Giving What We Can
From Wikipedia, the free encyclopedia
| 略称 | GWWC |
|---|---|
| 設立 | 2009年11月 |
| 種類 | 非営利組織 |
| 目的 | 効果的な慈善寄付の促進 |
| 本部 | イギリス(イングランドおよびウェールズ) |
| 重要人物 |
トビー・オード(共同創設者) ウィリアム・マッカスキル(共同創設者) バーナデット・ヤング(共同創設者) |
| ウェブサイト |
www |
Giving What We Can(ギビング・ホワット・ウィー・キャン、略称: GWWC)は、効果的利他主義の理念に基づく非営利組織であり、10%誓約(10% Pledge)を中心に据えた効果的な寄付の普及・啓発・提唱を行っている。2009年11月にオックスフォード大学の哲学者であるトビー・オードおよびウィリアム・マッカスキルによって設立された[1]。その使命は、効果的かつ相応の規模での寄付を文化的規範とすることにある[2]。
歴史
創設
Giving What We Canは、オックスフォード大学バリオール・カレッジの哲学者トビー・オードが発案した。オードはピーター・シンガーやトーマス・ポッゲらの倫理学者の著作に触発され、2009年に自らの所得の相当部分を効果的な慈善団体に寄付することを決意した[1][4]。同様の誓約に関心を持つ友人・同僚が多数いることを知ったオードは、同じくオックスフォードの哲学者ウィリアム・マッカスキルとともに、費用対効果の高い慈善団体に所得の相当部分を寄付する人々の国際的な組織の創設に取り組んだ。
2009年11月、オードは妻で当時研修医だったバーナデット・ヤング、そして共同創設者のマカスキルとともにGiving What We Canを発足させ、発足時点で23名の会員を擁した[4]。その発足は大きなメディアの注目を集め、1年以内に64名が参加し、誓約総額は2,100万米ドルに達した[1]。設立当初はボランティアベースで運営されていたが、2012年夏には常勤スタッフを採用するに至った[1]。
オードはユダヤ教のマアセル・ケサフィムやイスラームのザカートとの類似性を認めつつも、この取り組みに宗教的な動機はないと明言している。オード自身は当初、年収を2万ポンドに上限を設けてそれを超える分をすべて寄付することを誓った[5]。
組織の発展
2011年、マカスキルらによるキャリア支援団体「High Impact Careers」(のちに80,000 Hoursに改称)がGiving What We Canから派生して設立された。同年、Giving What We Canと80,000 Hoursを傘下に収める傘組織として効果的利他主義センター(Centre for Effective Altruism、CEA)が設立された。この際、「効果的利他主義」という呼称が初めて公式に用いられた[6]。その後、法人名は「Effective Ventures Foundation」に変更された[7]。
2024年にGiving What We Canは独立した法人として分離独立(スピンアウト)し、Effective Ventures Foundationおよび効果的利他主義センターの傘下から外れた[8]。現在、Giving What We Can UK(イングランド・ウェールズ登録慈善団体番号:1207964)およびGiving What We Can USA Inc.(米国501(c)(3)非営利組織、EIN:93-3629215)として運営されている[2]。
2015年時点で会員数は1,000名を超え[9]、2020年には5,000名を突破した。2025年時点では会員数は1万人を超えている[2]。2022年3月時点において、会員が誓約した総額は25億米ドルを超えていた[10]。
活動と誓約制度
10%誓約(The 10% Pledge)
Giving What We Canの中心的な活動は「10%誓約」の推進である。誓約の文言は以下のとおりである。
- 日本語訳
- 「私は、自分の所得の一部を使って多大な善をなすことができると認識しています。より少ない収入でも十分に生活できるため、私は、余生あるいは引退するまでの間、稼ぎの少なくとも10%を、他者の生活を最も効果的に向上させることができる団体に寄付することを誓います。この誓約は、自由に、公に、そして誠実に行います。」
- 原文(英語)
- 「I recognise that I can use part of my income to do a significant amount of good. Since I can live well enough on a smaller income, I pledge that for the rest of my life or until the day I retire, I shall give at least ten percent of what I earn to whichever organisations can most effectively use it to improve the lives of others, now and in the years to come. I make this pledge freely, openly, and sincerely.」
10%という割合は、達成可能でありながら実質的な意義を持つ水準として設定されており、誓約はあくまでも自発的なもので法的拘束力はない[11]。
2023年末には、所得に加えて資産についても誓約できるオプションが追加された。共同創設者のオードは年収2万ポンドを超える分をすべて寄付する「さらなる誓約」(Further Pledge)を行っており、マカスキルも同様の誓約をしている[11]。
トライアル誓約(The Trial Pledge)
10%誓約に踏み出す準備がまだできていない人のための暫定的な誓約として「トライアル誓約」が提供されており、一定期間にわたって所得の1%以上を寄付することを約束するものである[11]。
企業誓約
2020年には、企業が純利益の少なくとも10%を効果的な慈善団体に寄付することを誓約する制度が導入された。2024年時点で51社がこの誓約に署名している[2]。
調査・推薦活動
Giving What We Canは、個々の慈善団体を直接評価するのではなく、影響力を重視した第三者の慈善評価機関の調査を評価・精査することで、寄付者が最大の影響をもたらす機会を見つけられるよう支援している[12]。
推薦対象は3つの分野にわたっている。
- グローバルヘルスと福祉:
- GiveWellの評価を主な依拠として推薦を行っている。
- 動物福祉:
- 動物慈善評価機関(Animal Charity Evaluators)の助成プログラムおよびEA Fundsの動物福祉基金を参照している。
- 世界的壊滅的リスクの低減:
- EA Fundsの長期未来基金(Long-Term Future Fund)およびLongview PhilanthropyのEmerging Challenges Fundを参照している。
Giving What We Canの研究チームは毎年「評価者の評価」(Evaluate the Evaluators)を実施し、採用する評価機関の質と信頼性を独立して検証している[12][13]。
Giving What We Canは2011年から、GiveWellの調査と質調整生存年(QALY)の概念を用いて、途上国の貧困対策に最も効果的な慈善団体に関する定期的な報告を提供してきた[14]。現在は、グローバルヘルスのみならず、動物福祉や将来世代の福祉を対象とした分野にも推薦の範囲を広げている。
著名な誓約者
2009年の発足以来、多くの著名人が誓約に署名している。その一部を以下に示す[15][16][10]。
- ピーター・シンガー — プリンストン大学生命倫理学教授、創設メンバー
- デレク・パーフィット — オックスフォード大学上席研究員・ハーバード大学ほか客員哲学教授
- マイケル・クレマー — シカゴ大学経済学・公共政策教授、ノーベル経済学賞受賞者(2019年)
- ウィリアム・マッカスキル — Giving What We Can共同創設者・オックスフォード大学哲学准教授
- トビー・オード — Giving What We Can創設者・オックスフォード大学上席研究員
- ダスティン・モスコヴィッツ — Facebook共同創設者・Open Philanthropy共同設立者
- ジャネット・ラドクリフ・リチャーズ — オックスフォード大学実践哲学教授
- トーマス・ポッゲ — イェール大学哲学・国際問題教授、Global Justice Program所長
- ルトガー・ブレグマン — オランダの歴史家・著述家
- サム・ハリス — 米国の著述家・哲学者・神経科学者・ポッドキャスター
効果的利他主義との関係
Giving What We Canは効果的利他主義運動の先駆的な組織の一つである。2011年にGiving What We Canから派生した80,000 Hoursとともに、同年に効果的利他主義センター(Centre for Effective Altruism、CEA)が傘組織として設立された。この際、「効果的利他主義」という用語が初めて用いられた[6][17]。Giving What We Canは、証拠と理性を用いて他者を最大限に支援するという効果的利他主義の中心的理念を、「稼いで与える」(Earning to Give)という実践の場で体現している[2]。
資金面では、2024年時点でGiving What We Canの最大の支援者はOpen Philanthropyであり、会員からの個人寄付や助成財団からの助成金によって運営されている[18][3]。