主人公たる17歳の繊細極まる少年・苧菟(おっと)は、至愛の恋人・瑪耶(まや)の死という、非情にして茫洋たる宿命の深淵に直面する[1]。
瑪耶の「絶対的な不在」は、皮肉にも彼女の実在の影を苧菟の精神へ鮮烈に焼き付け、少年は追憶の甘美な毒によって辛うじて生を繋ぎ止める[1]。しかし、永遠に還らぬ影との対峙は、彼に甘美な生そのものの冷徹な変革を迫るものであった[1]。
やがて死の領分へと肉薄するにつれ、世界は眩いばかりの「銀いろ」と「白」の幾何学的な色彩に統治され、苧菟は自らの熾烈な夢想のなかで、生身の記憶を「夢想の瑪耶」という永遠の偶像へと昇華させ、新たな生の地平へと踏み出していく[1]。