クレアチニン
From Wikipedia, the free encyclopedia
| 物質名 | |
|---|---|
2-アミノ-1-メチル-5H-イミダゾール-4-オン | |
| 識別情報 | |
3D model (JSmol) |
|
| ECHA InfoCard | 100.000.424 |
| KEGG | |
| MeSH | Creatinine |
PubChem CID |
|
CompTox Dashboard (EPA) |
|
| |
| 性質 | |
| C4H7N3O | |
| モル質量 | 113.120 g·mol−1 |
| 外観 | 白色の結晶 |
| 密度 | 1.09 g cm−3 |
| 融点 | 300 °C (572 °F; 573 K)[1] 分解 |
| log POW | −1.76 |
| 酸解離定数 pKa | 12.309 |
| 塩基解離定数 pKb | 1.688 |
| 等電点 | 11.19 |
| 熱化学 | |
| 標準定圧モル比熱, Cp⦵ | 138.1 J K−1 mol−1 (at 23.4 °C) |
| 標準モルエントロピー S⦵ | 167.4 J K−1 mol−1 |
標準生成熱 (ΔfH⦵298) |
−240.81–239.05 kJ mol−1 |
| 標準燃焼熱 ΔcH |
−2.33539–2.33367 MJ mol−1 |
| 危険性 | |
| NFPA 704(ファイア・ダイアモンド) | |
| 引火点 | 290 °C (554 °F; 563 K) |
クレアチニン(英: creatinine, Cr, CRE, CREA)は、筋肉のエネルギー代謝に関わるクレアチンが分解されて生じる老廃物で、腎臓(糸球体)で血液からろ過され尿へ排泄される[2][3]。
血液中のクレアチニン(血清クレアチニン)は、この「ろ過機能(GFR)」の指標として日常診療で最も広く使われる[4]。臨床現場では血液検査と尿検査のいずれでも測定される[2]。血清生化学検査ではCr、CRE、CREAなどの略号で記載される事が多い。本項では以下Crと記す[2]。
クレアチニンは、体内で主にクレアチン(creatine / クレアチンリン酸) の代謝過程で非酵素的脱水反応などを通じて生じる[5]。筋肉量に依存して産生されるため、筋肉量の多い人ほど基礎産生量が高くなる[6]。血中に放出されたクレアチニンは、糸球体でろ過された後、原則として再吸収されず尿中に排出される[7]。この性質により、血清クレアチニン値(血中濃度)は腎機能、特に糸球体濾過能(GFR)を反映する目安とされる[8]。
腎機能(GFR)との関係とeGFRの考え方
血清クレアチニンは、腎臓での排泄が滞るほど上昇する一方で、筋肉量・年齢・性別の影響も大きいため、単独では腎機能を正確に表さない。そこで年齢・性別等を加味した「推算糸球体濾過量(eGFR)」が標準的に用いられる。国際的にはCKD-EPI(2021)などの式が推奨され、日本でも日本人データに基づく式が広く用いられている。腎機能評価や経過観察では、eGFRと尿アルブミン(ACR)を組み合わせるのが推奨される[9]。
どう測るか(検査法と標準化)
病院・検査室では主にJaffe法と酵素法が用いられる。Jaffe法はビリルビン・ケトン体・一部抗生物質などの干渉を受けやすく偽高値の原因になり得るため、臨床的には干渉の少ない酵素法を推す報告が多い。検査のIDMS標準化(国際基準に合わせること)によって、施設間のばらつきが減りeGFRの精度が改善する[10]。
参考範囲と生理的変動(妊娠・筋肉量)
クレアチニンの「正常(参考)範囲」は施設・測定法で異なり、筋肉量が多いほど高め、少ないほど低めになりやすい。妊娠では腎血流とGFRが増加するため、非妊娠より生理的に低下する(健常妊娠の系統的レビューでも、妊娠期は非妊娠より低い水準が示される)。解釈時は背景(年齢・体格・妊娠など)を考慮する[11]。
正常値
Cr総量は体筋肉量を反映しているので、体筋肉率の多い男性の方が正常値も高い。正常値は施設によって若干異なるが概ね以下の通り。
血清Cr値:男性で0.6~1.2mg/dl、女性で0.4~1.0mg/dl
尿中Cr濃度:男性で20~26mg/kg/日、女性で14~22mg/kg/日
腎機能とクレアチニンの関係
「高い」と言われたときに考える主なカテゴリ(原因)
1) 腎性:腎臓そのものの障害
慢性腎臓病(CKD:糖尿病腎症、糸球体腎炎、高血圧性腎硬化症など)や急性腎障害(AKI)でGFRが低下し、クレアチニンが上昇する。診断と重症度評価はeGFR×アルブミン尿(ACR)で行い、3か月以上の持続でCKDと定義する[12]。
2) 腎前性:腎臓への血流低下
脱水・出血・心不全・敗血症などで腎血流が落ちると、ろ過が一時的に低下して上昇する(しばしばBUN/Cr比の上昇を伴う)。原因是正で改善しうる[13]。
3) 腎後性:尿の通り道の閉塞
前立腺肥大・結石などで尿路が閉塞すると、上流の腎機能が障害され上昇する。迅速に原因精査・解除が必要[14]。
4) 食事・運動など一過性の上昇
加熱した肉を摂ると、食事由来クレアチンがクレアチニンに変わり半日程度の一過性上昇が起き、eGFRが見かけ上低下して誤分類を招くことがある。激しい運動でも一過性に上がる。採血の前は絶食・激運動回避が望ましい[15]。
5) 筋崩壊(横紋筋融解など)
広範な筋壊死ではクレアチニンとミオグロビンが増え、AKIを合併し得る。病歴(強度運動、圧挫、薬物など)から早期に鑑別する[16]。
6) 薬剤による「見かけ上の上昇」
トリメトプリムやコビシスタットなどは、尿細管でのクレアチニン分泌(MATE/OCT輸送体)を阻害して、実際のGFR低下がなくても血清クレアチニンを上昇させる(見かけ上のeGFR低下)。中止や代替で元に戻る[17]。
7) 検査法の干渉(偽高値)
Jaffe法ではケトン体・ビリルビン・一部セフェム系抗生物質などで偽高値が起き得る。異常値は測定法を確認し、必要に応じて酵素法や再検で検証する[18]。



