ウィランドラ湖群地域

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英名 Willandra Lakes Region
仏名 Région des lacs Willandra
面積 240,000ha
登録区分 複合遺産
世界遺産 ウィランドラ湖群地域
オーストラリア
ウィランドラ湖群地域
ウィランドラ湖群地域
英名 Willandra Lakes Region
仏名 Région des lacs Willandra
面積 240,000ha
登録区分 複合遺産
登録基準 (3) (8)
登録年 1981年
公式サイト 世界遺産センター(英語)
地図
ウィランドラ湖群地域の位置
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ウィランドラ湖群地域(ウィランドラこぐんちいき、英語: Willandra Lakes Region)は、オーストラリアニューサウスウェールズ州南西部の半乾燥地帯に分布する、更新世の古湖群と周辺景観からなる世界遺産複合遺産)である。堆積物・地形・土壌が、更新世後期の気候変動や環境史を示す記録を保存するとともに、少なくとも約5万年前以降の人類活動を示す考古遺跡群(炉址、石器貝塚埋葬など)を含むとされる。[1][2]

ウィランドラ湖群地域は、南西ニューサウスウェールズ州の半乾燥域に位置し、かつて連結した湖沼系を形成していた複数の湖盆と、その周縁に発達する砂丘などの地形要素から構成される。湖沼生態系としては約1万8500年前ごろに機能を停止したとされ、乾燥化以降も大規模な改変を受けにくかったことが、地形・堆積層序および考古学的層序の保存に寄与したと説明されている。[1]

地理

ウィランドラ湖群地域は、ニューサウスウェールズ州南西部の半乾燥域に位置し、面積は約2,400km2(=約240,000ha)とされる。[2][3]

連結した乾燥湖盆は「大きな湖盆が5つ、より小規模な湖盆が14」と説明され、代表的な湖としてムンゴ湖英語: Lake Mungo)などが挙げられる。[2] 世界遺産区域の土地利用は、州立の保護地域(ムンゴ国立公園)と牧畜用リース地(牧場)を含む複合的な構成で、州当局の説明では国立公園が約30%、牧畜リースが約70%とされる。[3]

湖群の配置(1: Lake Mulurulu、2: Willandra Creek、3: Garnpung Lake、4: Lake Leaghur、5: Lake Mungo、6: Lake Arumpo、7: Chibnalwood Lakes)

地質・地形と形成史

本地域には、低起伏の内陸盆地における更新世の湖成堆積物、湖岸段丘、砂丘などが発達し、特に過去約10万年間の氷期間氷期サイクルに対応した環境変動を読み解く「例外的な窓」として価値付けられている。[1] UNESCO世界遺産センターは、湖群が約1万8500年前ごろに湖沼としての機能を停止したこと、ならびに乾燥後の地形・堆積記録が大きく改変されずに残存していることを、自然遺産(登録基準(viii))の論拠として説明している。[1]

水文・気候

本地域は半乾燥気候帯に位置し、湖沼系はかつて東方高地からマレー川へ向かう水系に関連するクリークから供給を受けていたと説明される。水の供給が途絶えると、湖盆は南から北へと段階的に乾燥し、塩性化が進んだとされる。[2] 州当局も、かつて淡水をたたえていた湖が約1万9000年前ごろから乾燥し始めたとしている。[3]

生態系

DCCEEWは、湖床の塩性平原に塩生低木(英語: saltbush)群落が成立し、砂丘・砂原には乾燥地植生が分布すると説明している。また植生は地表の安定化を通じて堆積層の保全に関与しうるとされる。[2] 動物相については、遺骸・化石として多数の種が報告され、現生分布から消失した種や絶滅種が含まれる旨がまとめられている。[2]

考古学・人類史

UNESCO世界遺産センターは、本地域の攪乱の少ない層序が、更新世における人類の生活(炉址、石器、貝塚など)と環境変動の関係を復元する上で重要であると説明し、アフリカ域外における初期の現生人類の痕跡を含むと述べている。[1] また、同センターは「約4万年前の火葬(儀礼的火葬)」「約1万9000~2万3000年前の人類足跡(化石化したトラックウェイ)」などを、登録後に加わった重要な発見として挙げている。[1]

豪州連邦政府(DCCEEW)は、1968年にムンゴ湖の砂丘で火葬痕のある遺骸(通称「Mungo Lady」)が見つかったこと、1974年に近傍で赤色顔料を伴う埋葬(通称「Mungo Man」)が報告されたこと、さらに2003年に多数の化石足跡が見出されたことを紹介している。[2] 州当局も、火葬遺構・埋葬・足跡群が本地域の文化的価値の中核を成す旨をまとめている。[3]

先住民と文化的文脈

ニューサウスウェールズ州当局は、本地域の伝統的所有者(英語: traditional owners)として、Barkandji/Paakantyi、Mutthi Mutthi、Ngiyampaaの3集団を挙げている。[3] また、同当局は、ムンゴ湖周辺で見出された遺骸等が伝統的所有者へ返還されたこと(2017年)に言及している。[3]

保護と管理

世界遺産区域は州立の国立公園と牧畜リース地を含むため、管理は複数主体にまたがる。計画文書(案)では、ムンゴ国立公園が世界遺産区域のおよそ3分の1に重複し、残りが主として牧畜リース地等から構成されるとしている。[4]

連邦政府(DCCEEW)は、政策調整・資金面で州と連邦が責任を分担し、コミュニティ・マネジメント・カウンシル、技術・科学諮問委員会、エルダーズ・カウンシル等の助言体制のもと、日常管理はNSW州側機関が担うと説明している。[2] 計画文書(案)でも、関係者(伝統的所有者、助言組織、管理機関など)の参画を前提とした枠組みが述べられている。[4]

世界遺産

ウィランドラ湖群地域は1981年に世界遺産一覧表へ記載された。登録基準は文化遺産(iii)および自然遺産(viii)である。[1] 連邦政府は、世界遺産区域の境界が1995年に見直され、価値の所在をより適切に示すために修正されたとしている。[2] また、本地域は2007年にオーストラリア国民遺産英語: National Heritage List)にも含まれたとされる。[2]

登録基準

この世界遺産は世界遺産登録基準のうち、以下の条件を満たし、登録された(以下の基準は世界遺産センター公表の登録基準からの翻訳、引用である)。

  • (3) 現存するまたは消滅した文化的伝統または文明の、唯一のまたは少なくとも稀な証拠。
  • (8) 地球の歴史上の主要な段階を示す顕著な見本であるもの。これには生物の記録、地形の発達における重要な地学的進行過程、重要な地形的特性、自然地理的特性などが含まれる。

研究史

UNESCOは、本地域が地形発達・土壌生成、古環境、年代測定、考古学など多分野を横断する更新世研究の「古典的な到達点(landmark)」として位置付けられてきたと述べている。[1] また、NSW州立の国立公園・野生生物局(NPWS)が研究成果の整理を目的として研究データベース構築に関与したことが、研究サマリー報告で説明されている。[5]

観光・利用

訪問者の主要な導線はムンゴ国立公園側に集中し、計画文書(案)はムンゴ湖とその東縁のルネット地形「Walls of China」が主要な観光資源となっていると述べている。[4] 一方で世界遺産区域の大部分は牧畜リース地を含むため、利用・立ち入りの考え方は土地の区分や管理方針に依存する。[4]

ムンゴ国立公園内に見られるルネット地形(Walls of China)

脚注

参考文献

外部リンク

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