CO-OPアプローチ

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CO-OPアプローチ(コアップアプローチ、: Cognitive Orientation to daily Occupational Performance)は、カナダ作業療法士であるヘレン・J・ポラタイコらによって開発された作業遂行モデルである。主に発達性協調運動障害(DCD)のある学齢期の子どもを対象として用いられ、新しい運動技能の獲得を支援することを目的としている。

本アプローチは、特定の動作を反復的に練習する従来の手法とは異なり、子ども自身が課題達成に向けた方法や方略を「考えながら」見いだすことを重視している。介入の過程では、子どもが主体的に問題点を分析し、実行可能な戦略を選択・調整しながら技能習得を進める点が特徴である[1]

CO-OPアプローチは、従来の「繰り返し練習をすれば上達する」という考え方に対して批判的な視点を持つ。従来型の指導では、DCDの子どもが誤った方法を繰り返し学習してしまうことがあり、技能の定着につながらないことが多かった。これに対し、CO-OPでは学習プロセスを重視し、子どもが自らの動きを観察しながら最適な解決策を見い出すことをサポートしていく。例えば縄跳びの場面では、「縄を中央に動かしてから跳ぶ」といった具体的な動作手順を直接教えるのではなく、「どの位置で跳べばうまくいくか」を効果的な質問を用いて子どもと共に最適な解決策を検討する方法が採用される[2]

このアプローチの中核となるのが「Goal–Plan–Do–Check」という学習戦略である。

  • Goal(目標):自分は何をできるようになりたいのかを決める。
  • Plan(計画):そのためにどのような手順をとるかを考える。
  • Do(実行):実際に活動を行ってみる。
  • Check(確認):計画が有効であったかを振り返る。

「目標・計画・実行・確認」からなる一連のプロセスは、グローバルストラテジーとも呼ばれる。これを反復することで、子どもは自己評価能力と問題解決スキルを徐々に習得していく。

CO-OPアプローチは個別形式または小集団形式で実施され、介入では子ども自身が選んだ3つの目標を中心に取り組む。1セッションは約1時間で構成され、週1~2回の頻度で計10回程度行われるのが標準的である。また、スキルを日常場面でも定着させる(般化)ため、保護者をはじめとする重要他者が少なくとも3回参加することが位置づけられている[3]

低年齢児への介入においてはパペットを使用したり、注意欠如・多動症(ADHD)のある子どもに対しては、認知負荷を軽減するために目標数を少なく設定し、必要に応じてコミック会話ソーシャルストーリーを併用するなどの工夫が行われる[4]

歴史

CO-OPアプローチは、1990年代トロント大学のヘレン・J・ポラタイコと研究チームによって、およそ10年かけて開発された。開発の初期段階でポラタイコは、従来の作業療法と同じように、子どもが「できていない動作」を細かい要素に分けて改善する、いわゆるボトムアップ型の方法を用いていた。しかし、筋緊張やバランスといった下位能力を改善しても、実際の日常動作の遂行が十分に向上しないケースが多く、こうした前提に基づく複数の臨床試験は効果を示すことができなかった。また、DCDの子が同年代の子どもの動きを観察して学習する「代理学習」についても、期待された成果は得られなかった。

こうした研究結果を踏まえ、ポラタイコは介入の焦点を「身体機能の修復(ハードウェアの改善)」から「学習プロセスそのものの変化(子ども自身によるソフトウェアの書き換え)」へと転換した。すなわち、正しい動作を外部から教えるのではなく、子どもが自ら動作を観察し、問題解決的に方略を立てて遂行を改善するという認知的学習モデルを導入した[2]

この新しい考え方を形にするため、ポラタイコは行動学習理論や、ドナルド・マイケンバウムが提唱した自己教示式問題解決法を参考にした。当初「言語的セルフガイダンス」と呼ばれていたこの方法は、子どもが習得したいスキルをより短期間で効果的に身につけられるようにする問題解決型アプローチへと発展し、後にCO-OPアプローチとして体系化された[5]

基本原則

  • 一度にひとつずつ
  • 教えるのではなく質問する
  • 調整ではなくコーチする
  • わかりやすく
  • 楽しく取り組む
  • 学習を促す
  • 自立に向けて取り組む
  • 般化と転移を促す

これらの原則をもとに、「モデリング」「シェイピング」「フェーディング」「説明」「質問、プロンプト、合図」「ハンドオーバーハンド(手を添えて動きを誘導する)」「直接教示法」などの手法が用いられる[6]

特徴

目標設定

CO-OPアプローチの介入は、子ども自身が3つの具体的な目標スキルを設定することから始まる。これらの目標は、日常生活の中で子どもが「自ら取り組みたい」「取り組む必要がある」あるいは「することを期待されている」と認識する活動から選択される。目標となるのは、自転車の乗車、ボール投げ、キーボード入力など、実践的で日常的なスキルである[4]

このとき設定される目標には、しばしばマーカースキルが選択される。マーカースキルとは、子どもが「できるようになりたい」「上達したい」と思うようなものであり、本人の生活において特に重要な意味を持ち、達成されることで子どもの参加や活動意欲に大きな波及効果をもたらすスキルを指す。CO-OPアプローチでは、子どもの主体性と動機づけを重視するため、子どもが選ぶ目標が自然とマーカースキルとなる場合が多いとされる[7]

介入前には、活動遂行中の様子を観察し、「どこで遂行がうまくいっていないのか(パフォーマンスの崩れ)」を特定するダイナミック遂行分析と呼ばれる分析がなされる。これは、単に身体機能を見るのではなく、「人・環境・活動」の相互作用に注目し、遂行上の問題点を特定するものである[8]

認知ストラテジー

問題解決のために2つの戦略(ストラテジー)を用いる。「目標・計画・実行・確認」(グローバルストラテジー)と、「体の位置を変える」「床に目印をつける」といった具体的な解決策(領域特異的ストラテジー)に分けられる。

グローバルストラテジーは、「目標・計画・実行・確認」の4段階から構成される。教える際にはパペットなどが使用されることもある。4つ目の段階である「確認」には、比較(自分が書いたアルファベットと見本のカードを見比べる)、結果(縄が足に絡まるなど、遂行中に生じた事象を確認する)、成果(紙飛行機が飛んだ、ボールがゴールに入ったなど、動作の直後の物理的な成功を評価する)、帰結(自転車に乗ったまま1ブロック進めた、10回中7回以上は確実にゴールを決められるようになったなど、行動の結果として生じる、より広範で長期的な変化や効果)といった要素が含まれる。

グローバルストラテジーは、声に出して繰り返し使うことで定着し、最終的には状況に応じて自分で活用できるようになる。その過程で、セラピストは正しい使い方を支援する[9]

領域特異的ストラテジー(DSS)は、課題中に生じる具体的なつまずきを解決するための問題解決策で、「目標・計画・実行・確認」のうち「計画」に位置づけられる。グローバルストラテジーのように直接教えるのではなく、セラピストが質問を通して、子ども自身がストラテジーを発見できるようにガイドする必要がある。

領域特異的ストラテジーでは、大きく以下の7種類の言語的ガイダンスが用いられ、頭文字をとって「BATS For 2V’s」と総称される[10]

ストラテジー名 説明
身体の位置づけ
(Body position)
課題に関連した身体の位置や動きを言語化し、必要な姿勢や動作への注意を促す。 椅子に背中を当てて座る/もう片方の手で紙を押さえる/紙を身体に近い正面に置く
実行への注意
(Attention to doing)
課題の実行に注意を向けるための合図を言語化し、動作中の重要点に意識を向ける。 縄が当たる音をよく聞く/ボールをよく見る
課題の明確化・修正
(Task specification / modification)
課題のどの部分をどうすればいいか、具体的に説明する。課題をやりやすくするために、課題内容を変えたり、環境を工夫したりする方法を言語化する。 鉛筆を持ちやすくするために鉛筆グリップを使う/真ん中が分かるように床に印をつける/まっすぐ書きやすいように罫線のある紙を使う
課題の知識の補足
(Supplementing task knowledge)
課題に特有の知識や、必要な情報の取得方法を言語化する。 必ず左から書き始める/大文字のBの書き方を確認する/本に載ってる作り方をさがす
動きを感じる
(Feeling the movement)
動作にともなう感覚に注意を向けるための言語化を行う。 はさみを持つときの手の位置を感じる/空中で文字を書いたときの腕の動きを意識する
言語的な動きの覚え方
(Verbal motor mnemonic)
運動遂行の心的イメージを促すため、課題の要素や身体位置に名前をつける。 「うさちゃんの耳」/「お助けの手」/「観覧車」
手順覚えの言葉並べ
(Verbal rote script)
動作の流れを示す、意味が明確で簡潔な4〜5語の定型文を用いる。 「ドリブル、ドリブル、シュート!」/「上、下、回る」/「押す、滑る、押す、滑る」

介入では、セラピストが言語的ガイダンスを示し、子どもはそれをまねて自分に声をかける「セルフトーク(自己教示)」を行う。セラピストが一方的に教え込むのではなく、子どもが挑戦や失敗をくり返しながら、自分に合った問題の解決方法を見つけられるよう導く点が重要視される。

子どもが失敗の原因を外的要因や能力不足に求めるのではなく、「使用したストラテジーを見直せばよい」と考えられるようになることが、このアプローチの重要なねらいとされる。こうした捉え方が身につくことで、子どもは成功した際にその成果を自分の工夫によるものとして認識しやすくなり、結果として自己効力感の向上にも寄与すると考えられている[10]

Pressley(1987)らの研究をもとに、ポラタイコは、ストラテジー使用が効果的であるためには、以下の5要素が重要であるとしている[11][12]

  1. スキルを習得する動機づけがあること
  2. 課題に関する十分な知識をもつこと
  3. 多様なストラテジーのレパートリーをもつこと
  4. いつ・どこでストラテジーを使用するか理解していること
  5. 努力とストラテジーが遂行に影響することを認識していること

質問形式

CO-OPでは、ストラテジー使用を促すために質問を中心としたガイダンスが用いられ、以下の5種類の質問形式が体系化されている[13]

質問タイプ 説明
事実型 明らかな事実や認識に基づく、単純な答えを引き出す質問。 「『お』の文字は何に似ている?」
収斂型 すでに持っている知識を組み合わせて答えを導く質問。 靴紐で1つ目の輪を作り、次に2つ目の輪を作ったとき、「それは何に見える?」
拡散型 持っている知識をもとに、分析したり予測したりして答える質問。 「『b』のように丸と棒線がある文字は、他に何がある?」
評価型 二つ以上のものを比べて判断する質問。 「こっちのAとそっちのA、どっちがよく書けている?」
結合型 上のいくつかのタイプを組み合わせた質問。 「縄が地面につくところで飛び越すのが一番簡単だとすれば、縄が回っている間にどこで飛べばよいですか?」

質問は目的に応じて使い分けられる。質問法の指針には主に以下がある。

  • 閉鎖型質問:注意を絞りたい場合や焦点を明確にしたい場合に用いられる(はい・いいえで回答可能)。
  • 開放型質問:自由回答方式で、批判的思考や考えを広げたいときに適している。
  • 選択型質問:開放型質問が難しいとき、選択肢から選べるようにして答えやすくする。

また、回答者が思考を整理するための時間を確保することも重要な配慮とされる[14]

運動学習理論

運動の3段階モデル

CO-OPで用いられるスキル習得プロセスの代表的なものに、運動の3段階モデルがある。これは、アメリカの心理学者ポール・M・フィッツとマイケル・ポスナーが1967年に発表した、運動スキルが身につく過程を説明する理論である。このモデルでは、運動スキルの習得を「認知段階」「連合段階」「自動化段階」の三つに分けている。

認知段階では、学習者はまず実際に動いてみて試行錯誤し、やり方を探っていく段階である。この時期の動作はまだ不正確で、スピードも遅く、ぎこちないことが多い。失敗も多く起こりやすい。学習者は手順を整理し動作をコントロールするために、「前を見る」「止まるときは足をつく」など、自らに向けた言語的ガイドを口にしながら動作を進める。

連合段階とは、運動スキルの習得において、学習者が徐々にコツをつかみ、動作が安定してくる時期を指す。認知段階では「どのように動けばよいか」を意識しながら動作を行うが、連合段階に入ると、必要な意識の量が減少し、より正確で一貫した動作が可能になる。

この段階では、失敗が少なくなり、同じ動作を繰り返しても動きのばらつきが小さくなる。また、注意の向け方も効率的になり、学習者は動作全体に広く注意を向けるのではなく、パフォーマンスに重要な要素に絞って注意を向けられるようになる。(例:バットスイングにおいて「力み」ではなく「ボールを見ること」といった核心部分に注意を向けられるようになる。)

「腕を上げる」「踏み込みを早くする」などの言語的ガイドに頼る頻度も徐々に減少し、自ら動作を調整できるようになる。学習者は、フィードバックを適切に活用しながらフォームやタイミングを修正し、動作をより洗練させていくことが、この段階の特徴である。連合段階では、正しい動作パターンを定着させるための反復練習が特に重要であり、この繰り返しが安定したパフォーマンスの基盤を形成する。

自動化段階とは、ある動作をほとんど意識せずに実行できるようになった状態を指す。たとえば、自転車の練習を始めたばかりの頃は、「ペダルを踏んで」「曲がる方向に身体を傾けて」といった点を一つひとつ意識しながら動作を行う。しかし、十分に練習を重ねると、これらの操作をほとんど考えずにスムーズに行えるようになる。このように、動作そのものに注意を向けなくても遂行できる状態が自動化である。

自動化が進むと、動作に注意を向ける量が減るため、走行しながら周囲の景色を見たり、友人と会話したりといった、別の課題に注意を向ける余裕が生まれる。したがってこの段階では、意図的に注意を減らした状態で練習したり、練習環境や状況を変化させても安定して動作を遂行できるようにする練習が重視される[15]

運動スキル

分離・系列・連続スキル

運動スキルは、その動作の構成や遂行の仕方によって「分離スキル」「系列スキル」「連続スキル」の3つに分類される。

分離スキルは、短い時間で完了し、明確な始点と終点をもつ動作である。単体の行為として成立しており、例としてはボールを投げる、照明をつける、ボタンをひとつ留めるといった動作が挙げられる。

系列スキルは、複数の分離スキルを順序に沿って組み合わせ、連続して遂行するスキルである。個々の動作が一定の順番でつながり、一連の行為として完成する。代表的な例として、髪をブラシでとかす、服を着る、料理をするなどがある。

連続スキルは、一定時間にわたって反復的かつ継続的に行われるスキルを指す。遂行時間が長く、動きが流れの中で続いていくことが特徴である。継続時間は環境的な障害や、事前に設定された終点によって決まる。例として、泳ぐ、自転車に乗る、縄跳びを跳ぶ、画面上の動くカーソルをマウスで追うといった動作が挙げられる[16]

オープンスキルとクローズドスキル

オープンスキルとクローズドスキルは、運動スキルを「そのスキルがどのような環境で遂行されるか」に基づいて分類する方法である。

オープンスキル(開放スキル)は、常に変化し予測が困難な環境で行われるスキルを指す。例として、バスケやテニス、サッカーのような相手との駆け引きが必要なスポーツ、あるいは犬を追いかけるといった、周囲の動きに対応しながら行う活動が挙げられる。環境が絶えず変化するため、学習者は多くの情報を素早く処理する必要があり、難易度が高くなる。指導においては、スキルを段階的に教え、環境条件の変化や要求されるスピードを徐々に高めていくことで、学習者が無理なく適応できるようにする。

一方、クローズドスキル(閉鎖スキル)は、安定して予測可能な環境で行われるスキルであり、学習者が自分のペースで遂行できる特徴がある。繰り返しても環境があまり変化しないため、事前の計画が立てやすい。例として、陸上競技や体操などのスポーツや、野菜を切る、キーボードで文字を打つなど、一定した条件下での作業が含まれる。

なお、スキルは必ずしも完全にオープンスキルかクローズドスキルのいずれかに明確に分類されるわけではなく、両者の間に連続体として位置づけられると考えられている。半予測可能なスキルとしては、車両が多い道路を渡る、砂地や雪道の上を歩くなど、一定の規則性はあるものの状況によって変化が生じる動作がある[17]

遂行の複雑度モデル(MPC)

遂行の複雑度モデル(Model of Performance Complexity:MPC)とは、運動スキルを構成する要因を整理し、スキル遂行の難易度を評価するための枠組みである。これは、ジェンタイルの2次元分類法(Gentile’s Taxonomy)に、分離・系列・連続スキルといった課題構成の区分を加えたものである。遂行の複雑度モデル(MPC)は、課題の難易度を調整したりするのに使われる[18]

遂行の複雑度モデル(MPC)[19]

項目
身体の位置づけ安定移動
対象物の操作なしあり
課題の構成分離系列連続
環境静的動的変動
身体の位置づけ(安定・移動)

スキル遂行中の身体の状態に基づく分類。身体の移動が生じる場合、バランス調整や環境への適応が必要となるため、複雑度は高くなる。

  • 安定:立つ・座るなど身体の位置が保持されている状態。
  • 移動:歩行・走行・サッカーなど、身体の移動を伴う動作。
対象物の操作(なし・あり)

スキル遂行に対象物が含まれるかどうかに基づく区分である。

  • なし:自身体の操作のみで遂行される動作。
  • あり:ボール、器具、道具、針などの操作を伴う動作。対象物の制御が必要となることで複雑度が上昇する。
課題の構成(分離・系列・連続)

動作がどのように構成されているかにより、動作の複雑度を三段階で捉える。連続スキルほど環境要因や身体制御の影響が大きく、難易度が高いとされる。

  • 分離スキル(低):個々の動作が独立しており、明確な開始・終了がある。
  • 系列スキル(中):特定の順序で複数の動作を連続的に行う必要がある。
  • 連続スキル(高):一定時間にわたる持続的な動作。例:走る、自転車に乗る、泳ぐなど。
環境条件(静的・動的・変動)

環境が動作遂行にどのような影響を与えるかを基準とした区分であり、スキル難易度に大きく関与する。

  • 静的環境(低):予測可能で変化の少ない環境下で行われる。歩行者のいない道路を歩くなど。クローズドスキルに相当する。
  • 動的環境(中):環境に変化が生じる状況で動作が求められる。オープンスキルに相当する。試行間変動が高い場合から低い場合まである。
  • 変動環境(高):試行ごとに環境条件が変化し、予測が非常に難しい、最も複雑度の高い状況。変動環境は、「動的環境」+「試行間変動(高)」 と位置づけられる。急流下りクロスカントリーなどが挙げられる。

フィードバック

フィードバックは、外部から与えられる「外在的フィードバック」と、自分の感覚から得られる「内在的フィードバック」に分けられる。

外在的フィードバック

結果の知識(Knowledge of Results:KR)とは、計測器による記録や得点表示など、計器や第三者によって与えられる情報である。例えば、「ボールがバスケットゴールに8回入った」「今のサーブはネットを越えたが、サイドラインを外れた」、野球でボールを投げたあとに「いまの球速は110キロだった」と言われることなどがある[20]

外在的フィードバックにはもう一つ、パフォーマンスの知識(Knowledge of Performance:KP)があり、これは動作の質や過程について伝えるフィードバックである。例えば、バスケットボールのシュート練習で「肘が外に開いていたのでボールが安定していなかった」と動作の特徴を説明したり、「もっと膝を使ってリズムよくジャンプすると入りやすくなる」と修正の方向を示したりすることがこれにあたる。学習段階によって、失敗の理由を説明する「説明的KP」や、失敗とその修正方法を同時に教える「規範的KP」が使い分けられる。規範的KPは学習の早期段階に最も有効とされている[21]

内在的フィードバック

内在的フィードバックは、自分の感覚や知覚を通して得られるものである。ボールが手に当たった感触や、動作の際に聞こえる音、自分の動きを目で確認することなどが含まれる。これらの情報は子どもでは明確に気づきにくいこともあり、ときには他者からの指摘によって初めて理解できる場合もある[22]

練習スケジュール

集中練習は、1回の練習試行に要する時間が、試行間の休憩時間より長い形式の練習方法である。主に短時間で完結する分離スキルの習得に用いられる一方、疲労の蓄積が起こりやすいという特徴を持つ。

分散練習は、試行間の休憩時間が、各試行の所要時間と同程度、あるいはそれ以上に設定される練習方法である。スキルが複雑で精度が求められる場合、あるいは学習者の動機づけが低い場合に有効とされ、休息を挟むことで集中力の維持やパフォーマンスの安定が期待できる[16]

ブロック練習とは、同一の動作を連続して繰り返す練習方法である。例えば、バスケットボールのシュートのみを一定時間反復するような形式が典型的である。この方法は、動作の基本的な型を身体に定着させる段階に有効とされる。同じ運動パターンを連続して実行することで、動作に必要な構造や感覚が安定しやすいためである。

これに対し、ランダム練習は、複数の動作を順序を変えながら実施する練習方法である。シュート、パス、ドリブルなどをランダムに切り替えながら行う形式が代表的である。この方法では、毎回異なる課題に対応する必要があるため、次の行動を選択する認知的処理が促され、実際の競技場面に近い状況で技能を活用する能力が向上する。その結果、学習したスキルが長期的に保持されやすく、応用場面でも発揮されやすい。ブロック練習は基礎的な動作の習得に適し、ランダム練習はスキルの定着と転移の促進に寄与する。

全習法とは、動作全体を一つのまとまりとして練習する方法である。短時間で完結する分離スキルに対して効果的とされる。一方、分習法は、運動を複数の要素に分割し、それぞれの部分を個別に練習する方法である。動作全体を一度に習得することが困難な場合に有効である[23]

学習の般化と転移

般化とは、ある場面で身につけたスキルを、別の場面でも使えるようになることを指す。転移とは、一つのスキルを学習したことが、別のスキルの学習に影響を与えることを意味する。

般化を高めるためには、学習条件に変化を加えること、技能を十分に習得させること、複数の文脈での反復練習を行うこと、般化に用いる文脈を段階的に設定すること、モチベーションを維持することが有効とされる。

転移は、あるスキルを学習したことが、別のスキルの習得に影響を及ぼす現象である。転移はスキル間の類似性の程度によって生じやすさが異なり、以下の3種類に分類される。

  • 近位転移:よく似たスキル同士で起きる転移(例:サッカーボールを捕る練習が、テニスボールを捕るときにも役立つ)。
  • 遠位転移:異なるスキルにも影響が広がる転移(例:歩くことがローラーブレードの習得に少し役立つことなど)。
  • 負の転移:新しいスキルを学ぶことが、既存のスキルの遂行を妨げる場合(例:右側通行で運転していた人が、左側通行の運転を学習するなど)。

転移を促すには、練習の種類に変化を加えてスキルを応用する機会をつくること、あえて妨害要因を含む文脈を設定して練習状況を複雑化すること、セラピストからのフィードバックへの依存を減らして自己の感覚情報に基づいて遂行できるよう調整すること、保護者や教師の関与を得ること、そして適切な強化を行うことなどがある[24]

評価

目標設定に際しては、補助的な情報収集手段として、「日常活動の記録」および「小児用活動カード集(PACS)」が用いられる。日常活動の記録は、1日を30分単位に区切り、その時間帯に行われた主な活動を子どもまたは保護者が記録することで、生活全体の活動パターンを把握するものである[25]

一方、小児用活動カード集(PACS)は写真を用いた評価手段であり、4歳から16歳の子どもを対象とした75枚の写真カードが、趣味・社会活動、学校・生産活動、スポーツ、パーソナルケアの4つのカテゴリーに分類されている。評価では、子どもにカードを分類してもらい、「あなたはこの活動をしますか?」という質問に対しイエス・ノーで回答してもらう。子どもが「はい」と答えた場合には、セラピストがその活動の頻度(毎日、週1回、月1回など)を確認し、さらに「自分にとって特に重要な活動」を5つ、そして「したいが実際には行っていない活動」を5つ選択してもらう[26]。これらの情報は、子どもが意味があると感じる活動を把握し、介入における目標設定の妥当性を高めるために活用される。

カナダ作業遂行測定(COPM)

CO-OPアプローチにおいて3つの目標を設定する際に用いられる。これは、日常活動の記録やPACSによって得られた補助的情報を活用して実施される。セルフケア、生産活動、レジャーの各領域から作業遂行上の問題を特定し、課題の遂行について、子ども自身が重要度・遂行度・満足度をそれぞれ10段階で評価する。介入による変化を把握するため、介入前と介入後の2回に分けて実施される[27]

遂行の質評定スケール(PQRS)

遂行の質評定スケール(PQRS)は、遂行の質を、介入の前後で客観的に評価するための評価方法である。主観的な評価を行うカナダ作業遂行測定とは対照的に、実際の遂行を外部観察者が評価を行う。パートAとパートBで構成される。

パートAでは、介入前後の子どもの作業遂行をそれぞれ3回観察し、10段階(1〜10)で評価する。ここでは実際の動作や行動を観察し、その質を直接評定する。

パートBは遂行の変化量を捉えるための11段階スケールで構成されている。評価値は–5(遂行が5倍低下した)から 0(変化なし)、そして+5(遂行が5倍向上した)までの範囲を取り、介入前と後の違いを数値として表すことができる[28]

ダイナミック遂行分析(DPA)

ダイナミック遂行分析は、遂行における問題点や失敗の要因を明らかにするための観察中心の分析手法であり、介入全体にわたって継続的に使用される。分析は子どもの遂行を直接観察しながら進められ、遂行上の問題、誤り、その原因を記録する。

分析は二段階行われる。第一段階では、活動に取り組むための前提として、子どもの動機づけが十分であるか、また活動の手順や要点を理解しているかが確認される。動機づけが不十分であると判断される場合には、分析を継続するのではなく、不安の軽減や興味づけといった動機づけを高める支援が優先される。例えば「泳ぐ」ことを目標にしていても、下位要素である「顔を水につける」ことに強い拒否を示す場合、その活動に取り組むための実質的な動機づけは整っていないとみなされる。同様に、課題に関する理解が不十分な場合には、説明や手本を提示し、必要な知識が補われる[29]

第二段階では、子どもの遂行を観察し、誤りや問題点がどの段階で生じているのか、またそれらがどのような原因によるものかを検討する。分析には、運動学習の三段階モデル(認知→連合→自動化)や遂行の複雑度モデル(MPC)などが参照される[30]

これらの分析は、子どもがどこでつまずいているのかを明らかにし、適切なストラテジーの選択や介入の方向性を決定するために用いられる[31]

外部リンク

関連項目

脚注

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