ここでは力学における相空間を想定し、領域をn次元ユークリッド空間Rnにおける有界領域Ωとする。実際の物理系でも空間的制約や第一積分などの束縛条件により、相空間上の代表点の運動は有界領域に限られることが多い。同じ力学系で記述される相空間内の代表点の時間発展は位相流体として非圧縮性な定常流を成している。出点x =x0 ∈ Ωを選ぶと流れに沿ってi 単位時間ごと(i =0,± 1,± 2,…)の位置

が定まる。また定常という言葉は、時間の取り方に点の移動が不変すなわち
なる点において

が成り立つ、つまり群の性質を有する。非圧縮性は位相体積不変を表すリウヴィルの定理を意味する。リウヴィルの定理は数学的には保測変換として記述される。すなわち可測集合A ⊂ Ωに対して、A内の点x がi 時間後に成す集合Ai={xi | x ∈ A }は可測であり,Rnのルベーグ測度μに対し

が成り立つと表現される。
エルゴード理論ではΩ内の点列{xn}のn → ∞での振る舞いを調べることになる。例えば
Ω内の可測関数Aの定義関数

を使って

を考えると、これは単位時間ごとに観測して何回A を訪れたかという平均回数になり、n → ∞としたときの
平均訪問回数 χ*(x)がどんなときに存在するかというは一つの問題となる。
ジョージ・バーコフは個々のx ∈ Ωについて時間平均の存在を示した
個別エルゴード定理(individual ergodic theorem)を証明した。
Ωにおいて可積分な複素数値関数ρ (x ) ∈ L1(Ω)において、ほとんどすべての出発点a.e. x =x0 ∈ Ωに対して、有限値の時間平均

が存在し、この時間平均と空間平均が次の形で一致する;

またρ* (x )は初期値x のとり方に関して不変、すなわちa.e. x ∈ Ωに対して

が成り立つ。
フォン・ノイマンはL2(Ω)ノルムの意味で収束、すなわち二乗平均収束(mean converge)で時間平均が存在するという平均エルゴード定理(mean ergodic theorem)を示した。
Ωにおいて2乗可積分な複素数値関数ρ(x) ∈ L2(Ω)に対し

すなわち

を満たすρ*(x) ∈ L2(Ω)が存在する。
このとき、時間平均と空間平均が次の形で一致する;

またρ*(x)は初期値x のとり方に関して不変、すなわちa.e. x ∈ Ωに対して

が成り立つ。