鳥獣
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語義
国語辞典では、「鳥獣」は「鳥とけもの」を意味する名詞とされる。『精選版 日本国語大辞典』は、「ちょうじゅう」の用例を814年成立の漢詩集『凌雲集』に、「とりけだもの」および「とりしし」の用例を『日本書紀』に挙げている[1]。
一般語としての「けもの」は、主として鳥類以外の陸生哺乳類を指すことが多い。一方、法令、行政、狩猟、野生動物管理などの分野では、「鳥獣」は鳥類と陸生・海生の哺乳類を合わせた用語として使用される[4]。
「鳥獣」は、生物の進化的な類縁関係に基づいて設けられた分類群ではない。鳥類と哺乳類は、国立科学博物館などの動物分類・研究において、それぞれ独立した脊椎動物の分類群として扱われている[2]。
日本法における範囲
基本的な定義
鳥獣保護管理法第2条第1項は、「鳥獣」を「鳥類又は哺乳類に属する野生動物」と定義している[3]。したがって、爬虫類、両生類、魚類、昆虫その他の無脊椎動物は、同法における「鳥獣」には含まれない。
2002年の法改正により、同法における鳥獣の概念には、それまで対象が明確でなかったネズミ類、モグラ類および海生哺乳類も含まれることとなった[4]。
ただし、同法第80条に基づき、環境衛生の維持に重大な支障を及ぼす鳥獣や、他の法令によって捕獲などの適切な保護・管理が行われている鳥獣は、同法の適用対象から除外できる。環境省によれば、いえねずみ類3種と、ニホンアシカ、アザラシ類5種およびジュゴンを除く海生哺乳類が適用除外とされている[4]。
法律上の区分
鳥獣保護管理法は、鳥獣の生息状況、保護・管理の必要性および捕獲の目的に応じ、複数の区分を設けている[3]。
| 区分 | 法律上の位置付け |
|---|---|
| 希少鳥獣 | 国際的または全国的に保護を図る必要があるものとして、環境省令で定められる鳥獣。 |
| 指定管理鳥獣 | 希少鳥獣以外の鳥獣のうち、集中的かつ広域的に管理を図る必要があるものとして、環境省令で定められる鳥獣。 |
| 危険鳥獣 | 人の日常生活圏に出現した場合、人の生命または身体に危害を及ぼすおそれが大きいものとして、政令で定められる鳥獣。 |
| 狩猟鳥獣 | 希少鳥獣以外の鳥獣のうち、肉・毛皮の利用、個体数管理その他の目的で捕獲対象となり、捕獲が生息状況に著しい影響を与えるおそれがないものとして、環境省令で定められる鳥獣。 |
危険鳥獣には、政令によってヒグマ、ツキノワグマおよびイノシシが指定されている[5]。
「鳥獣」に該当する動物がすべて狩猟できるわけではない。同法では、狩猟として認められる場合や許可を受けた場合などを除き、鳥獣の捕獲・殺傷および鳥類の卵の採取・損傷を原則として禁止している[6]。
保護と管理
鳥獣保護管理法における「保護」は、生物多様性、生活環境または農林水産業の観点から、鳥獣の生息数を適正な水準まで増加・維持し、または生息地を適正な範囲まで拡大・維持することをいう[3]。
これに対し「管理」は、同様の観点から、鳥獣の生息数を適正な水準まで減少させ、または生息地を適正な範囲まで縮小させることをいう[3]。ここでいう管理は、単なる飼育や監視ではなく、野生個体群の生息数や分布を政策上の目標に近づけることを意味する。
法制上の沿革
日本の近代的な鳥獣・狩猟法制では、1895年に狩猟法が制定され、1918年に全面改正された。1918年の改正では、鳥獣の捕獲を原則として禁止し、狩猟できる鳥獣を限定的に指定する現在の制度につながる枠組みが導入された[7]。
1950年の改正では鳥獣保護区制度が設けられ、1963年には法律名が「鳥獣保護及狩猟ニ関スル法律」に変更され、鳥獣保護事業計画制度が創設された。1999年には特定鳥獣保護管理計画制度が導入された[8]。
2002年には、旧法の条文を口語体・ひらがな書きへ全面的に改めた「鳥獣の保護及び狩猟の適正化に関する法律」が制定され、「鳥獣」が鳥類または哺乳類に属する野生動物であることが明文で定義された[8][4]。
2014年の法改正は2015年5月29日に全面施行され、法律名が現在の「鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律」へ変更された。これにより、個体数や生息範囲を増加・維持する「保護」と、減少・縮小する「管理」が区別して定義され、指定管理鳥獣捕獲等事業や認定鳥獣捕獲等事業者制度が導入された[9]。
2025年の改正では、人の日常生活圏へ出現した場合に人身被害を生じさせるおそれの大きい鳥獣を「危険鳥獣」とする区分が新設され、一定の安全条件の下で市町村が実施する緊急銃猟制度が導入された[10]。
法令・行政上の用法
日本の法令・行政では、「鳥獣」は野生の鳥類と哺乳類を包括する語として、保護・管理、狩猟および被害防止に関する制度名や用語に用いられている[3][4]。主な関連用語には次のものがある。
- 鳥獣害 - 鳥類および哺乳類によって、農林水産業、人の生命・身体、生活環境または自然生態系などに生じる被害の総称。
- 鳥害 - 鳥類によって生じる被害。
- 獣害 - 主として野生の哺乳類によって生じる被害。
- 鳥獣保護区 - 鳥獣の保護を図るため、鳥獣保護管理法に基づいて指定される区域。
- 狩猟鳥獣 - 鳥獣保護管理法に基づき、狩猟の対象として環境省令で定められた鳥獣。
- 希少鳥獣 - 国際的または全国的に保護を図る必要があるものとして、環境省令で定められた鳥獣。
- 指定管理鳥獣 - 集中的かつ広域的に管理する必要があるものとして、環境省令で定められた鳥獣。
- 危険鳥獣 - 人の日常生活圏に出現した場合、人の生命または身体に危害を及ぼすおそれが大きいものとして、政令で定められた鳥獣。
- 鳥獣被害対策実施隊 - 市町村が被害防止計画に基づいて設置し、対象鳥獣の捕獲、侵入防止、生息環境管理などを行う組織[11]。