アンボイナガイ
巻貝の一種
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アンボイナガイ(学名 Conus geographus)は、腹足綱新腹足目イモガイ科に分類される巻貝の一種。
| アンボイナガイ | ||||||||||||||||||||||||
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| 保全状況評価 | ||||||||||||||||||||||||
| LEAST CONCERN (IUCN Red List Ver.3.1 (2001)) | ||||||||||||||||||||||||
| 分類 | ||||||||||||||||||||||||
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| 学名 | ||||||||||||||||||||||||
| Conus(Gastridium) geographus Linnaeus, 1758 | ||||||||||||||||||||||||
| 英名 | ||||||||||||||||||||||||
| Geography cone, Geographer cone, Geographic cone, Cigarette snail |
形態
螺塔が横倒しになった里芋型の巻貝の一種である。イモガイとしては大型種で、殻高は10㎝を超えることもある。
殻高10cm前後だが、大型個体は殻高13cmを超え、イモガイ類の中でも大型種である。貝殻はイモガイ類にしては薄く、殻口が広い。特に殻底付近で殻口が幅広く開く。螺塔(巻き)は低いが肩はよく角張り、ごく低い結節(角状の突起)が並ぶ。貝殻の色は褐色-赤褐色で、白い三角形の鱗雲のような斑点が多数散らばる。雲状斑が少ない領域もあり、遠目に見ると体層に2-3本の色帯があるように見える[1][2][3][4][5]。
三角斑のあるイモガイは他にも多く知られるが、本種の三角斑は縁取りの線がなく、かすれる。近縁のシロアンボイナ C.(G.) tulipaは殻表の白色部が多く殻口内が紫色を帯びること[2]、ムラサキアンボイナ C.(G.) obscurus は螺塔の結節がなく紫色が強いことで区別できる。
歯舌は長さ1cm・太さ0.2-0.3mmほどで、魚の小骨のような形状だが、長い毒管を通じて毒嚢に繋がる。先端に「返し」もあり、刺さると抜けにくい。歯舌は口内の歯舌嚢に収納しているが、餌を捕食する時に吻から突き出し、刺したものに毒を注入する。吻は殻高と同程度の長さに伸ばすことができ、捕食時には大きく広がる[6][4]。
イモガイ類の歯舌の構造は種によって異なり、特に食性が異なるものでは微細な構造が異なる。
- 大きな開口部を持つ。螺塔の巻は低い
- 螺塔の頂点から見ると巻貝である
生態
浅海のサンゴ礁に多く生息するが、夜行性で昼間は石の下などに潜んでいる。
魚食性。獲物となる魚を見つけると吻を長く伸ばす。魚の隙を見て歯舌を銛のように飛ばして毒を注入し、麻痺して動けなくなった魚を丸呑みする[4]。なお、一部のイモガイでは魚の隙を伺うのではなく、毒の銛とは別に海水中にインスリン様の物質を放出し、魚を低血糖状態にして動きを鈍らせているという研究もある[7]。こういった手法はシロアンボイナも用いることが確認されている。なお、自らのインスリンを捕食目的の武器として使用するのはアンボイナとシロアンボイナのみであり、他の貝類や既知の生命体の種族には見られない特徴である[8]。
形態節同様、歯舌の使い方は食性により異なり、貝食のイモガイの場合は注射針のようにして獲物に毒液を注入するだけだという。
天敵は貝食性イモガイ(タガヤサンミナシなど)や甲殻類(強力な鋏脚を持つガザミなどワタリガニ科や貝食性に特化したヤマトカラッパなどカラッパ科をはじめとしたカニ、イセエビなど)である。種によっては人間をも死に至らしめるほどの猛毒を持つ毒銛も、頑丈な甲殻で全身を覆った甲殻類には通用せず、為す術もなく食べられてしまう。
毒
イモガイ類の毒はコノトキシンという神経毒だが、本種はイモガイ類の中でも特に死者や重症者が多い[9]。毒性の強さはインドコブラの37倍と言われるうえに血清もないので、刺された場合は一刻も早く心臓に近い箇所を紐などで縛って毒を吸い出し、ただちに医療機関を受診するよう呼びかけられている[6][4]。ヒトに対する致死量は、成人では1-3μg/kg程度と推定される[9]。マウスに対する半数致死量は20μg/kgである。
分布
分類
非常に広い分布域を持つ種であるが、亜種は知られていない。
人間との関係
魚を即死させることができる毒を持つ本種であるが、脊椎動物全般に対して毒性を発揮し、ヒトが刺された場合にも死に至ることがある危険な貝として知られている。
刺症
刺症事故は漁、潜水、潮干狩りなどで発生している。また、漁獲したものを子供が手に取り、いじるなどして刺された例もある。沖縄ではアンボイナによく似ているマガキガイが多く漁獲されているため、誤認による事故も多い。1996年に発表された報告によれば、沖縄県や鹿児島県で少なくとも23人がアンボイナに刺され、8人が死亡している[6]。ただし、この報告では記録されていない事故も多いとされるほか、サンゴ礁域での水死事例の中には体力や水泳技術が充分な人も含まれていることから、実はイモガイ類、ヒョウモンダコ、オニダルマオコゼなどの有毒生物による死者が含まれるのではないかとも指摘している[6][4]。
沖縄県での刺症事例では、刺された当初は何もないものの30分ほどしてから激痛が発生し、その後遅脈、呼吸困難、四肢のチアノーゼなどの症状も加わり、刺されてから4時間で死亡したという[12]。別の事例でも患者は激痛を訴えていたという[13]。
毒の作用は末梢神経の伝達を阻害して随意筋を麻痺させるものであり、中枢神経や心筋などへの障害は現れないため、刺された場合は人工呼吸器による補助を与え、毒が代謝されるのを待つ対症療法を行うこととなる[6]。症状のピークは刺されてから5-6時間後で、12時間以降は生命の危機を脱し、後遺症もほとんどないとされている[6][4]。
種の保全状況
国際自然保護連合(IUCN)作成のレッドリストでは、本種の絶滅の可能性について2026年現在で低危険種(Least Concern, LC)と評価している。日本の環境省が作成するレッドリストには記載がなく、都道府県作成のものでも指定する自治体はない。
その他
本種を始め、イモガイ類の貝殻はコレクションの対象にもなる[1][2][3][4]。肉自体に毒はないことから、他のイモガイ類と同様に食用にもできる[3]。
名前
貝類は厳密に標準和名が定められていないが、「アンボイナ」ないし「アンボイナガイ」が事実上の標準和名に相当する名前として使われ、各種の図鑑や目録はこの名前で掲載することが多い[14]。
アンボイナという和名はインドネシアの港湾都市アンボンに由来する[2]が、これはその近海で本種が多産するためといわれる。
沖縄県でアンボイナを「ハマナカー」と呼ぶのは、本種に刺されると手当てするまもなく「浜の半ば」あたりで死んでしまうことを意味している。また、猛毒を毒ヘビのハブになぞらえ、「ハブガイ」(波布貝)とも呼ばれる[6][4]。例として、シュノーケリングで貝採集をしていて刺された人物は最初、蚊に刺された程度の痛みを感じたが、採集を続け、30分後に岸に帰ろうとしてめまいなどの症状に気づいた[6]。浜を歩いたところで歩行困難となり、付近の人に救助されて事なきを得たが、ひとりではたどり着けなかっただろうといった報告がある[6]。英名の1つである "Cigarette snail" (シガレット・スネイル、たばこの巻貝)には、「刺されて死ぬまでに煙草一服くらいの時間しかない」という意味が込められている[10]。
英名は"geography cone"(地図巻貝)と呼ばれ、殻の模様に由来する。種小名も同じ意味。