昭和40(オ)1345 不当利得返還請求 最判昭和45年7月16日-民集24巻7号909頁
Yからブルドーザーを借りていた会社Aから依頼を受けたXは、そのブルドーザーを修理をしてAに引き渡した。しかし、修理後まもなくその会社が倒産したため修理代金回収が極めて困難になった。一方Yは倒産した後、Xの修理の分だけ価値が大きくなったブルドーザーを取り戻し、他に売却した。そこでXは、(倒産した会社でなく)Yに対して修理代金の支払を求めた。
原審の福岡高等裁判所は、原告の請求を棄却した。
最高裁は以下のように述べて、Xの主張に沿った判断を下し、福岡高裁に事件を差し戻した。
ブルドーザーの修理で、Xは材料の用意や作業の手間により修理代金相当の損失を受ける一方、Yは修理代金に相当する利得を得た[ 注釈 1] 。よって、Xの損失とYの利得との間に直接の因果関係があるといえる。これは、修理を受領した者がYでなかったとしても関係ない。
ただ、この修理はAの依頼によるもので、原告はAに対して修理代金債権を(不良債権とはいえ)取得する。よって、XはAに対して修理代金債権を取得するから、右修理によりYの受ける利得はいちおうAの財産に由来することとなり、XはYに対し右利得の返還請求権を有しないのを原則とする。
それでも、Aが無資力であるため、右修理代金債権の全部または一部が無価値であるときは、その限度で、Yの受けた利得はXの財産および労務に由来したものといる。
以上より、Xは、修理(損失)によりYの受けた利得を、Aに対する代金債権が無価値である限度において、不当利得として、Yに返還を請求することができる。
建物賃借人から請け負って修繕工事をした者が賃借人の無資力を理由に建物所有者に対し不当利得の返還を請求することができる場合は、建物所有者が対価関係なしに利益を受けたときに限られる[ 2] とした判例(最判平成7年9月19日−民集49巻8号2805頁)。大法廷判決ではないが、上記のブルドーザー事件の判例を実質的に変更したといえる[ 3] 。