インスティテューショナル・クリティーク

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アートにおけるインスティテューショナル・クリティーク(Institutional Critique;制度批判)とは、1960年代後半から1970年代にかけて展開された芸術実践の一潮流であり、美術館やギャラリーなどの制度的枠組みそのものを芸術の対象として批判的に検討するものである。

この概念は、美術史家のベンジャミンH. D. ブクローが、コンセプチュアル・アートを「a self-reflexive practice」および「critique of institutions」と位置づけた議論の中で理論的に整理された。制度批判は、近代美術が前提としてきた審美的自律性や展示空間の中立性を問い直す実践として理解される。

代表的な作家には、マイケル・アッシャーダニエル・ビュランハンス・ハーケ らが挙げられる。他にも、マルセル・ブロータスアンドレア・フレイザー、ジョン・ナイト、エイドリアン・パイパー、フレッド・ウィルソンといったアーティストや、アレクサンダー・アルベロ、ベンジャミン・ブクロー、Birgit Pelzer、Anne Rorimerの批評と関連が深い。[1] [2]

原点

制度批判は、1960年代後半のミニマリズムおよびコンセプチュアル・アートの展開の中から生じた。ミニマリズムは作品と展示空間、観者の身体的関係を強調し、美術館空間の条件そのものを問題化した。一方、コンセプチュアル・アートは、作品の物質的形態よりも言語や制度的枠組みに関心を向け、美術の定義や制度の機能を批判的に検討した。ブクローはこの動向を「aesthetic of administration」(管理の美学)から「critique of institutions」(制度批判)への転換として整理している。

制度批判の実践は、マイケル・アッシャーダニエル・ビュランハンス・ハーケらによって展開され、展示空間や美術館制度の構造を可視化する試みとして発展した。

ポスト構造主義や批判理論は、これらの実践を理論的に支える思想的背景として後に参照されるようになった。

世代区分と展開

第一世代

インスティテューショナル・クリティックの第一世代は、1960年代後半から1970年代にかけて展開した実践を指す。これらの作家は、美術館やギャラリーといった展示空間、コレクション制度、スポンサーシップ、資本構造など、美術制度そのものの構造を可視化することを目的とした。

代表的な作家には、Daniel Buren(ダニエル・ビュラン)、Hans Haacke(ハンス・ハーケ)、Michael Asher(マイケル・アッシャー)、Marcel Broodthaers(マルセル・ブロータス)、Robert Smithson(ロバート・スミッソン)、Dan Graham(ダン・グラハム)、Adrian Piper(エイドリアン・パイパー)、Mierle Laderman Ukeles(ミアリー・ラダーマン・ウケルズ)などが含まれる。

彼らは、美術作品を制度の内部に配置しつつ、その制度的条件(展示形式、所有構造、経済的基盤など)を暴露する戦略を採った。この段階では批評性はしばしば対立的であり、制度を外部から告発する姿勢が強調された。

第二世代

1980年代後半から1990年代にかけて、制度批判はより自己反省的かつ複雑な形態へと移行する。この第二世代では、制度の「外部」を想定すること自体が批判の対象となり、芸術家自身も制度の内部に位置づけられていることが明示的に扱われるようになった。

この世代の代表的な作家として、Andrea Fraser(アンドレア・フレイザー)、Louise Lawler(ルイーズ・ローラー)、Fred Wilson(フレッド・ウィルソン)、Renée Green(ルネ・グリーン)、Group Material(グループ・マテリアル)などが挙げられる。

特にフレイザーは、制度批判が制度の外部からの攻撃ではなく、制度の内部における実践であることを理論化し、「私たちこそが制度である」と論じた。この段階では、告発よりもむしろ制度との共犯関係の分析が中心となる。

ポスト制度批判的展開

1990年代以降、制度批判はより関係性や状況生成を重視する実践へと展開した。この動向は批評家のNicolas Bourriaud(ニコラ・ブリオー)によって「関係性の美学」として理論化され、Rirkrit Tiravanija(リクリット・ティーラワニット)、Liam Gillick(リアム・ギリック)、Pierre Huyghe(ピエール・ユイグ)、Dominique Gonzalez-Foerster(ドミニク・ゴンザレス=フォルステル)らの実践がその代表例とされた。

これらの作家は、美術館やギャラリーを対立的に暴露するのではなく、社会的相互作用や一時的な共同体の生成を通じて制度を内側から変容させることを試みた。第一世代の対抗的戦略とは異なり、より開かれた形式を採用する点が特徴とされる。

近年では、Tino Sehgal(ティノ・セーガル)やMaurizio Cattelan(マウリツィオ・カテラン)など、美術館の制度的枠組みや展示経済を主題化する実践が継続している。

批評と論争

参照

参考文献

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