NLRP1
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NLRP1(NLR family pyrin domain containing 1)は、ヒトではNLRP1遺伝子によってコードされているタンパク質である[5][6][7]。NLRP1はインフラマソームを形成することが最初に示されたタンパク質である[8]。NLRP1はさまざまな細胞種に発現しているが、主要なものは上皮細胞と造血系細胞である。小腸、胃、気道上皮の内壁などの腺上皮構造や皮膚の無毛部にも発現はみられる[9]。NLRP1の多型は皮膚におけるクローン病腸管外合併症と関連している[9]。NLRP1の多型は、乾癬、尋常性白斑、全身性エリテマトーデス、1型糖尿病との関連もみられる[10]。マウスでは、炭疽菌致死因子のプロテアーゼ活性によるN末端の切断によって特定のバリアントが活性化されることが示されている[8]。
機能
NLRP1遺伝子には、アポトーシス関連タンパク質からなるCED-4ファミリーに属するタンパク質がコードされている。CED-4ファミリーのタンパク質にはCARDドメインが含まれており、プログラム細胞死における重要な媒介因子となることが示されている。NLRP1タンパク質はN末端に明確なPyrinドメイン(PYD)が存在し、このドメインはタンパク質間相互作用に関与していると考えられている。NLRP1タンパク質はカスパーゼ-2と強力に、そしてカスパーゼ-9とも弱く相互作用する。NLRP1遺伝子の過剰発現はプログラム細胞死を誘導することが示されている。この遺伝子は選択的スプライシングによる複数の転写バリアントが見つかっているが、一部のバリアントの生物学的妥当性は未解明である[7]。
活性化機構
NLRP1は抗細菌・抗ウイルス免疫応答を活性化する。齧歯類では、炭疽菌致死因子によるMAPキナーゼの切断による抗細菌応答の喪失は、NLRP1の切断による活性化によって補償されている。ヒトもNLRP1を産生するが、ヒトのNLRP1は致死因子によって活性化されるわけではない[8]。一方で、NLRP1は同様にタンパク質切断によって活性化されている可能性があり、自己阻害を行っているPYDが除去されることでCARDドメインによってカスパーゼ-1前駆体のリクルートと活性型カスパーゼ-1への変換が行われる[8]。ヒトのNLRP1の活性化は、エンテロウイルスの3C様プロテアーゼによる切断などいくつかの方法で行われている可能性がある[11]。
相互作用
ヒトのNLRP1変異
マウスのNLRP1バリアント
マウスには3つのNlrp1パラログ遺伝子(Nlrp1a、b、c)が存在し、Nlrp1cは偽遺伝子である[17]。マウスのNlrp1bは受容体-リガンド型の機構によって活性化されるわけではない。マウスの特定の近交系、BALB/cと129では、Nlrp1bは炭疽菌から分泌される致死因子(LF)と呼ばれるプロテアーゼによって活性化される[18]。LFは防御抗原(PA)とともに、致死毒素を形成する。PAの役割はLFを宿主細胞の細胞質基質へ送達するためのトランスロケーションチャネルの形成であり、送達されたLFはMAPキナーゼを切断して不活性化することで免疫応答を抑える役割を果たす[19][20]。LFは直接Nlrp1bをN末端近傍で切断し、この切断はNlrp1bインフラマソームの形成とカスパーゼ-1の活性化に必要かつ十分である[21]。Nlrp1b依存的なインフラマソーム応答の活性化は、IL-1βや好中球などの機構による宿主防御においてみられる[22][23]。Nlrp1bは細菌プロテアーゼのセンサーとして機能し、病原性因子によって特異的に活性化される免疫応答となっている[24][25]。
マウスの既知の他の機能的NLRP1パラログであるNlrp1aに関しては、Nlrp1aに機能獲得型ミスセンス変異(Q593P)を有するマウスではインフラマソーム応答が活性化されることは明らかにされているものの、野生型のNlrp1aを活性化する刺激が何であるかは、明らかではない[26]。