カルボラン酸は単独分子としては最も強い酸である[3]。単独でない酸 (複数の分子が相互作用) ではマジック酸など、さらに強い酸が存在するためである。カルボラン酸のpKaは硫酸に比べて6以上小さく、フルオロスルホン酸 (カルボラン酸の発見前の最強の酸でありpKa = −16) よりも2以上小さい[3][4]。これは塩素の電子求引性によりH+が脱離しやすく、また脱離で生じるアニオン (CHB11Cl11−) は負電荷の非局在化により安定化されるためである[4]。
酸性度の高い化合物は一般に腐食性が大きい。たとえばマジック酸では反応によってフッ化物イオン (F−) が生じ、これによりさまざまな副反応が起きる。たとえばF−はフラーレンを分解し、ガラスとさえ反応する。一方、カルボラン酸のイオンでは分子全体を塩素が覆っているため、ほかの物質と反応しにくく化学的に安定である[4]。よってカルボラン酸はフラーレンを壊すことなくH+を与え、フラーレンと1対1の塩をつくる[4]。またガラスを腐食することもない[4]。すなわち、カルボラン酸は強力な酸にもかかわらず腐食性や酸化力が小さい[3][5]。
アレーンおよびアルケンなどをカルボラン酸によってプロトン化することで、アレニウムイオンおよびカルボカチオンなどの不安定な化学種がカルボラン酸の塩として単離できる[5]。これらは寿命の短い反応中間体でありガソリンの接触改質、医薬品の合成、高分子合成、生体内での消化など、さまざまな化学反応に現れる[5]。反応中間体を単離することはこれらの反応の研究に大いに役立つ。
2013年、リードらはカルボラン酸の塩素をフッ素に置換して単離することに成功した[6]。このフッ素置換カルボラン酸はこれまでのカルボラン酸よりも強力であるものの、微量の水分と反応して分解し、微量の有機物とも反応するという[7]。