農地に準じた課税
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「一般市街化区域」と三大都市圏の「特定市街化区域」
農地に課せられている固定資産税には3つの種類があり、税額も大きく異なる。もともと農地には、農業生産によって支払い可能な税額が設定されていた。しかし、農地には宅地予備地の側面もあり、住宅建設のための宅地供給の主要な対象と見られやすい。この結果、高度成長期に宅地が不足し、農地の供給を増加させることを意図して、「宅地並み課税」が登場した。「農地に準じた課税」もその関連で出てきた課税であり、負担調整措置の初期を除き、農業経営では支払いが困難な高い税額が課せられるのが一般である。表に主な違いを示した。
| 農地の種類 | 農地の評価 | 負担調整措置 | 課 税 | |
|---|---|---|---|---|
| 一般農地 | 農地評価 | 農地(ゆっくりと増税)* | 農地課税 | |
| 市街化区域農地 | 一般市街化区域農地 | 宅地並み評価 | 農地(ゆっくりと増税)* | 農地に準じた課税 |
| 三大都市圏の特定市街化区域農地 | 宅地並み評価 | 5年程度で本則課税に到達 | 宅地並み課税 | |
- 当初は年に最大20%の増税であったが、1997年からは最大10%の増税となった。ただ、年10%の増税であっても、税額は10年後には2.6倍、20年後は6.7倍、30年後は17.4倍、40年後は45.2倍と、雪だるまのように増加していく。したがって、負担調整による違いは、経過的・一時的なものに過ぎない。
首都圏、近畿圏、および中部圏の三大都市圏のうち、首都圏では首都圏整備法第二条第三項に規定する既成市街地若しくは同条第四項に規定する近郊整備地帯を、近畿圏では近畿圏整備法第二条第三項に規定する既成都市区域若しくは同条第四項に規定する近郊整備区域を、また中部圏では中部圏開発整備法第二条第三項に規定する都市整備区域内にある指定都市の区域又はその他の市を言う。
三大都市圏にある全ての農地が「特定市街化区域農地」であるわけではない。首都圏を例に説明すると、東京都心から見て近郊整備地帯より遠くにある市は「特定市」ではなく、たとえば栃木県小山市や宇都宮市、茨城県つくば市、埼玉県深谷市などの農地は「一般市街化区域農地」である。また、近郊整備地帯内にあっても市でなく町村である場合も除外され、埼玉県の松伏町や鳩山町、神奈川県の愛川町や大井町などがある。これらの市町村の市街化区域農地が、「農地に準じた課税」の対象となる。
非住宅用地と住宅用地特例
地価高騰で固定資産税が重くなったため、政府は住宅用地への負担を軽くするようになる。まず1973年に、「住宅用地に課する固定資産税の課税標準を二分の一の額とする」という負担軽減策が登場した[1]。さらに翌1974年には、「住宅一戸あたり200㎡までの面積にかかる固定資産税について課税標準を四分の一の額とする」という「小規模住宅用地の特例」が追加された[2]。その後、地価に関する公的な価格を地価公示価格を基礎に統一しようという動きで固定資産税の基礎となる地価評価が重くなる1993年に、「住宅用地の課税標準は三分の一、うち200平方メートルまでは六分の一」という負担軽減策に変更された。
では、市街化区域農地への課税は、どちらを規準にしているのだろうか。宅地並み課税が始まったのは、住宅用地特例が始まった1973年で、当初から住宅用地並みの評価を基準に課税されている。ただ当初は二分の一、後も三分の一で、「小規模住宅用地の特例」は全く考慮されていない。
一方、農地に準じた課税は、住宅用地特例開始後の1976年に開始したにもかかわらず、非住宅用地の評価を基礎に課税されていた。そして、21世紀に入った2003年に、ようやく住宅用地特例に準じ、三分の一の額を基礎に課税されることとなった。「小規模住宅用地の特例」が反映されていないことは、宅地並み課税と同じである。表に示すと、このようになる。
| 時期 | 1973~1975年 | 1976~2002年 | 2003年以降 |
|---|---|---|---|
| 一般市街化区域農地 | 1963年の農地課税 | 非住宅地並み課税を目ざす(1993年までは住宅地の2倍、1994年からは同3倍) | 宅地並み課税と同じく、住宅地並み課税を目ざす |
| 特定市街化区域農地 | 宅地並み課税(税額は各該当年)を目ざし、5年程度で本則課税に到達。 | ||
農地に準じた課税では、負担調整のため課税はゆっくりとしか進行しない。それでも2002年にほぼ住宅用地並みの税額となっていた農地が1割前後あり[3]、これら農地では2003年に住宅用地特例が反映され、税額が大きく減少したものと思われる。
国会審議における謎
農地に準じた課税は、地方税法が定める固定資産税の一部である。だから、その誕生や変更は、国会における地方税法の審議で決定される。1970年頃は大都市圏における宅地供給が問題とされていたので、大都市圏の「特定市街化区域農地」への「宅地並み課税」については、必要性を認める者もかなりいたものと思われる。しかし、地方の市街化区域農地も同じように増税し、しかも大都市圏の「住宅地並み課税」ではなく、より税額が重くなる「非住宅地並み課税」を目ざすことは、どのように説明されて議論され、可決されたのだろうか。
驚くことに、農地に準じた課税を実施する法改正を可決した1976年の第77回国会では、「農地に準じた課税」に関し、説明も質疑も全く行われていない。後にこの点を質問主意書で取り上げたのが、第180国会の衆議院質問第300号「市街化区域農地への「農地に準じた課税」に関する再質問主意書」(提出者は社会民主党の吉泉秀男氏)である[4]。この改正によって一般市街化区域農地で宅地並みを目ざす増税が始まることを伏せ、「引き続き検討を加える」と事実に反する説明を行った理由を質問している。答弁は、増税については「法文上明らか」であり、説明しなかった理由として、附則18条で3年後に見直しが予定されていたからとしている。
翌年に提出された第183国会の衆議院質問第100号「一般市街化区域への生産緑地地区指定に関する質問主意書」(提出者は社会民主党(当時)の吉川元氏)は[5]、この附則18条についても追求している。3年後の見直しを定めた附則18条は、その3年後に期限が3年延ばされ、さらに3年後に削除されたが、そのいずれでも国会で「農地に準じた課税」の説明は行われていない、という趣旨である。答弁はこの点にとくに触れず、税制の変更は「法文上明らか」であり、「現行の地方税法に至るまで同様である」、つまり1976年の制度が継続していることを認めている。
この2つの質問主意書の質問と答弁から、「農地に準じた課税」は国会での説明がないまま1976年に誕生し、そのまま継続していることがわかる。
「農地に準じた課税」についてさらに不思議なのが、税額を宅地並み課税のレベルに下げた2003年の減税時の国会審議である。一般的に減税は国民に歓迎されるので、堂々と説明するはずである。しかし、2003年3月3日の衆議院総務委員会の法案の趣旨説明で[6]、片山虎之助総務大臣は「土地税制の改正」の最後の部分で、「また、固定資産税及び都市計画税について、商業地等、住宅用地ともに現行の負担水準に応じた負担調整措置を継続することとしております」と、制度に手を加えて減税することに全く触れていない。その後、3月4日と3月6日に行われた法案への質疑でも、農地課税に触れた議員はいたが、「農地に準じた課税」には全く触れられていない。
