨幣ノ種類ハ十錢、五錢、及一錢ノ三種トス
第三條
十錢及五錢ノ臨時補助貨幣ハ五圓迄、一錢ノ臨時補助貨幣ハ一圓迄ヲ限リ法貨トシテ通用ス
第四條
臨時補助貨幣ノ素材、品位、量目及形式ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第五條
政府ハ必要アルトキハ臨時補助貨幣ノ外五十錢ノ小額紙幣ヲ發行スルコトヲ得
小額紙幣ハ十圓迄ヲ限リ法貨トシテ通用ス
小額紙幣ノ形式ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第六條
政府ハ小額紙幣發行高ニ對シ命令ノ定ムル所ニ依リ日本銀行ヲシテ政府預金ノ内之ト同額ヲ區分整理セシメ其ノ引換準備ニ充ツベシ
小額紙幣ハ他ノ通貨ヲ以テ之ヲ引換フ
第七條
小額紙幣ノ發行、銷却引換ニ關シテハ大藏大臣ノ定ムル所ニ依リ日本銀行ヲシテ其ノ事務ヲ取扱ハシム
 
本法ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
臨時補助貨幣及小額紙幣ハ支那事變終了ノ日ヨリ一年ヲ經過シタル後ハ之ヲ發行セズ

改正

1942年(昭和17年)から1981年(昭和56年)にかけて、8度にわたり改正された。改正内容としては、述語の変更、期限の撤廃、貨種の追加がある。

  • 1942年(昭和17年)、大東亜戦争呼称ヲ定メタルニ伴フ各法律中改正法律(昭和17年2月18日法律第9号)により、附則第二項の「支那事変」を「大東亜戦争」に改めた。
  • 1946年(昭和21年)、昭和二十年勅令第五百四十二号「ポツダム」宣言ノ受諾ニ伴ヒ発スル命令ニ関スル件ニ基ク国有財産法中改正等ノ件(昭和21年3月14日勅令第142号)により、附則第二項の「大東亜戦争」を「今次ノ戦争」に改めた。

臨時通貨法の一部を改正する法律

当初は臨時補助貨幣として十銭、五銭、一銭の3種類が規定され、法貨として通用する枚数は、十銭が50枚、五銭及び一銭は100枚とされた。その後、物価上昇に伴い発行される額面の追加が行われ、最終的には五百円百円五十円十円五円一円、五十銭、十銭、五銭及び一銭の10種類が規定されており、1円未満の額面を削除する改正は行われなかった。また、法貨として通用する枚数は、五十銭以上の貨幣は20枚とされており、通貨の単位及び貨幣の発行等に関する法律でもこの通用制限が踏襲されている。

昭和21年改正

1946年(昭和21年)、臨時通貨法の一部が改正され、五十銭硬貨を追加すると共に期限を定めた附則第二項が削除された。

臨時通貨法の一部を改正する法律(昭和21年8月10日法律第5號)
臨時通貨法の一部を次のやうに改正する。
第一條中「必要アルトキハ」を「當分ノ内」に改める。
第二條中「種類ハ」の下に「五十錢、」を加へ、「三種」を「四種」に改める。
第三條中「十錢」を「五十錢ノ臨時補助貨幣ハ十圓迄、十錢」に改める。
第五條中「必要アルトキハ」を「當分ノ内」に改める。
附則第二項を削る。
  
この法律は、公布の日から、これを施行する。

昭和23年改正

1948年(昭和23年)、臨時通貨法の一部が改正され、五円硬貨及び一円硬貨が追加された。

臨時通貨法の一部を改正する法律(昭和23年6月19日法律第56号)
臨時通貨法(昭和十三年法律第八十六号)の一部を次のように改正する。
第二條中「五十錢、十錢、五錢及一錢ノ四種」を「五圓、一圓、五十錢、十錢、五錢及一錢ノ六種」に改める。
第三條中「五十錢ノ臨時補助貨幣ハ十圓迄」を「五圓ノ臨時補助貨幣ハ百圓迄、一圓ノ臨時補助貨幣ハ二十圓迄、五十錢ノ臨時補助貨幣ハ十圓迄」に改める。
  
この法律は、公布の日から、これを施行する。

昭和25年改正

1950年(昭和25年)、臨時通貨法の一部が改正され、十円硬貨が追加された。

臨時通貨法の一部を改正する法律(昭和25年3月2日法律第3号)
臨時通貨法(昭和十三年法律第八十六号)の一部を次のように改正する。
第二條中「五円、一円、五十銭、十銭、五銭及一銭ノ六種」を「十円、五円、一円、五十銭、十銭、五銭及一銭ノ七種」に改める。
第三條中「五円ノ臨時補助貨幣ハ百円迄」を「十円ノ臨時補助貨幣ハ二百円迄、五円ノ臨時補助費貨幣ハ百円迄」に改める。
  
この法律は、公布の日から施行する。

昭和30年改正

1955年(昭和30年)、臨時通貨法の一部が改正され、五十円硬貨が追加された。

臨時通貨法の一部を改正する法律(昭和30年6月20日法律第24号)
臨時通貨法(昭和十三年法律第八十六号)の一部を次のように改正する。
第二条中「十円」を「五十円、十円」に、「七種」を「八種」に改める。
第三条中「十円ノ臨時補助貨幣ハ二百円迄」を「五十円ノ臨時補助貨幣ハ千円迄、十円ノ臨時補助貨幣ハ二百円迄」に改める。
  
この法律は、公布の日から施行する。

昭和32年改正

1957年(昭和32年)、臨時通貨法の一部が改正され、百円硬貨が追加された。

臨時通貨法の一部を改正する法律(昭和32年5月27日法律第134号)
臨時通貨法(昭和十三年法律第八十六号)の一部を次のように改正する。
第二条中「五十円」を「百円、五十円」に、「八種」を「九種」に改める。
第三条中「五十円ノ臨時補助貨幣ハ千円迄」を「百円ノ臨時補助貨幣ハ二千円迄、五十円ノ臨時補助貨幣ハ千円迄」に改める。
  
この法律は、公布の日から施行する。

昭和56年改正

1981年(昭和56年)、臨時通貨法の一部が改正され、五百円硬貨が追加された。

臨時通貨法の一部を改正する法律(昭和56年5月15日法律第40号)
臨時通貨法(昭和十三年法律第八十六号)の一部を次のように改正する。
第二条中「百円」を「五百円、百円」に、「九種」を「十種」に改める。
第三条中「百円ノ臨時補助貨幣ハ二千円迄」を「五百円ノ臨時補助貨幣ハ一万円迄、百円ノ臨時補助貨幣ハ二千円迄」に改める。
  
この法律は、公布の日から施行する。

改正後の条文

昭和56年改正後、通貨の単位及び貨幣の発行等に関する法律で廃止されるまでの条文は以下の様になる。太字部分は当初の条文より追加・変更した箇所である。置換・削除された箇所は打消し線を付す。

小額通貨の整理及び支払金の端数計算に関する法律の施行により1953年(昭和28年)限りで当時流通していた1円未満の通貨は流通を禁止されたが、同法第十条では1円未満の貨幣・紙幣を当分の間行わない、即ち今後の発行の可能性を残し、臨時通貨法の改正を重ねた間も五十銭・十銭・五銭・一銭硬貨と五十銭紙幣の規定は残された。

第一條
政府ハ必要アルトキハ當分ノ内貨幣法第三條ニ規定スルモノノ外臨時補助貨幣ヲ發行スルコトヲ得
第二條
臨時補助貨幣ノ種類ハ五百円、百円、五十円、十円、五圓、一圓、五十錢、十錢、五錢、及一錢ノ種トス
第三條
五百円ノ臨時補助貨幣ハ一万円迄、百円ノ臨時補助貨幣ハ二千円迄、五十円ノ臨時補助貨幣ハ千円迄、十円ノ臨時補助貨幣ハ二百円迄、五圓ノ臨時補助貨幣ハ百圓迄、一圓ノ臨時補助貨幣ハ二十圓迄、五十錢ノ臨時補助貨幣ハ十圓迄、十錢及五錢ノ臨時補助貨幣ハ五圓迄、一錢ノ臨時補助貨幣ハ一圓迄ヲ限リ法貨トシテ通用ス
第四條
臨時補助貨幣ノ素材、品位、量目及形式ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第五條
政府ハ必要アルトキハ當分ノ内臨時補助貨幣ノ外五十錢ノ小額紙幣ヲ發行スルコトヲ得
小額紙幣ハ十圓迄ヲ限リ法貨トシテ通用ス
小額紙幣ノ形式ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第六條
政府ハ小額紙幣發行高ニ對シ命令ノ定ムル所ニ依リ日本銀行ヲシテ政府預金ノ内之ト同額ヲ區分整理セシメ其ノ引換準備ニ充ツベシ
小額紙幣ハ他ノ通貨ヲ以テ之ヲ引換フ
第七條
小額紙幣ノ發行、銷却引換ニ關シテハ大藏大臣ノ定ムル所ニ依リ日本銀行ヲシテ其ノ事務ヲ取扱ハシム
 
本法ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
臨時補助貨幣及小額紙幣ハ今次ノ戦争終了ノ日ヨリ一年ヲ經過シタル後ハ之ヲ發行セズ

廃止

臨時通貨法関係の勅令及び政令

関連項目

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