貝ヶ沢口池の所在する菊川水系周辺地域は、低い平地に多くの支流が流れ込んでおり、洪水が頻繁に発生してきた[3]。また、豊かな水源に恵まれなかったことから、農業用水の確保が課題となっていた[3]。こうしたことから、住民らは山地に溜池を造成するなど[3]、水の確保に苦心していた。特に、貝ヶ沢口池が所在した静岡県小笠郡大東町(のちの掛川市)においては、農業に必要な水は、貝ヶ沢口池のような溜池や河川からの取水に頼っていた[4]。その後、大井川右岸用水の完成にともない、大東町の農地はこの用水の恩恵を受けるようになり[4]、水の利便性は飛躍的に向上した。
しかし、貝ヶ沢口池のような溜池は、その後も継続して使用されており、特に大井川右岸用水の受益地以外において、その重要性は失われていない[5]。また、これらの溜池は山地に設けられていることから、大雨や洪水などの際には調整池としての役割を果たしており、治山や治水の観点からも重要な存在となっている[5]。その後、溜池としての老朽化が進んできたことから、「老ため事業」の一環として1979年度に整備が行われた[1]。