超対称性
ボソンとフェルミオンの入れ替えに対応する対称性
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概要
素粒子物理学では、場の量子論を基礎とする標準模型について理論と実験の比較検証が進められている。
一般に場の量子論の計算では、随所に発散が現れるという問題があるが、この問題は朝永振一郎らの繰り込み理論である程度解決可能とされている。この繰り込み理論について、標準模型においては、ヒッグス機構による電弱対称性の自発的破れのスケールを観測事実と合わせるために、理論のパラメーターを精密に調整する必要がある。この問題はプランクスケール(1019 GeV)と電弱対称性が破れるスケール(102 GeV)の間の顕著な隔たりに起因するもので、階層性問題と呼ばれている。この階層性問題に対する解決策の一つとして「超対称性」は導入された。
超対称性は、標準模型の各粒子に対して、対となる「超対称性パートナー(超対称性粒子)」の存在を予言する。例えば、電子に対しては、スピン0で電荷−1を持つスカラー電子(セレクトロン)が対応する。しかし、これらの粒子は現在まで観測されていないため、低エネルギー相である我々の世界の真空において、超対称性は自発的に破れていると考えられている。この超対称性の破れを導く具体的な機構については複数のモデルが提唱されているものの、実験による確証は得られていない。現在、未知の質量領域にある超対称性粒子を直接生成・発見するため、高エネルギー加速器を用いた実験が世界規模で推進されている。
超対称代数
超対称性粒子
SUSY懐疑論
2012年のヒッグス粒子発見以降、実験物理学者らは超対称性粒子の本格的な探索に乗り出した。 ヒッグス粒子の質量(約125 GeV)における微調整問題を自然に解決するためには、SUSYの破れがその近傍のエネルギー領域で発生し、対応する超対称性粒子が観測可能な領域に現れるべきだと予測されていた。しかし、依然として超対称性粒子は一つも発見されていない。このため、素粒子物理学者の間ではSUSYに対する懐疑論が徐々に高まりつつある[3]。 LHCのLHCbやCMS実験で観測された「ストレンジB中間子のミューオン対への崩壊」などは、標準模型の予測と極めて精密に一致するものであった。これは標準模型の正当性を再確認する一方で、新物理としてのSUSYが寄与する余地を厳しく制限する結果となり、同理論への大きな打撃となった[4]。2014年7月にスペインのバレンシアで開催された高エネルギー物理学国際会議(ICHEP)においても、LHCのデータ解析から超対称性粒子の証拠が全く見つからなかったことが報告されている[3]。
CERNが2021年に発表した最新の論文では、広範な探索の結果として「超対称性粒子がいかなる条件下でも観測されなかった」ことが改めて示された。[5]
これにより、少なくとも重心系エネルギー13TeVで探索可能な質量領域には、単純なモデルに基づくSUSY粒子が存在しないことが強く示唆された。ただし、仮にヒッグス粒子の超対称パートナーである「ヒグシーノ」が暗黒物質である場合、他の粒子との質量差が小さい「質量縮退」などの要因により、LHCの探索実験の死角に入りやすいとの指摘もある。[6] 素粒子物理学界では、さらなる高エネルギー領域や未探索のパラメータ領域に存在する可能性も踏まえ、探索が継続されている。
