シャジクモ

シャジクモ科の藻類の一種 From Wikipedia, the free encyclopedia

シャジクモ(車軸藻、学名Chara braunii)は、シャジクモ目シャジクモ属に分類される藻類の1である。長さ10–40センチメートル (cm)、主軸や小枝は皮層に覆われない。節にある托葉細胞は変異が大きい。小枝は3–4節、苞がつき、末端に苞細胞が束生して冠状。雌雄同株で生殖器は小枝の下部の節につく(小枝基部にはつかない)。シャジクモ類の中では水田ため池などで最もふつうに見られる種であり、また湖にも生育するが、浅所域と深所域のものでは遺伝的に異なることが示唆されている。日本を含む世界各地に広く分布している。水質悪化や農業形態の変化などによって減少し、環境省レッドリストでは絶滅危惧II類に指定されている(2025年現在)。本種において、ゲノム塩基配列が報告されている。

概要 シャジクモ, 分類 ...
シャジクモ
1. 藻体
分類
ドメイン : 真核生物 Eukaryota
: 植物界 Plantae
(アーケプラスチダ Archaeplastida)
亜界 : 緑色植物亜界 Viridiplantae
階級なし : ストレプト植物 Streptophyta
: シャジクモ植物門 Charophyta
: シャジクモ綱 Charophyceae
: シャジクモ目 Charales
: シャジクモ科 Characeae
: シャジクモ連 Chareae
: シャジクモ属 Chara
: シャジクモ C. braunii
学名
Chara braunii C.C.Gmelin, 1826[1]
シノニム
  • Charopsis braunii (C.C.Gmelin) Kützing, 1843[1]
  • Nitella braunii (C.C.Gmelin) Rabenhorst, 1846[1]
  • Chara songarica F.J.Ruprecht[1]
  • Chara flexilis G.B.Amici, 1823[1]
  • Chara cortiana Bertoloni ex G.B.Amici, 1827[1]
  • Chara coronata J.B.Ziz ex G.W.Bischoff, 1828[1]
  • Chara jahnensis F.Meyen, 1835[1]
  • Chara stalii G.Meneghini, 1846[1]
英名
Braun's stonewort[1]
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特徴

藻体の長さは 10–40 cm、主軸径は 0.3–1 mm[2][3](図1, 2a)。主軸にも小枝にも皮層がなく[2][4]、シャジクモ属の他のと比較して藻体に透明感がある[3](図1, 2)。主軸節部の托葉冠は1輪、小枝と互生する[2](図2b)。托葉細胞は、乳頭状突起のものから長さ 1 mm ほどのものまで変異がある[2][3][4](図2b)。節からは8–11本の小枝が輪生する[2](図2b)。各小枝は3–4節からなり、節には苞がつく[2]。小枝末端には複数の苞細胞が束生して冠状[2][3][4]

2a. 藻体
2b. 節部の拡大: 主軸、小枝、托葉細胞

雌雄同株(造精器と生卵器が同一個体につく)[2][3][4]。生殖器官は小枝の下部の節につき、小枝基部にはつかない[2][4](図3a)。造精器は生卵器の下部につき、直径 250–320 µm[2](図3b)。生卵器は楕円形、800–1,100 × 400–500 µm[2](図3b)。卵胞子は黒く、500–750 × 300–450 µm[2]。らせん縁は7–12本[2][4]。卵胞子膜は平滑または細かい顆粒状[4]

3a. 生殖器官をつけた藻体
3b. 生卵器(上)と造精器(下)

節間部の長さ、托葉細胞や苞、卵胞子の大きさなどの特徴において個体変異が大きい[2][3]。そのため、多数の種内分類群が提唱されている[5]。ただし、日本国内の試料の調査からは、このような形態的差異と系統的差異の対応関係は見つかっていない[5]。一方で、生態的な差異(浅所と深所)と系統的差異の対応関係が報告されている(下記)。

主軸や小枝に皮層を欠く点でオウシャジクモ(Chara corallina)やオーストラリアシャジクモ(Chara australis)に類似している。ただしこれらの種は、托葉冠が未発達(痕跡的から欠如)であること、小枝末端に1細胞のみがついて冠状ではないこと、生卵器が小枝の基部にもつくことでシャジクモとは区別できる[3]

分布・生態

4. シャジクモの生育環境(オーストリア

世界中に広く分布し、南北アメリカアフリカヨーロッパアジアオーストラリアハワイから報告されている[1][2][6]ネオタイプ産地イタリアである[1]。ただし、世界各地のシャジクモの間では生殖的隔離があることが示唆されている[1][7]。日本でも北海道本州四国九州沖縄から報告されている[2][6][8][9]

シャジクモ類としては、水田ため池で最もふつうに見られる種であり、またからも見つかる[2][3](図4)。ただし分子系統学的研究からは、日本産のシャジクモは水田など浅い場所(水深 15 cm 以浅)に生育するものと湖など深い場所(水深 1 m 以深)に生育するものに遺伝的に分けられることが示されている[5]

保全状況評価

淡水域に広く生育するが、日本では近年の水質悪化によって湖沼では減少しているとみられ、またため池や水田などでも農業形態の変化や管理放棄、埋め立てなどによって減少している[4]。ヨーロッパの多くの国でも、レッドリストに掲載されているが、一方で増加しているとみられる地域もある[1]

環境省レッドリストでは絶滅危惧II類に指定されている(2025年現在)[4]

絶滅危惧II類 (VU)環境省レッドリスト

Status jenv VU.svg
Status jenv VU.svg

栃木県(湖沼型)、福井県では絶滅危惧I類、山形県、茨城県、埼玉県、東京都、長野県、鳥取県、福岡県、宮崎県、鹿児島県、沖縄県では絶滅危惧II類、兵庫県、愛媛県、長崎県では準絶滅危惧、千葉県では一般保護生物、青森県では情報不足(要調査野生生物)、神奈川県では注目種、京都府では要注目種とされる[4]

人間との関わり

節間細胞が巨大で皮層で覆われていないため細胞内の様子が観察しやすく、学校の理科教育において、原形質流動の観察に本種が用いられることがある[10][11]。またゲノム塩基配列が決定されており(約 2 Gbp; Gbp = 10億塩基対)、特に陸上植物への進化という観点からの研究が行われている[12][13]

アクアリウムにおいて栽培されることもある。栽培は比較的容易とされるが、水質の急変には弱い[14]

脚注

外部リンク

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