ガラス特性の計算
From Wikipedia, the free encyclopedia
ガラス特性の計算(ガラスとくせいのけいさん、ガラスのモデル化)は、関心のもたれるガラスの物性や、特定条件下(たとえば製造工程)でのガラスの挙動を、時間、材料、経済的・環境的資源を節約するため、過去のデータと経験に基づく実験的研究を行うことなく予測するために利用される。19世紀の末にA. Winkelmannとフリードリッヒ・オットー・ショットによって初めて行われた。最適化とシックス・シグマ手法のために、いくつかのガラスモデルとこれらに関係する計算式を組み合わせて使うことができる。統計的分析の形でガラスのモデル化は、新しいデータ、実験手順、測定機関(ガラス研究施設)の評価・認定を支援することができる。
歴史的に、ガラス特性の計算はガラス科学の創始と直接関係している。19世紀の末に、物理学者エルンスト・アッベはドイツのイェーナでカール・ツァイスの光学工場との共同作業に刺激され、最適化された光学顕微鏡の設計計算ができる数式を導いた。アッベ以前、顕微鏡は工芸品であり、組み立ては熟練した職人によっていたので、光学顕微鏡は非常に高価であり、品質にもばらつきがあった。アッベはどのように最高の顕微鏡を組み立てればよいかが分かったが、これに必要な特定の屈折率と分散を持つレンズとプリズムは存在していなかった。アッベはガラス工芸家や技術者からは答えを得ることができなかった。この時代のガラス作りは科学に基づいたものではなかった。[2]
1879年、ガラス技術者オットー・ショットは、特別な光学的性質を期待して自分で作成した特殊な配合のガラス試料(ケイ酸リチウムガラス)をアッベに送った。アッベの測定によると、ショットのガラスは期待した特性ではなかった。にもかかわらず、アッベはこの問題をさらに研究し、すべてのガラス成分を系統的に評価するようにショットを招いた。最終的に、ショットは均質なガラスの試料を作ることに成功し、アッベが望んでいた光学特性を持つホウケイ酸ガラスを発明した。[2]これらの発明が有名なカール・ツァイスとショット社を興す基になった(顕微鏡技術の年表を参照)。系統的なガラス研究がここに始まった。1908年、Eugene Sullivan もアメリカでガラスの研究を開始した(コーニング、ニューヨーク州)。[3]
ガラス研究の初期には、ガラスの組成と特性との関係を知ることが最も重要であった。この目的のため、ショットはいくつかの書物でガラス特性の計算に加法則[訳語疑問点]を導入した。[4][5][6]この原理は、ガラスの組成と特定の物性がすべての成分の濃度と線形であることを暗示しており、下の式で Ci と bi がそれぞれ理想的なガラス成分とそれに対応する係数となる理想混合物を仮定している。加法則は単純化であり、屈折率と粘度のグラフに見られるように、狭い組成範囲でのみ有効である。にもかかわらず、光学ガラス、調理や研究に使われる低熱膨張ガラス(Pylex、Duranなど)、水銀温度計用に凝固点降下の小さいガラスなど、ショット社の発明の多くに加法則が使われている。その後、English[7]と Gehlhoff et al.[8]が同様に加法的なガラスの特性計算モデルを発表した。ショットの加法則は今日でもガラスの研究開発に広く使われている。[9][10]
- 加法則:
グローバルモデル

その後、ショットと多くの科学者・技術者たちは、十分狭い組成範囲について、自分たちの研究所で測定された実験値を加法則にあてはめた(ローカルガラスモデル)。研究所間の不一致や、非線形なガラス成分の作用を考える必要がないため、これは大変便利だった。数十年にわたる系統的なガラス研究の進行により、何千種類のガラス組成が研究された結果、何百万のガラス特性が発表され、ガラスデータベースに集められた。この膨大な実験データの集積は、Bottinga[13]、 Kucuk[14]、 Priven[15]、 Choudhary[16]、 Mazurin[17]、 Fluegel[18][19]が様々なアプローチによるグローバルガラスモデルを発表するまで全体としての研究がされていなかった。ショットのモデルとは対照的に、グローバルガラスモデルは多くの独立したデータ源を考慮しており、モデルによる推定はより確からしいものになっている。グローバルガラスモデルはさらに、右図に見られる混合アルカリ効果やホウ素特例[訳語疑問点]のように、特定のガラス成分の組み合わせが特性に及ぼす非線形効果を明らかにし定量化した。グローバルガラスモデルはまた、ガラス特性測定の正確度の興味深い発達を反映している。たとえば、図示したように現代の科学文献におけるいくつかのガラス特性の実験データの正確度の低下である。これらは、新しいデータ、測定手順、測定機関(ガラス研究施設)の評価・認定に利用することができる。以下の節では、(融解熱を除いて)膨大な実験データをうまく扱えるように見える経験的なモデル化手法を述べる。得られるモデルは今日の工業的応用やガラスの特性計算の研究に利用されている。
非経験的(演繹的)ガラスモデルも存在する。[20]それらはそもそもガラス特性の確かな予測を得るためでなく、しばしばいくつかの特性(原子半径、原子量、化学結合の強さと結合角、結合の価数、比熱)の間の関係を確立して科学的な洞察を得るために作られたものである。将来的には、諸特性間の関係が十分に理解され、必要なすべての実験データが利用可能であれば、演繹的モデルにおける特性間の関係の研究により、最終的には求める特性すべてについて精度の高い予測が導かれる可能性がある。

