ガイコツパンダホヤ

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ガイコツパンダホヤ
分類
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 尾索動物亜門 Tunicata
: ホヤ綱 Ascidiacea
: マメボヤ目 Enterogona
亜目 : マンジュウボヤ亜目 Aplousobranchia
: ツツボヤ科 Clavelinidae
: ツツボヤ属 Clavelina
: ガイコツパンダホヤ C. ossipandae
学名
Clavelina ossipandae
Hasegawa & Kajihara, 2024
英名
Skeleton panda sea squirt
Skeleton panda ascidian

ガイコツパンダホヤ学名Clavelina ossipandae)は、ホヤ綱に属する群体性濾過摂食性の海産無脊椎動物である。日本の久米島周辺で地元のダイバーによって発見され、特徴的な外見から2024年に記載される前からSNSやテレビなどのメディアで注目を集めた。

本種は、白く横に走る血管が「骨」のように見えること、前面にパンダの目や鼻に似た機能未知の黒色斑点がみられることから他のホヤ類と識別できる。テレビ番組やソーシャルメディアで取り上げられたのち、クラウドファンディングに支援された調査で本種の標本が2021年に採集され、その3年後に正式に新種として記載された。

ガイコツパンダホヤは水深約 20 mメートル付近の強い潮流のあるサンゴ礁に固着して生育する。2 cm 程度の透明な個虫が1から4個体集まって群体を形成する。個体同士はストロンと呼ばれる組織でつながっており、無性生殖で増殖するが、有性生殖も可能である。

本種の存在は、正式記載以前の2017年ごろに沖縄県琉球諸島に属する久米島で地元のダイバーにより撮影された写真によって広く知られるようになった。特にダイビングショップを営んでいた寺井俊二による写真がTwitterなどのSNSで拡散され、NHKや民放各局でも取り上げられた[1][2]

当時北海道大学大学院理学院に所属していた尾索動物研究者の長谷川尚弘は、2018年にTwitter上でこの画像に接し、既知のホヤとは異なると判断した。クラウドファンディングの支援を受けて2021年に調査を実施し、強い潮流と強風のため冬季にしか接近できない久米島沖のトンバラと呼ばれるダイビングサイトで共同研究者とともに標本の採集を行った。2024年の論文において、本種に学名 Clavelina ossipandae が与えられ、正式に記載された[1][3][4]

調査では、1–4体の個体からなる4つの群体が採集され、標本は北海道大学総合博物館の無脊椎動物コレクションに収蔵された[5]

名称

本種の和名「ガイコツパンダホヤ」は、本種の写真がインターネット上で初めて共有された際、日本のネットユーザーによって考案されたものである[1][6]。これは、エラの横に走る血管(骸骨)のように見え、体前方の白い部分にある黒い斑点がジャイアントパンダを連想させることに因んだものである[1]

学名のうち、名の Clavelinaラテン語で「小瓶」を指す言葉で、本属のホヤの個虫(群体を構成する一個一個の個体)の形態をたとえたものである[1]種小名ossipandae は、ラテン語で「骨」を意味する os と、panda(パンダ)を組み合わせたものである[7]

特徴

ガイコツパンダホヤの個虫(C: 右側, D: 左側)

ガイコツパンダホヤは小型の群体性ホヤであり、1から4個の個虫からなる群体を形成する。近縁の Euclavella 属や Nephtheis 属と異なり、各個虫は被嚢を共有しておらず、基底部で血管の癒合したストロンと呼ばれる構造で繋がっている。個虫は最大で長さ 2 cm に達し、採集された標本では長さ 7 mm から 14 mm の範囲であった[8]

解剖学的特徴

それぞれの個虫は透明な被嚢で覆われ、他の多くのホヤと同様2つの開口部、すなわち入水孔と出水孔がある。入水孔を通して食物粒子が10の触手に囲まれた咽頭へと運ばれる。咽頭(鰓嚢)では摂取した食物が濾過され、漏斗状に繊毛の生えた裂け目状の開口をもつ背側結節 (dorsal tubercle) へと繋がる。咽頭背側には舌状の構造が並び、食物の運搬を助けている。同じく濾過摂食の補助にはたらく食道も入水孔の下部前方側に存在する[9][10]。食道は咽頭と、腹部中央に存在するとをつなぎ、その先には管状の腸環 (intestinal loop) が存在する。腸環は肛門へと繋がり、出水孔を通して消化されなかった食物が排泄される[9]

被嚢は長さのほぼ等しい胸部被嚢と腹部被嚢に分けられ、胸部被嚢の方が薄くて柔らかい。胸郭には10–11対の縦走筋帯が存在し、2本は腹部から内柱へ、5–6本は入水孔へ、そして2–4本は背側へと走行している[11]

外見

本種の個体には全長にわたり横断する数本の白い血管が存在し、それが肋骨に似た外観を呈している[5]。黒い内柱が入水孔の下部に見えるほか、出水孔の下部の背部中じくには黒線が存在する[11]

本種は体前方の白い部分にある黒色斑点(入水孔と出水孔との間にある1つの斑点と、それを囲む2つの黒帯)により同属他種と識別できる。同属の他の2種で似たような斑点を生じることが知られるが、その色彩は異なる。C. moluccensis では淡青色の地に濃青色の斑点があり、パンダツツボヤ[12] C. viola では黄色地に青色の斑点がみられる[13]

生活環

雌雄同体であり、卵巣精巣の両方が精巣胃の後方の腸管左側に付着して存在している。育嚢が胸部背側に存在し、その中で卵および幼生が発生する。全てのホヤ類と同様、幼生は自由生活性でオタマジャクシ型をしている。幼生は長さおよそ 1.25 mm で、そのうち尾部が 0.75 mm である。幼生の体は、3 個の付着突起を備えた前方部と、眼および平衡石をもつ胴部に分かれている[5]。また、本属の他の群体性ホヤと同様に出芽による無性生殖も行う[6]

分類

いくつかの形態形質に基づいて本種はツツボヤ属 Clavelina に分類される。すなわち、個虫が被嚢を共有しないこと、幼生が付着突起に管状構造を欠くこと(この構造は近縁の Pycnoclavella 属の特徴である)、 咽頭鰓裂英語版の数が10から14とツツボヤ属に典型的な範囲(8から20)に収まることなどである[13][14]

ホロタイプパラタイプ標本から得られたCOI(シトクロムcオキシダーゼサブユニットI)遺伝子DNA配列を用いた分子系統解析から、本種は C. australis姉妹種の関係にあることがわかった。以下に系統樹を示す[15]

Clavelina 属 + Nephtheis

C. ossipandae ガイコツパンダホヤ

C. australis

C. breve

C. dellavallei

C. moluccensis

C. oblonga

N. fascicularis

C. picta

C. arafurensis

C. gemmae

C. lepadiformis

C. sabbadini

分布と生態

脚注

参考文献

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