キジも鳴かずば

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キジも鳴かずば』(きじもなかずば)は大阪府長野県に伝わる民話、およびそこから派生したことわざ。「雉も鳴かずば撃たれまい(きじもなかずばうたれまい)」とも呼ばれる。いずれの話も百姓が自身やその家族の余計な言動により人柱に処されてしまうという内容で、「口は禍の元」と同様に、不用意な発言により自ら災いを招くさまを意味している[1]

1976年昭和51年)5月15日に「まんが日本昔ばなし」で『キジも鳴かずば』というタイトルでアニメ化された[2]。なおその16年後の1992年平成4年)9月26日にも「まんが日本昔ばなし」で『もの言わぬお菊』としてアニメ化されたが[3]、これは1917年大正6年)発行の『日本伝説叢書』を基にしたものであり[4]、どちらの話も長野県の民話を基にしている。

神道集に見られる著述では、淀川にかかる長柄橋に人柱の伝説が存在する。その伝説は「長柄橋架設工事が難渋に困惑する橋奉行らに対し、妻子とともに通りかかった男が「袴の綻びを白布でつづった人を人柱にすれば工事が捗るだろう」とふとつぶやく。しかしその男自身の袴がそのとおりだったため彼は人柱にされてしまい、悲しんだ妻が「ものいへば父はながらの橋柱 なかずば雉もとらえざらまし」という歌を残して投身自殺する」というもので、南北朝期にはすでに大坂地方を中心に東国方面まで知られていた[5]

その後、若干変形した形で知られるようになった。例えば、狂言禁野」では、時代設定が飛鳥時代となっており、「垂水(現在の吹田市付近)の長者・巌氏(いわうじ)に人柱について相談したところ、彼は袴に継ぎのある人を人柱にするよう助言したが、皮肉にも巌氏自身が継ぎのある袴をはいていたため人柱にされてしまい、巌氏の娘は父親が人柱になったショックで口をきかなくなる」という展開となっている。その後、娘は嫁ぎ先の北河内でも一言も口を利かないので離縁され、夫に連れられて垂水の実家に帰されることになるが、道中の禁野の里(現在の枚方市付近)で夫が声を上げて飛び立った雉を射止めたところ、それを見た巌氏の娘は

ものいわじ父は長柄の人柱 鳴かずば雉も射られざらまし

と詠み、妻が口をきけるようになったことを喜んだ夫は、雉を手厚く葬って北河内に引き返し、仲良く暮らすという結末となる。現在の大阪市淀川区東三国大願寺には、古代長柄橋の人柱碑が残されている[5]

長野県における民話

長野県長野市にある「キジも鳴かずば」像(2014年11月)

1917年大正6年)発行の『日本伝説叢書』にも、犀川に架かる久米路橋(水内橋)に関する人柱伝説が存在する[4]。「梅雨の度に久米路橋が流される対策として罪人を人柱にすることが提案され、庄屋から小豆を盗んだ罪で投獄された百姓が生き埋めとされる。彼は娘であるお菊赤飯を食べさせるために小豆を盗んでいたが、お菊がそのことを毎日言いふらしていたことで盗みが発覚していた。父の死後、お菊は悲しみのあまり口を利かなくなり、それゆえ孤独に過ごす。17歳になったある日、鳴いたキジを狩人鉄砲を使って撃ち落とす光景をみた彼女は、自分の言葉のせいで父が死んだ後悔を口にし、また誰かを死なせることのないよう決して口をきくまい、といったのち再び口を閉ざし、二度と口をきくことはなく生涯を終えた」というもので、「まんが日本昔ばなし」の「もの言わぬお菊」(1992年平成4年)9月26日放送)としてアニメ化された。

この民話をもとに、下高井郡山ノ内町上条の高橋忠治による話を作家松谷みよ子が再話したものが、1957年昭和32年)発行の『信濃の民話』に「おしになった娘」という題で収録されている[6]。娘(お菊)が「もりい」、父親が「五作」、母親(故人)が「おてい」という名前になっていたり、物語の最後で娘(もりい)が失踪するなどといった変更点があり[6]菅忠道はこの話について「民話の再話と再創造の分岐点に立っているといえるような記念碑的な作品」と評価している[7]

「まんが日本昔ばなし」版におけるあらすじ

犀川という川のほとりに小さな村があった。そこには弥平という父親と千代という幼い娘が2人で暮らしていた。千代の母親は数年前に発生した村の洪水の犠牲になった。ある日、千代が重い病にかかって寝込んでしまう。弥平は必死で千代の看病をするが、千代は食欲が進まず「小豆粥が食べたい」[8]と弥平に話す。小豆粥は千代の母が存命だった頃に1度だけ家族で食べた思い出の料理だった。

しかし貧しい弥平の家には小豆や米は無く、千代の病を治したい弥平は村の地主の倉庫から米と小豆を盗み、小豆粥を千代に食べさせる。やがて千代の体調は回復し、外で遊べるようになった。弥平が畑仕事に出かけて留守番をしていた千代は、「あずきまんま食べた」と嬉しさのあまり歌いながら鞠つきをしていたところを、近所の村人に聞かれてしまった。

その夜から激しい雨が降り出し、村人達は川の氾濫を鎮めるために咎人を人柱にしようと相談する。そこで千代の歌を聞いていた村人が、この事を皆に話して弥平を人柱にする事を思いつく。その後弥平の家に役人が押し寄せる。怯える千代に対して弥平は「心配するな。じきに帰ってくる」と話し連行されていくが、弥平は「人柱」として川のほとりに生き埋めにされて死んでしまう。千代は悲しみに暮れて泣き続けたが、弥平が人柱にされた原因が自身の手鞠唄であった事を知り、誰とも口を利かなくなり村から姿を消してしまう。

数年後、ある猟師がキジの鳴き声を聞いて鉄砲で撃ち落とす。猟師がキジが落ちた所に向かうと、そこに撃たれたキジを抱きかかえた若い娘が現れ、「キジよ。お前も鳴かずば撃たれまいに(鳴かなければ撃たれずに済んだのに)」とキジに語り掛ける。猟師はその若い娘が千代である事に気づくが、千代はキジを持ったままどこかへ消え去り、二度と人前に姿を現すことはなかった。

上記の「まんが日本昔ばなし」版のストーリーは、長野の民話を松谷みよ子が再話したものが元になっている。原作となった民話とは一部の設定が変更されている(原作では、娘の名前は「お菊」で、母親は生存しており、父親の死後も行方をくらませることなく、引き続き母と娘で生活していると言った相違点がある)。

登場人物

関連項目

脚注

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