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ジクロロメタン

有機溶媒のひとつ From Wikipedia, the free encyclopedia

ジクロロメタン(英: dichloromethane)は、分子式を CH2Cl2 と表される有機溶媒の一種。慣用名として塩化メチレン(英: methylene chloride)、二塩化メチレン(英: methylene bichloride)があり、産業界ではこちらの名称が用いられることも多い。また、これらの英名の頭文字からDCM 、MDCと略記されるほか、英名・和名を略した呼称[注釈 1]が用いられることもある。

概要 物質名, 識別情報 ...
ジクロロメタン
物質名
識別情報
3D model (JSmol)
ChEBI
ChEMBL
ChemSpider
ECHA InfoCard 100.000.763 ウィキデータを編集
EC番号
  • 200-838-9
KEGG
RTECS number
  • PA8050000
UNII
国連/北米番号 1593
性質
CH2Cl2
モル質量 84.93 g·mol−1
外観 無色の液体
匂い わずかに、クロロホルムのような[1]
密度 1.3266 g/cm3 (20 °C)[2]
融点 −96.7 °C
沸点 39.6 °C 720 °Cで分解[3]
39.75 °C
at 760 mmHg[4]
25.6 g/L (15 °C)
17.5 g/L (25 °C)
15.8 g/L (30 °C)
5.2 g/L (60 °C)[3]
溶解度 酢酸エチル、エタノール、ヘキサン、ベンゼン、四塩化炭素、ジエチルエーテル、クロロホルムと混和
log POW 1.19[5]
蒸気圧 0.13 kPa (−70.5 °C)
2 kPa (−40 °C)
19.3 kPa (0 °C)
57.3 kPa (25 °C)[6]
79.99 kPa (35 °C)[3]
3.25 L·atm/mol[4]
磁化率 −46.6·10−6 cm3/mol
屈折率 (nD) 1.4244 (20 °C)[4][7]
粘度 0.43 cP (20 °C)[4]
0.413 cP (25 °C)
構造
1.6 D
熱化学
標準定圧モル比熱, Cp⦵ 102.3 J/(mol·K)[6]
標準モルエントロピー S⦵ 174.5 J/(mol·K)[6]
標準生成熱 (ΔfH⦵298)
−124.3 kJ/mol[6]
標準燃焼熱 ΔcHo −454.0 kJ/mol (標準生成エンタルピーから)[6]
危険性
労働安全衛生 (OHS/OSH):
目への危険性
刺激性
GHS表示:[7]
急性毒性(低毒性) 経口・吸飲による有害性
Warning
H315, H319, H335, H336, H351, H373
P261, P281, P305+P351+P338
NFPA 704(ファイア・ダイアモンド)
NFPA 704 four-colored diamondHealth 2: Intense or continued but not chronic exposure could cause temporary incapacitation or possible residual injury. E.g. chloroformFlammability 1: Must be pre-heated before ignition can occur. Flash point over 93 °C (200 °F). E.g. canola oilInstability 0: Normally stable, even under fire exposure conditions, and is not reactive with water. E.g. liquid nitrogenSpecial hazards (white): no code
2
1
0
引火点 なし。ただし、100 °C以上で可燃性蒸気と空気の混合物を形成する可能性[8]
556 °C (1,033 °F; 829 K)
爆発限界 13%-23%[1]
致死量または濃度 (LD, LC)
1.25 g/kg (ラット, 経口)
2 g/kg (ウサギ, 経口)[3]
24,929 ppm (ラット, 30 分)
14,400 ppm (マウス, 7 時間)[9]
LCLo (最低致死濃度)
5000 ppm (モルモット, 2 時間)
10,000 ppm (ウサギ, 7 時間)
12,295 ppm (ネコ, 4.5 時間)
14,108 ppm (イヌ, 7 時間)[9]
NIOSH(米国の健康曝露限度):
PEL
25 ppm over 8 hours (time-weighted average), 125 ppm over 15 minutes (STEL)[1][10]
REL
Ca[1]
IDLH
Ca [2300 ppm][1]
法的状態
特記無き場合、データは標準状態 (25 °C [77 °F], 100 kPa) におけるものである。
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概要

常温では無色で、強く甘い芳香をもつ液体。非常に多くの種類の有機化合物を溶解する。また難燃性の有機化合物であることから、広範囲で溶媒や溶剤として利用されている。特に金属機械の油脂を洗浄する用途で多用されているが、環境負荷とヒトへの毒性の懸念からPRTR法により利用と廃棄が監視される物質でもある。作業環境の管理濃度は、50ppmであり、その記録の保存は30年である。

合成法

工業的には、メタンあるいはクロロメタン(慣用名は塩化メチル)と塩素とを400-500℃で気相でラジカル反応させることで得られる。クロロメタンはメタンよりも早く塩素化されるため、本製法では、メタンのHがClで多置換された混合物が生じる。例に上げると、メタンと塩素とを当量で反応させた場合、クロロメタン:37%、ジクロロメタン:41%、トリクロロメタン(慣用名はクロロホルム):19%、テトラクロロメタン(慣用名は四塩化炭素):3%の生成比となる。この混合物から副生成物の塩化水素を除去した後、蒸留によって精製する。

ジクロロメタンはメタンの塩素化物の中では最も安定であるが、高純度品を長期保存した場合光や酸素により酸化分解されてわずかに塩化水素やホスゲンを含む場合がある。したがって、アルコール、アミン、オレフィンなどに属する、安定剤が微量添加されていることが多い。また密栓して遮光保存する必要がある。

塩化メチレンの2016年度日本国内生産量は 51,874 t、工業消費量は 7,759 t である[12]。

用途

ジクロロメタンは多くの有機化合物を溶解し、水と混ざらず、沸点が低いなどの条件を備えているため、有機化学においてはクロロホルムと並んで利用される溶媒である。酸性条件に対して安定であるため、フリーデル・クラフツ反応などルイス酸を用いる反応、酸塩化物を用いるアシル化反応、スワン酸化などの酸化反応に常用される。有機合成の溶媒として用いる場合、通常の反応にはモレキュラーシーブスなどで脱水する程度で十分な結果が得られる。精密な実験の場合は水素化カルシウムなどを乾燥剤として蒸留精製する。ナトリウムは反応し爆発の危険があるため乾燥剤に用いてはならない。

工業的にはオゾン層破壊問題で一部のフロン類が製造禁止になって以来、金属機器の洗浄剤の代替物質としてジクロロメタンは金属加工業を中心に大量に利用されている。

しかし、現在ではPRTR法規制物質として大量使用者は購入量、廃棄量およびその差分である環境放出量の報告を義務づけられており、大気中への放出量は削減することを求められている。それに併せて、代替となる溶媒(超臨界二酸化炭素、ベンゾトリフルオリドなど)の研究も進められている。

環境対策、塩素フリーの観点から、大学・企業・研究機関などは自主的にジクロロメタンの使用を制限している。可能な限り、他の溶媒を使うように努力を行っている。また、業者を通じて使用済みジクロロメタンの回収・リサイクル・再利用も行っている[13]。

DIYではアクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂を溶着する際の接着剤で使用されている[14]。

安全性

ヒトに対しては、皮膚または目に接触すると炎症を引き起こす場合があることが知られている。蒸気を大量に吸引すると麻酔作用を示し、中枢神経系を抑制する。慢性毒性として肝機能障害が知られている。

2012年、日本の印刷企業従業員に胆管癌が多発していることが判明した[15]。当該職場ではジクロロメタンと1,2-ジクロロプロパンを大量使用していたため、関連の有無について調査が行われている。

厚生労働省ではこれらの調査を踏まえ、2013年3月に以下のように報告した[15]。

  1. 胆管がんは、ジクロロメタン又は1,2-ジクロロプロパンに長期間、高濃度ばく露することにより発症し得ると医学的に推定できること
  2. 本件事業場で発生した胆管がんは、1,2-ジクロロプロパンに長期間、高濃度ばく露したことが原因で発症した蓋然性が極めて高いこと

報告事例では1,2-ジクロロプロパンが重視されているが、ジクロロメタンによると思われる胆管がんに対しても後に労災が認められた[16]。

国際がん研究機関によるIARC発がん性リスク評価でも、2014年にGroup2B(ヒトに対する発癌性が疑われる)からGroup2A(ヒトに対する発癌性がおそらくある)に昇格された[17]。

以上のことから、労働安全衛生法の第二類物質特別有機溶剤等に指定されている。

脚注

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