シビウ市内に公共交通機関を導入する動きが始まったのはオーストリア=ハンガリー帝国時代の1893年であった。当初はトロリーバスの導入が検討され、1904年から営業運転を開始したものの、雨天時にスリップが相次ぐなどの課題を多く残す結果となった。これを受け、より安定した走行が可能な路面電車の導入が決定し、1905年から営業運転が始まった。以降はシビウ市内を中心に路線網の延伸が継続して行われ、ルーマニアの都市となって以降もその流れは続いた。最後に延伸が実施されたのは1948年に開通した、シビウ郊外のラシナリ(ルーマニア語版)へ向かう区間であったが、当初は架線の敷設が行われず、ディーゼルエンジンを搭載した付随車を連結し、エンジンで発電機を稼働させる形での運転が実施された[1][2][6]。
その後、1966年に路線の老朽化が深刻化した事を理由に一部路線が廃止され、更にシビウ市議会が路面電車の廃止を決定した事で、1969年から1972年にかけてシビウ市内の路線網は撤去された。ただし、シビウとラシナリを結ぶ全長11 kmの郊外路線のみはそれ以降も残存し、ルーマニアの民主化以降はスイスから譲渡された電車が主力車両として使用される事となった。だが、施設の老朽化が要因となり、2011年をもってシビウ市電の運行は休止した[1][2][6]。
シビウ中心部からシビウ動物園(Grădina Zoologică din Sibiu)へ向かう区間については線路・施設の撤去が実施された一方、ラシナリ側の路線については2012年にシビウ市内で公共交通を運営するターシブ(S.C. Tursib S.A.)からラシナリ市へ運営権が移管された。これを受け、ラシナリ市では残された区間を再整備の上で復活させる計画を立て、2013年から2017年にかけて線路・施設の整備や後述する車両の譲受などが行われた。そして2018年1月12日、シビウ動物園 - ラシナリ間での列車の運行が復活した[2][3][4]。
2021年現在は定期運用の他に団体・観光客向けの貸切運転にも対応しており、運賃は大人8レイ、子供4レイである一方、貸切運賃は500レイに設定されている。また、リクエストに応じて観光案内や地元の名産品の車内での試飲も可能である[3][4]。