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国際自然保護連合

1948年に創設された国際的な自然保護団体 From Wikipedia, the free encyclopedia

国際自然保護連合(こくさいしぜんほごれんごう、英語: International Union for Conservation of Nature and Natural ResourcesIUCNフランス語: Union internationale pour la conservation de la natureスペイン語: Unión Internacional para la Conservación de la NaturalezaUICN)とは、1948年に創設された[1]、国際的な自然保護団体である。 国家、政府機関、NGOなどを会員とする。本部はスイスのグランにある。

略称 IUCN, UICN
設立 1948年10月5日
種類 国際非政府組織, 学術出版社
目的 自然及び自然資源の保全に関わる国家、政府機関、国内及び国際的非政府機関等の協力促進
概要 略称, 設立 ...
国際自然保護連合
IUCNロゴ
IUCN本部(スイス
略称 IUCN, UICN
設立 1948年10月5日
種類 国際非政府組織, 学術出版社
目的 自然及び自然資源の保全に関わる国家、政府機関、国内及び国際的非政府機関等の協力促進
本部 グラン
事務総長 ブルーノ・オベールドイツ語版
ウェブサイト https://iucn.org
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国家政府機関、非政府組織(NGO)などを会員とし、170か国以上の約1,400団体が加盟する世界最大の自然保護ネットワークである。[2] 絶滅危惧種の保全状況を評価する「IUCNレッドリスト(絶滅危惧種レッドリスト)」の作成元として広く知られており、ワシントン条約ラムサール条約世界遺産条約生物多様性条約などの主要な国際環境条約の形成にも中心的な役割を果たしてきた。[3]

日本1978年環境庁が日本の政府機関として初めて加盟、1995年に国家会員として加盟した。また、日本国内の18団体(NGOなど)が加盟している。 国内では、加盟団体間の連絡協議を目的として1980年に設立された国際自然保護連合日本委員会(IUCN-J)が活動している。[4]

国連総会オブザーバー資格を取得している[5]大正大学内に「IUCN日本リエゾンオフィス」が設けられている。ラムサール条約の事務局になっている[6]自然遺産候補を専門機関として調査している[7]

概要

IUCNは、自然保護の分野において政府とNGOが共通のビジョンのもとに結集し、国際協力を促進して保全に役立つ科学的知見と手段を提供することを目的として設立された。そのミッションは「世界中の社会が自然の完全性と多様性を保全し、あらゆる天然資源の利用が公平かつ生態学的に持続可能であるよう、影響を与え、奨励し、支援すること」とされている。[8]

IUCNは国連機関ではないが、国連総会において「自然関係」で唯一の常設オブザーバー資格を有し、国際環境条約の実施において高い影響力を持つ。国連機関と同様の政府間国際機関(IGO)として生物多様性条約にも参加している。[9]

過去数十年にわたり、IUCNは保全生態学の枠を超えて、持続可能な開発に関連する課題もその活動に取り込んでいる。政府や企業などのステークホルダーの行動に影響を与えることを目指し、情報・助言の提供やパートナーシップの構築を通じて活動している。[10]

設立の背景と沿革

設立前史

ヨーロッパにおいて工業化が進んだ18〜19世紀には、環境汚染がすでに問題視されていた。第一次世界大戦を経た20世紀初頭には、植民地における生態系保全の必要性が認識され始め、先進国を中心に国際的な自然保護の必要性への機運が高まっていった。[11]

第二次世界大戦後にはUNESCO(国連教育科学文化機関)やFAO(国連食糧農業機関)といった国連専門機関が次々と設立されたが、自然保護を専門に担う国際機関は国連内に設置されなかった。この状況への危機感が高まるなか、IUCNはユネスコの後押しのもと、民間団体や政府関係者、有識者、研究者が集まり設立されるに至った。[12]

設立と名称変遷

1948年10月5日、フランスのフォンテーヌブローにて、18の政府と114のNGO・国際機関をメンバーとして「自然保護国際同盟」(International Union for the Protection of Nature、IUPN)の名称で設立された[13]。 1956年には、人間の利用対象である「天然資源」という概念を名称に加えた現在の名称(IUCN)に変更された。1961年には本部がスイスのモルジュに移転し、その後1989年にグランの独立した建物へ移転して現在に至る[14]

1980年には、国連環境計画(UNEP)の委託により、世界自然基金(WWF)などの協力を得て「世界自然保護戦略」(World Conservation Strategy: Living Resource Conservation for Sustainable Development)を策定した。これは「持続可能な開発」の概念を最初に国際文書として打ち出した先駆的な文書とされており、後の「ブルントラント報告書(1987年)」に大きな影響を与えた[15]

1990年から2008年の間には一時「世界自然保護連合」(World Conservation Union)という通称が使われたが、その後、現在の「国際自然保護連合」(IUCN)の名称に戻された[16]

組織運営と活動資金

会員

IUCNの会員は、国家(国家会員)、政府機関(政府機関会員)、NGO(非政府組織会員)などにより構成される。170か国以上の約1,400団体が加盟しており、約16,000人の科学者・専門家がボランティアとして各委員会の活動に参加している。事務局職員は50か国以上で900人超を数える。[17]

委員会

IUCNは6つの専門委員会を有し、それぞれがボランティアの専門家ネットワークとして機能している。[18]

種の保存委員会(SSC:Species Survival Commission)
世界中の160以上の専門家グループから9,000人超のボランティア専門家で構成される科学的ネットワーク。
種の絶滅リスクを評価し、IUCNレッドリストの作成を主導する。
世界保護地域委員会(WCPA:World Commission on Protected Areas)
140か国以上にわたる3,200人超の委員が参加し、陸域・海域にわたる保護地域ネットワークの確立と効果的な管理を推進する。
教育コミュニケーション委員会(CEC:Commission on Education and Communication)
保全コミュニティにおけるコミュニケーション、学習、知識管理を通じて、持続可能な解決策の共創を推進する。
環境・経済・社会政策委員会(CEESP:Commission on Environmental, Economic and Social Policy)
自然資源および生物多様性の保全に影響する環境・経済・社会・文化的要因に関する専門知識と政策助言を提供する。
世界環境法委員会(WCEL:World Commission on Environmental Law)
900人超の環境法専門家から構成され、新たな法的概念や手段の開発、および環境法を活用する社会の能力構築を推進する。
生態系管理委員会(CEM:Commission on Ecosystem Management)
生態系管理に関する知識とガイダンスを提供し、生物多様性の保全と持続可能な利用を支援する。

事務局

事務局はスイスのグランにある本部を中心に、世界50か国以上に地域・国別事務所が設置されている。事務局長(Director General)を筆頭に分権的な構造を持つ。2026年現在の事務局長はグレーテル・アギラル(Grethel Aguilar)、会長はラザン・アル・ムバラク(Razan Al Mubarak)が務める。[19]

組織運営

最高の意思決定機構は世界自然保護会議と称して会長以下、会員団体の総会を4年に一度開き、次の4年間の事業計画と予算を立てる[20]

主要な統治組織をIUCN評議会と呼び、活動の戦略方向性を与え、方針の課題を協議したり財政と会員増強に関して指針を示す。会長以下、副会長4名(評議員の互選)、監査役、6つの委員会の委員長、8つの法定地域を代表する地域評議員3名ずつに加え、本部を置くスイスから1名が派遣される。

2023年7月時点の会長はラザン・アル・ムバラクアラビア語版[21][22](アラブ首長国連邦の元アブダビ環境庁長官[23])。

事務総長の任命権は評議会にあり、IUCNの管理と事務局運営全般を委嘱する。設立以来、歴代の事務総長を一覧にする[24]

歴代のIUCN会長

さらに見る 任期, 国籍 ...
任期国籍氏名出典
1948–1954 スイスの旗 スイス Charles Jean Bernard [24]
1954–1958 フランスの旗 フランス ロジェ・エイム [24]
1958–1963 スイスの旗 スイス ジャン・ジョルジュ・ベーアドイツ語版 [24]
1963–1966 フランスの旗 フランス François Bourlière [24]
1966–1972 アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国 ハロルド・ジェファーソン・クーリジ・ジュニア英語版 [24]
1972–1978 オランダの旗 オランダ Donald Johan Kuenen [24]
1978–1984 エジプトの旗 エジプト ムハンマド・アブデル・ファト・アル・カーサスアラビア語版 [24]
1984–1990 インドの旗 インド モンコンブ・スワミナサン [24]
1990–1994 ガイアナの旗 ガイアナ シュリダス・ランファル英語版 [24]
1994–1996 アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国 Jay D. Hair [24]
1996–2004 エクアドルの旗 エクアドル ヨランダ・カカバドススペイン語版 [24]
2004–2008 南アフリカ共和国の旗 南アフリカ共和国 モハメド・ヴァリ・ムーサ英語版 [24]
2008–2012 インドの旗 インド アショーク・コシュラー
2012–2021 中華人民共和国の旗 中国 章新勝中国語版
2021–現職 アラブ首長国連邦の旗 アラブ首長国連邦 ラザン・アル・ムバラクアラビア語版 [21]
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主な活動と成果

IUCNレッドリスト

IUCNレッドリスト(The IUCN Red List of Threatened Species)は、世界の生物多様性の健全性を示す最も重要な指標の一つであり、種の保全状況を体系的に評価するリストである。1964年に最初のリストが公表され、1966年には種ごとの関連情報をまとめたレッド・データ・ブックが刊行された。1994年には定量的基準を伴う評価制度が採択され、2001年に改訂された現行版(カテゴリーと基準バージョン3.1)が使用されている。[25]

種は以下の9カテゴリーに分類される。[26]

  • 絶滅(EX:Extinct)
  • 野生絶滅(EW:Extinct in the Wild)
  • 深刻な危機(CR:Critically Endangered)
  • 危機(EN:Endangered)
  • 危急(VU:Vulnerable)
  • 準絶滅危惧(NT:Near Threatened)
  • 低懸念(LC:Least Concern)
  • 情報不足(DD:Data Deficient)
  • 未評価(NE:Not Evaluated)

2025年10月にアラブ首長国連邦・アブダビで開催されたIUCN世界自然保護会議の際に更新版(IUCNレッドリスト2025-2)が発表され、評価種総計172,620種のうち48,646種が絶滅危惧種という結果となった。[27]

IUCNによる自然保護地域カテゴリー

国際自然保護連合は、世界各国の政府・法人・個人が保護している地域に対して、以下のようなカテゴリー化を行っている。これらのカテゴリーは、保護された自然区域の管理の度合いを示すものである。自然保護地域を国立公園と国立公園以外に分類すると、世界の152の国で国立公園以外の自然保護地域を指定し、その総数は7994件であった(1997年時点[28])。

厳正保護地域(Ia)
特出したもしくは代表的な生態系や、地理的なもしくは生理学的な特徴あるいは種を有し、原則として科学的研究あるいは環境観察のために開かれている土地あるいは海域。
原生自然地域(Ib)
手つかずもしくはそれに近い状態で保たれていて、その自然の性格と作用を保ち、恒久的あるいは重要な棲息を持たず、その自然状態を保つために保護され運営されている広大な土地あるいは海域。
国立公園(II)
以下を意図した土地あるいは海域の自然地域。
  1. 現在のそして未来の世代のために一つあるいはそれ以上の生態系の完全環境を保護すること
  2. 私的利用もしくは地域の保護目的に反する土地所有を排除すること
  3. 精神的な、学術的な、教育的な、レクリエーション的なそして訪問などの機会ための土台が提供されていて、それが環境的にそして文化的に矛盾していないこと。
天然記念物(III)
その独自の希少性、代表的なもしくは美的な特性、もしくは文化的重要性によって、一つあるいはそれ以上の特出したもしくは独特の価値を持つ、明確な自然のもしくは自然文化の特徴を含む地域。
種と生息地管理地域(IV)
生息動物の保持を確認するためあるいは特定の種の要求を満たすため、運営目的のために精力的な介在に属する土地もしくは海域。
景観保護地域(V)
人間と自然の何代にもわたる交流が、重要で美的な、環境的な、文化的な価値を伴いそして多くは高度に生物学的な多様性を伴った、他では見られないような特徴を持った地域を作り出した海岸や海域を伴った土地。この伝統的交流の完全保護がかかる地域の保護、維持、発展に非常に重要であること。
資源保護地域(VI)
自然生産の持続的流れとコミュニティーの要求を満たすをことを同時に提供している一方で、長期の保護を確保し、生物学的多様性を維持することで運営している、主に手つかずの自然形態を含む地域。

この類型区分に従うと、カテゴリーIV「種と生息地管理地域」は1997年に3764ヵ所で全体の47%を占めた[28]

以上のようなカテゴリー区分は日本においても行われている。ユネスコ世界遺産に登録された白神山地[29][30][31]は、「(Ib)原生自然地域」として分類されている。

国際環境条約への貢献

IUCNは複数の重要な国際環境条約の成立において中心的な役割を担ってきた。[32]

  • ラムサール条約(1971年):水鳥の生息地として国際的に重要な湿地の保全に関する条約。IUCNが形成に大きな役割を果たし、発効後はその事務局をIUCN事務局内に設置している。
  • 世界遺産条約(1972年):自然遺産の候補はIUCNが現地調査を担当する公式諮問機関として機能している。
  • ワシントン条約(CITES、1973年):絶滅のおそれのある野生動植物の国際取引を規制する条約。アメリカ合衆国連邦政府とIUCNが中心となって作成された。
  • 生物多様性条約(1992年):IUCNは国連機関と同様のIGOとして参加している。

国際環境条約への貢献

IUCNは複数の重要な国際環境条約の成立において中心的な役割を担ってきた。[33]

  • ラムサール条約(1971年):水鳥の生息地として国際的に重要な湿地の保全に関する条約。IUCNが形成に大きな役割を果たし、発効後はその事務局をIUCN事務局内に設置している。
  • 世界遺産条約(1972年):自然遺産の候補はIUCNが現地調査を担当する公式諮問機関として機能している。
  • ワシントン条約(CITES、1973年):絶滅のおそれのある野生動植物の国際取引を規制する条約。アメリカ合衆国連邦政府とIUCNが中心となって作成された。
  • 生物多様性条約(1992年):IUCNは国連機関と同様のIGOとして参加している。

影響・評価

IUCNは設立以来、「持続可能な開発」の概念を1980年の「世界自然保護戦略」を通じて国際社会に初めて提示するなど、自然保護の思想的・政策的枠組みに多大な貢献をしてきた。同概念はその後、1987年のブルントラント報告書『我ら共有の未来』(Our Common Future)に引き継がれ、現代の持続可能な開発目標(SDGs)へと発展する基盤となった。[34]

また、IUCNの設立はWWF(世界自然基金)の創設(1961年)にも関与しており、世界自然保護監視センター(UNEP-WCMC)の設立にも貢献した。[35]

参考文献

主な執筆者名順。本文の典拠の詳細。

和文
  • 世界の国立公園と自然保護地域の指定状況に関する研究」『千葉大学園芸学部学術報告』第51号、1997年3月、87–101頁。
  • 青森県史編さん自然部会 編「コラム 世界遣産とIUCN」『青森県史』 自然編 生物、青森県、2003年、729頁。全国書誌番号:20405757
  • 吉岡斉 編『「新通史」日本の科学技術 : 世紀転換期の社会史 : 1995年~2011年』 別巻、原書房、2012年。全国書誌番号:22072241
英文

脚注

関連項目

外部リンク

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