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カルメン

1845年のプロスペル・メリメの小説 From Wikipedia, the free encyclopedia

カルメン』(Carmen)は、19世紀フランスの作家プロスペル・メリメが、1845年に「両世界評論」で発表した、全4章の中編小説、またヒロインの名前でもある。単行本は1847年刊、他に短編「アルセーヌ・ギヨ」、「オーバン神父」を収録。『両世界評論』誌で発表された際、ボヘミア人について記述した第4章はなかったが、単行本では追加されている。

作者メリメによる水彩画

概要

メリメは執筆前に二度スペイン旅行を行い、その1回目の旅行(1830年)の際に「カルメン」の題材を思いついた。メリメがスペイン旅行をした当時、スペインに実在した脱走兵の盗賊、ドン・ホセ・マリア・ゼンプラニートとその恋人の顛末を素材に、グラナダの名家モンティホ伯爵に関わるスキャンダルを織り交ぜて作成されている。メリメはモンティホ伯爵とその妻マリア・マヌエラ・キルクパトリックとはフランスで親交があり、スペイン旅行のさい伯爵家に客として滞在し、そのさいドン・ホセの話を聞かされており、また夫人の義理の弟がグラナダのタバコ工場で働いていたカルメンシータなる女性と恋に落ち、家族の反対を押し切って結婚したというスキャンダルの話しも聞かされている[1]。初版はフランス語、邦訳は大正3(1914年、生田長江)を初めとして多くの作家により試みられている。

内容

作品は冒頭にエジプトのアレクサンドリアに住んでいたギリシャの詩人パラダスの警句から始まる(この箇所、翻訳されないものあり)「女は皆死体、彼女には2時間しか残されない。1時間は産室、1時間は死後」[2]

本編では作者に仮託される考古学者がスペインで出会ったある山賊の身の上話を紹介するという体裁でカルメンの物語が描かれる。その山賊はカルメンという、嘘つきで手癖が悪く、しかし蠱惑的で情熱的なジプシー女に振り回されたあげく、悪事に身を染めてお尋ね者となり、ついには死刑となる。

原作ではスペインの民族構成の複雑さ、教育や地位はむろん落ち着くべき故郷も持たず、あるいは失い、片や非キリスト教世界に生き、片や信仰的に堕落してしまった下層民が抱える困難、荒涼とした風土などを背景に、ある孤独で勤実なバスク人の男が情欲のため犯罪に加担し、やがて破滅するというストーリーであり、基調としてはけっして華やかな物語ではない。

一方でこの原作をモチーフとした派生作品では恋愛と嫉妬を中心にすえ、また闘牛士やフラメンコなどスペインを代表する「明るさ」を前面に出すことで物語の印象を一新している。

心に影をもち、激しく恋に燃えるが心変わりしやすく、男にとっては危険な女というカルメンのイメージは、ジョルジュ・ビゼーのオペラ『カルメン』(1874年初演)でさらに強調して描かれることになる。竜騎兵のドン・ホセ伍長はカルメンに誘惑され、婚約者を捨てて軍隊を脱走する。しかしカルメンは闘牛士に心を移し、嫉妬に狂ったドン・ホセは匕首を持って追いかけ、カルメンを刺し殺すのである。

派手やかなオペラは大衆受けし、オペラのストーリーをもとに映画も数多く作られた。現在一般にカルメンのイメージとして浸透しているのは、こうしたカルメン像であろう。カルメンという名はスペインではごくありふれた女性名であるが、こうして世界中に知られるようになったことにより、「カルメン」的性格がスペイン女性の特徴のように言われたりもする。もっとも設定のようにカルメンはロマの女(ボヘミアン)でありスペインにとっては異邦人であり、ドン・ホセがスペインの「内なる外」バスク少数民族であり、また語り手である「私」もまたフランス人であることなど、この物語の背景にある複雑な「内と外」の問題はそのままヨーロッパ社会のはらむ文化の「内と外」の緊張感を構成しておりこの小説の重要なプロットとなっている。

文献情報

日本語訳
  • プロスペル・メリメ 著、杉捷夫 訳『カルメン』(改版)岩波書店〈岩波文庫〉、1960年12月、1-108頁。ISBN 978-4003253434
  • プロスペル・メリメ 著、堀口大學 訳『カルメン』(改版)新潮社〈新潮文庫〉、1972年5月、1-379頁。ISBN 978-4102043011
  • プロスペール・メリメ『カルメン』工藤庸子 訳・解説、新書館、1997年
関連文献

脚注

関連項目

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