キャントリル尺度
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キャントリル尺度は一つの質問だけで構成されているので非常に短時間に行うことができる。したがって大規模な疫学調査でよく用いられる。世界幸福度報告では、人生における考えうる最高の生活を10、最悪の生活を0として、現在の生活を0から10の11段階で評価するとあなたの現在の状態はどの点に当てはまるかを選択する形式となっている。
何を測定しているのか
キャントリル尺度は人生についての主観的幸福感を測定していると言われている。その一方でキャントリル尺度の質問の文言には「幸福」という言葉は含まれておらず、"best possible life”(考えうる最高の生活)と比べて現在の生活を点数化するよう求めている。
こういった質問をした場合、被験者は何をイメージして答えを選ぶのかについては議論がある。"考えうる最高の生活”と現実の生活を比べた場合、ポジティブな幸福感よりも収入や経済的成功の方が反映されるという報告がある[2]。国レベルでは、幸福感よりもGDPや社会的発展が反映される傾向があると報告されている[3]。実際 世界幸福度報告の調査で上位を占めるのはGDPが高い先進国であり、下位の大半は発展途上国である。キャントリル尺度は主観的幸福感の尺度に分類されてはいるが、実際は生活における喜びや満足といった心理的要素よりも、富や社会的成功といった要素が反映するいう研究結果がある[4]。
キャントリル尺度と日本人
2025年度の世界幸福度報告によれば日本の主観的幸福感は155カ国中55位である。この状況に対して、先進国にも関わらずなぜ日本の幸福度はこの程度なのかと議論されることが多い[5]。日本の幸福度の順位の低さについては測定方法(キャントリル尺度)が影響しているという報告がある。
キャントリル尺度は10点法で評価するが、市場調査会社インテージが行った国際調査(アンケートの質問に対して"普通”を選択する場合何点を選ぶか?)によると、日本人の場合10点法で5点を選択する人が最も多かったが、日本以外の国では6点~8点を最も多く選択していた[6]。つまり10点法で採点すると日本人の"普通”のスコアの分布は中央寄りとなり、結果として参加国の中で韓国と並んで一番低得点となった。
実際、日本人を対象にポジティブな内容のアンケート調査(幸福、満足度、夢、希望、など)をすると他国と比べて低い点数を付けることはよく知られている(東アジアにその傾向を認める)[7]。ポジティブ感情[8]、恋愛満足度[9]、職場への満足度[10]、高校生の将来の夢の有無[11]、高齢者の生きがい[12]、容姿への満足度[13]、いずれも日本人は国際的にかなり低い。こういった結果を日本人の幸福度や満足度が本当に低いと見なすのか、あるいは日本人は謙遜や中庸を重視するのでその結果質問票では低いスコアとなると考えるのかは議論の分かれるところである[14]
出典・脚注
- ↑ “Google Books”. Google. 2026年2月4日閲覧。
- ↑ Diener, Ed; Kahneman, Daniel; Tov, William; Arora, Raksha (2010-02-11). “1 Income’s Association with Judgments of Life Versus Feelings”. International Differences in Well-Being. Oxford University PressNew York. p. 3–15. doi:10.1093/acprof:oso/9780199732739.003.0001. ISBN 978-0-19-973273-9. https://academic.oup.com/book/41055/chapter/349402132 2026年2月4日閲覧。
- ↑ Joshanloo, Mohsen; Jovanović, Veljko; Taylor, Tim (2019-10-09). “A multidimensional understanding of prosperity and well-being at country level: Data-driven explorations”. PLOS ONE 14 (10): e0223221. doi:10.1371/journal.pone.0223221. ISSN 1932-6203. PMC 6785080. PMID 31596893. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC6785080/.
- ↑ Nilsson, August Håkan; Eichstaedt, Johannes C.; Lomas, Tim; Schwartz, Andrew; Kjell, Oscar (2024-02-01). “The Cantril Ladder elicits thoughts about power and wealth”. Scientific Reports 14 (1). doi:10.1038/s41598-024-52939-y. ISSN 2045-2322. PMC 10834405. PMID 38302578. https://www.nature.com/articles/s41598-024-52939-y 2026年2月4日閲覧。.
- ↑ 「日本人は「不幸せ」? 世界幸福度報告幸福度調査の世界順位、低いワケは」日本経済新聞2025年12月13日
- ↑ https://gallery.intage.co.jp/10tenhou/ 日本の「幸福度」は本当に低いのか? ~国際比較調査でみる10点法での評価スコアの国別傾向]」知るギャラリー 2022年9月9日
- ↑ 冨高辰一郎『なぜ抑うつは指数分布に従うのか』2022年11月14日。ISBN 978-4-7911-1104-6。
- ↑ Iwata, Noboru; Buka, Stephen (2002). “Race/ethnicity and depressive symptoms: a cross-cultural/ethnic comparison among university students in East Asia, North and South America”. Social Science & Medicine 55 (12): 2243–2252. doi:10.1016/S0277-9536(02)00003-5. https://linkinghub.elsevier.com/retrieve/pii/S0277953602000035 2026年1月22日閲覧。.
- ↑ https://www.ipsos.com/ja-jp/love-life-satisfaction-2024-ja/ 「パートナーとの恋愛や性生活」「愛されていると感じること」 日本、2年連続で満足度最下位 2024年11月15日
- ↑ https://www.pwc.com/jp/ja/knowledge/thoughtleadership/hopes-and-fears-jp2023.html/ やりがい、プロフェッショナル意識の低い日本。仕事とスキルの明確化によるキャリア自律の促進が求められる グローバル従業員意識/職場環境調査「希望と不安」2023日本版レポート
- ↑ https://www.nippon-foundation.or.jp/who/news/pr/2024/20240403-100595.html/ 日本財団18歳意識調査結果 第62回テーマ「国や社会に対する意識(6カ国調査)」 国の将来や自分の未来に対する夢 日本の若者いずれも最下位 2024年4月3日
- ↑ https://www8.cao.go.jp/kourei/ishiki/r02/zentai/pdf_index.html / 第9回高齢者の生活と意識に関する国際比較調査(全体版)
- ↑ https://www.skininc.com/business/trends/news/21887991/how-the-world-measures-up-self-appearance-acceptance-infographic/ How the World Measures Up: Self-Appearance Acceptance
- ↑ 「日本人は「不幸せ」? 世界幸福度報告幸福度調査の世界順位、低いワケは」日本経済新聞2025年12月13日