雪と花火 (合唱曲)

From Wikipedia, the free encyclopedia

雪と花火』(ゆきとはなび)は、1957年昭和32年)に多田武彦により作曲された男声合唱組曲[1][2]。作詞は北原白秋[1][2]。多田武彦3作目の作品である[2]

男声合唱組曲『雪と花火』は、 1957年(昭和32年)3月に同志社グリークラブにより初演された[1]

作曲者の弟で、多田家の三男・雅彦[3][注 1]が所属していた同志社グリークラブからの委嘱により、1957年(昭和32年)に男声合唱組曲として作曲、同年3月16日の広島公会堂における同団広島演奏会において、河原林かわらばやし昭良の指揮にて初演された[1][注 2]

その後改訂版が作成され、同年6月16日、同志社栄光館におけるカリフォルニア大学グリークラブ演奏会にて、河原林昭良の指揮、同志社グリークラブによって再演された[1][注 3]

作品について

男声合唱組曲『雪と花火』は、 北原白秋1913年大正2年)に発表した3作目の詩集『東京景物詩及其他』(とうきょうけいぶつしおよびそのた[9][10][注 4])から、4編の詩が取り上げられている[1][2]

『東京景物詩及其他』は1916年(大正5年)、第3版刊行の際に新たに詩1章12編が追加され『雪と花火』に改題された[2](※ 組曲名との混同を避けるため、以降、詩集名は元の『東京景物詩及其他』と記載する)。

官能的象徴詩としての作風を確立していた北原白秋は、近代都市として急激に変貌しつつある明治40年代の東京の情景を軽やかに歌いつつ、隣家の人妻「俊子[注 5]」との道ならぬ恋に苦悩する姿を赤裸々に描いている[2]

第2曲「彼岸花」は、本組曲に先駆けて1955年(昭和30年)の全日本合唱コンクール課題曲公募で佳作を受賞した作品[1]。多田は、「どうせ、湿地の彼岸花 / 蛇がからめば身は細そる」のくだりで、悲しい遊女の姿を凝視していた詩人の視野が、「赤い、湿地の彼岸花 / 午後の三時の鐘が鳴る」のくだりでは「まるで映画のズームアウトのように、あたりの景観までも包み込んでいくような思いがして、北原白秋の詩情の見事さに感動しながら、曲づくりをしていった記憶がある」と記している[13]

終曲の「花火」の配置は、多田が好むドビュッシーの『前奏曲集第2巻終曲「花火」にあやかったもので、白秋が描く「両国の川開き」を、このころ世に出た山下清貼り絵「両国の花火」にオーバーラップさせている[13]

第1曲「片恋」の「曳舟」の読みは当初「ひきぶね」であったが、『多田武彦男声合唱曲集 1』第26刷(1998年10月31日付)で「ひきふね」に改訂された[1]。また、第3曲「芥子の葉」の「芥子(けし)」の読みは、当初「からし」であったが、前出のカリフォルニア大学グリークラブ演奏会で演奏された改訂版にて「けし」に改められた[1]

曲目

全4曲からなる。全編無伴奏である。

多田武彦は、自身が東京へ移り住んで間もない頃であったため、東京の風物への印象を合唱組曲にして残そうとし、『東京景物詩及其他』の中から男女の心の綾を描いた詩に題材を求め、書いたのがこの曲集である[1]

  1. 片恋
    ニ短調[1]。かなう可能性の少ない片思いの恋の相手と、通称「曳舟」運河沿い[注 6]に歩いている場面[14]あかしやの花の散るさまや相手の吐息によって、次第に別れが予感されて来る[14]
  2. 彼岸花
    ト長調[1]。執念深い女にとりつかれ、次第に精力を失いながらも逃れられないでいる男を、日陰に赤く咲き、やがて色あせてしぼむ彼岸花に例えている[14]。「午後の三時の鐘」が、逢引の時間が近づいていることを示す[14]
  3. 芥子の葉
    ニ短調[1]ひなげし虞美人草の異名もある優雅な花だが、花びらが散ると黒いケシ坊主となる[14]。ケシの花が散って黒坊主となるのを見るにつけ、自分の恋の行方が思われ身につまらせてしまう[14]
  4. 花火
    ニ長調[1]。歌の主題は「わかいこころの孔雀玉 / ええなんとせう / 消えかかる」に端的に示される、青春の恋の、花火にも似たはかなさである[14]。多田は「20年前、私は日下部氏(=日下部吉彦)がまだ学生で同大グリークラブ(=同志社グリークラブ)の指揮者であった頃、彼のひきいる同大グリーの名演奏に聴き惚れた。そして私は爾来同大グリーの音色を藍色として心の中に納めこんでいる。この「雪と花火」の第4曲を書いたときも、この藍色をずっと思い浮かべながら作曲した。初演のときの音色も、このレコード[注 7]の音色も、すべて江戸両国川開きの夜空の藍色そのものであった。」と記している[4]

楽譜

音楽之友社『多田武彦 男声合唱曲集(1)』ISBN 978-4-276-90813-0 に収録されている。

脚注

参考文献

関連項目

外部リンク

Related Articles

Wikiwand AI