Everywhere at the End of Time

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レーベル History Always Favours the Winners
『Everywhere at the End of Time』
the Caretakerスタジオ・アルバム
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Everywhere at the End of Time』(エブリウェア・アット・ジ・エンド・オブ・タイム)は、イギリスの電子音楽家ジェームズ・レイランド・カービーが「ザ・ケアテイカー英語版」名義で発表した作品。2016年から2019年にかけて全6枚のアルバムがリリースされ、劣化したボールルーム音楽のサンプルを用いて、アルツハイマー病の進行過程を表現している。2011年の『An Empty Bliss Beyond This World』の成功もあり、カービーはこの主題への関心からクラクフでこれらの作品を制作し、同名義での最後のリリースとした。各作品は、リスナーに時間の経過を感じさせるために6か月ごとにリリースされた。また、アルバムジャケットには彼の友人であるイヴァン・シール英語版の抽象画が用いられた。これらの作品は、ウィリアム・バシンスキー英語版ブリアルと比較されることがあり、後期のアルバムの制作にはジョン・ケージの偶然性の音楽からの影響もみられる。

本作の長さは6時間30分以上におよび、患者の人生における喜び、絶望、混乱、ノスタルジア、不安、恐怖、孤独、そしてといった多様なできごとを表現している。Stage 1から3では全体を通してビッグバンドをサンプリングしており、『An Empty Bliss Beyond This World』に近い内容となっているのに対し、第4〜6段階ではケアテイカー従来のメロディックなアンビエント作品からはなれて混沌としたノイズ的なサウンドスケープを形成している。匿名の映像作家Weirdcoreは、Stage1、2のためにミュージックビデオを制作し、カービーの公演で上映された。当初カービーは、このプロジェクトが衒学的だと見なされることを懸念し、アルバム自体を制作しないことも考えていたが、最終的にはこれまでのどの作品よりも多くの時間を費やして制作した。

シールの絵画は、ケアテイカーのコンピレーション・アルバム『Everywhere, an Empty Bliss』(2019年、未収録曲をまとめた作品)の名を冠したフランスの美術展で展示された。

本作の各Stageが発表されるにつれて、批評家たちはこのシリーズに対してしだいに肯定的な評価をするようになり、その長大さ、独自のコンセプト、そして感情的なパワーを強調した。本作はカービーのマグヌム・オプスと見なされ、2010年代にもっとも讃えられた音楽作品のひとつとなった。2020年代初頭には、YouTubeやTikTokにおいて「通し聴きチャレンジ」やおすすめ動画のかたちで大きな現象となり、その後、認知症患者の介護者からは若いリスナーの共感性を高めるものとして評価された。本シリーズは以降、インターネット文化において「ダーク」な作品として、あるいはインターネット・ミームとしての地位を保ち、ケアテイカーのファンによる類似の作品を数多く生み出している。さらに、音楽ゲーム『フライデーナイトファンキン』(2020年)のMODに登場し、アナログホラーリミナルスペースBackroomsといった美学のスタイルにも取り入れられた。

A white man of the 1930s stands at an early-20th-century microphone
『Everywhere at the End of Time』でサンプリングされたビッグバンド歌手、アル・ボウリー

1999年、ジェームズ・レイランド・カービーは「ザ・ケアテイカー」という名義を用いはじめ、この名義でビッグバンドのレコードをサンプリングし、幽霊的な雰囲気を表現したアルバムをいくつか発表した。その着想はスタンリー・キューブリックの作品『シャイニング』(1980年)に登場するボールルームの場面に由来し、ケアテイカー名義のデビュー作『Selected Memories from the Haunted Ballroom』(1999年)にもそれが反映されている[1]。これら初期の作品は、後年のリリースでより顕著になる彼のアンビエントのスタイルを提示するものとなった[2] 。2005年には、3時間に及ぶアルバム『Theoretically Pure Anterograde Amnesia』で前向性健忘を描きつつ、記憶というテーマを探究した。2008年までに『Persistent Repetition of Phrases』によって「ザ・ケアテイカー」の名義はより広く批評的関心を集め、ファン層も拡大していった[1]

2011年、カービーは『An Empty Bliss Beyond This World』を発表し、アルツハイマー病の探究をテーマとしたことで高い評価を得た[1] 。当初カービーはケアテイカー名義での新作を制作する意志はなかったが、このアルバムの成功によってプロジェクトを継続することとなった。次作『Patience (After Sebald)』(2012年)はサウンドトラック・アルバムであり、記憶喪失を扱う主題や彼の他の作品とおなじ音楽的スタイルを持ってはいなかった。カービーにとって、記憶について唯一の未開拓のコンセプトはアルツハイマー病の全過程を描くことであり、その病の進行が『Everywhere at the End of Time』の6枚のアルバムを通して徐々に明かされていくことを構想した[2]。 本作はケアテイカー名義での最後のリリースかつ、同時にこの名義の象徴的な死をあらわすものでもあり、カービー自身も「ケアテイカーとしての活動は終わりに近づいていると思う。これ以降、この名義で自分がどこへ行けるのかがもう見えない」と語った[1]

コンセプト

この音楽をリアルタイムの生きた文化として記憶しているのは、もう九十代の人間だけだろう。ここでカービーが提示しているものは、かつて愛した曲のかすかな、褪せた記憶の断片が、やせ衰えた心の中でゆらめきつづける姿として聴かれるかもしれない[3]
  Simon Reynolds英語版

『Everywhere at the End of Time』のコンセプトは前衛的かつ実験的な性格を持つものと評されており[4][5][6] 、認知症の「進行と全体性」を探究することを目的としている[7][8][9]。アルツハイマー病には7段階の進行過程があるが、第1段階は症状がないため、仮にこれを音楽的に表現する場合、単に元のサンプルを提示するだけにすぎなくなる。そのため、第1段階はこの作品にはあらわれていない。カービーはこれを「ステージ0」と呼んだ[10][11]

アルバムのそれぞれの楽曲には、アルツハイマー病の段階に応じた印象的な曲名と説明が付されており、全編を通して劣化、憂鬱、混乱、死といった主題が強調されている[7][12][13]

死の表象については、アレクサンドラ・ワイスが本シリーズを「西洋的な死の観念に挑戦するもの」と評している[14] 。また、混乱の描写について音楽サイトTiny Mix Tapes英語版は「常に無に屈する危険にさらされており」、ケアテイカー名義における決定的な「スワンソング」となっていると述べた[15]Big Think英語版のティム・ブリンクホフはこの作品をハイカルチャーと位置づけ、狂騒の20年代とジャズ・エイジのサンプルを無秩序なホワイトノイズへと変質させたその劣化を「恐ろしい」と評した[16]

ステージ

ステージ 1–3

『Everywhere at the End of Time – Stages 1–3』
the Caretakerスタジオ・アルバム
リリース
ジャンル
the Caretaker アルバム 年表
Extra Patience (After Sebald) (2012)Everywhere at the End of Time – Stages 1–3 (2016–2017)Take Care. It's a Desert Out There... (2017)
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ステージ1は記憶の衰えの初期兆候をあらわしており、シリーズの中でもカービーが「うつくしい白昼夢」と呼ぶものにもっとも近いアルバムである[7]。本作のアナログ盤には「生涯にわたって残る記憶(Memories That Last a Lifetime)」という文言が刻まれている[17]

収録曲

メンバー

参考文献

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