韃靼の馬

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作者 辻原登
日本の旗 日本
言語 日本語
ジャンル 長編小説
韃靼の馬
だったんのうま
作者 辻原登
日本の旗 日本
言語 日本語
ジャンル 長編小説
発表形態 新聞連載
初出情報
初出日本経済新聞2009年11月1日 - 2011年1月21日
出版元 日本経済新聞社
刊本情報
出版元 日本経済新聞出版社
出版年月日 2011年7月6日
装幀 菊地信義
装画 宇野亜喜良
総ページ数 639
受賞
第15回司馬遼太郎賞(2015年)
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韃靼の馬』(だったんのうま)は、日本の小説家辻原登長編小説江戸時代の日本と朝鮮、そしてモンゴルを舞台にしている[1]2009年平成21年)11月1日から2011年(平成23年)1月21日まで『日本経済新聞』に連載された後[2]、同年7月に書籍化された。2015年(平成27年)に第15回司馬遼太郎賞を受賞[3]。文庫版は集英社文庫より、上下巻で刊行されている。

「韃靼」とは、モンゴル系民族のタタール人のことで、江戸時代には北アジアの諸民族を韃靼と呼んでいた[4]

徳川幕府1711年正徳元年)、29年ぶりの朝鮮通信使を迎える[5]対馬藩士の阿比留克人は通信使の警護を固める一方で、ある極秘任務を請け負う[5]。克人も加わった通信使の一行は、対馬を経て大坂名古屋江戸へと向かう。その旅の終盤、克人は通信使に従う観察御史の柳成一と対立し、柳を殺めて姿を消す[6]

事件から15年後、朝鮮へ渡り金次東と名乗って暮らしていた克人に、日本から密命が届く[7]。それは財政難に陥った対馬藩を救うため、1800年前に漢の武帝が手に入れたという伝説の白馬を、将軍徳川吉宗に献上することだった[7]。克人は藩を救うため、わずかな手掛かりを元に白馬を求める旅に出る[7]。数多の冒険の末に韃靼の白馬を手に入れ日本に届けるが、克人は対馬に立ち寄ったものの朝鮮へ向かう。

主な登場人物

  • 阿比留克人(あびる かつんど) - 対馬藩士。後に朝鮮人の金次東(キム チャドン)として暮らす
  • 阿比留利根(あびる とね) - 克人の妹
  • 新井白石(あらい はくせき)- 徳川幕府に仕える御側御用人
  • 雨森芳洲(あめのもり ほうしゅう) - 対馬藩に仕える儒学者
  • 李順之(イ スンジ)- 会寧出身の陶工
  • 李恵淑(イ ヘスク)- 李順之の娘
  • 柳成一(リュ ソンイル) - 監察御史、実は柳川調興の孫
  • リョンハン - 旅芸人
  • テウン - 旅芸人

構成

小説は朝鮮通信使の一行の行程を追った第1部と、15年後に克人らが白馬を求める旅を描いた第2部からなる。そしてプロローグ、第1部と第2部の間にある間奏、エピローグの部分では、克人の妹の利根が物語の背景、事件の経過、そして結末を物語る、という構成になっている。

背景

平安時代から江戸時代初期にかけて、日本は中国や朝鮮から産物を買い、豊富な鉱物資源で支払っていた[1]。一方で室町時代から朝鮮は日本に通信使を派遣し、外交関係を築いていた[8]。江戸時代にも1607年から1811年まで、12回の通信使が派遣されている[9]。朝鮮との交易の仲介は対馬藩が担っており、朝鮮の釜山には対馬藩により倭館が作られた[10]。朝鮮外交に不慣れな幕府のもとで、対馬藩は中心的役割を担っていた[11]。しかし1635年の柳川一件が発覚すると、幕府は対馬の外交的役割を統制するようになった[11]

徳川家では馬を改良しようという努力が行われており、将軍吉宗はオランダ東インド会社から西洋馬を購入し、洋式馬術を臣下に学ばせていた[1]。また日本の在来馬は、モンゴル在来馬の祖先が対馬経由で輸入され、各地に広がったという研究もある[12]

評価

  • 2011年8月28日の『日本経済新聞』書評では、「周到に張り巡らされた伏線が、終盤で一気につながり、大団円を迎える流れは圧巻だ」「虚実がない交ぜになった物語の運びが蠱惑的で引き込まれる」と評された[13]
  • 2011年9月4日の『読売新聞』で科学哲学者野家啓一は、「舞台は東アジアを駆け巡り、日本、朝鮮、モンゴルの歴史や風俗が細部にわたって色鮮やかに描かれている」「作家辻原登の端倪(たんげい)すべからざる懐の深さを見せつける出色の最新作である」と評した[14]
  • 2011年12月18日の『毎日新聞』で京都造形芸術大学教授湯川豊は、「おもしろさは谷崎潤一郎をもしのごうかという、大伝奇ロマン」「辻原流の奔放な物語の流れを、一身二生を生きる男の魅力がしっかり支えている」と評した[15]
  • 江戸文化研究者の田中優子は、「東アジアの壮大な物語」と題した書評で、本書の歴史的な軸の置き方が実に壮大であるととらえた。そして江戸時代の日本の外国依存体質という問題をあげ、対馬藩と幕府という二重構造、また天皇と将軍という権力の二重構造の中で主人公が翻弄される様を述べている。朝鮮通信使をめぐる前半が特に面白いとしながらも、後半の馬をめぐる物語の背景にも触れる。史実ではない描写のなかにある芸人たちの魅力的な活躍、また堂島米会所の取引の現場なども花を添えているとしている。そして「壮大な物語でありながら、身の丈についての物語である。グローバルでありながら、ローカルである。それこそが、今の日本に必要な感性であろう」と結んでいる[1]
  • ロシア文学者の亀山郁夫は自書の中の「空前なる小説の逸脱」という章でこの小説を取り上げている。小説の概要を記した後、「あらすじを記すだけでも、胸が高まり、手元が汗ばんでくる」「国書のすり替えのモチーフは、封建体制のもつ独特の不条理を如実に浮かびあがらせてくれるし、権力のエゴイズムに踊らされる末端役人のジレンマといった構図はいつの世にもある。他方、スペクタクル的な面白さから言って、克人に恋心を寄せるリョンハンら、サーカス芸人たちが随所で見せる役回りはみごとの一言につきるし、剣豪小説も顔負けの立ち合いや、大阪・堂島の米の先物取引を描写する腕も見逃せない」「総じて、隅々にまで張りめぐらされた伏線をぶじ帰着させる心配りは、作者の驚異的な集中力を物語る」と称賛している。しかし何より驚いたのは、作者の破天荒ともいうべき多層的な文体であるとし、「規範的な文体からの逸脱は、小説という器のもつ可能性を示唆する。しかし逸脱には、むろんそれなりの覚悟が必要だが、辻原にはそれがある」「『1Q84』以降、村上春樹一色に染まりつつあった最近の日本文学で、辻原が、ほとんど切れ目なくゲリラ的に展開する冒険は、文学の可能性を計り知れず遠い地点に率いていってくれそうな喜ばしい予感に満ちている」と激賞している[16]
  • 歴史研究家の坂井昭は、この作品の内容が史実と異なる点を複数挙げ、歴史小説のあり方について問題を提起している[17]

受賞

  • 2015年 第15回司馬遼太郎賞。「国家、民族を超えた人の心の結びつきを血わき肉躍る文体で描いた筆力が評価された」[3]

書誌情報

脚注

参考文献

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