スバエク

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スバエク(Sbek)は、カンボジアの伝統的な影絵人形芝居。芝居に用いる人形の大きさによって呼称が異なり、大型の人形を用いるスバエク・トム(Sbek Thom)は2008年無形文化遺産に登録されている。12世紀から14世紀頃に成立したと考えられており、クメール王朝の王宮ではリアムケー英語版を題材としたスバエク・トムが演じられた。

起源

カンボジアは紀元前後から中国インドを結ぶ海上交易の中継地として栄え、両国の文化を移入しながら独自の文化を発展させた[1]。スバエクも中国やインドなどの周辺諸国の影絵芝居の影響を受けて誕生したと考えられるが、起源は定かではない[1][2]アンコール時代には既に演じられたとされており、また、リアムケー(ラーマーヤナを元とした叙事詩)を演目としていることから、12世紀から14世紀頃に成立したと考えられている[2][3]

種類

スバエク・トムに用いられるレリーフ(ポルトガル東洋博物館蔵)

カンボジア語でスバエク(Sbek)は牛の革を意味し、影絵芝居に用いる人形は牛の革をくり抜いて作られる[2][3]。人形の大きさによって呼称が異なり、大型のものをスバエク・トム(Sbek Thom)、小型のものをスバエク・トーチュ、スバエク・トーイ(Sbek Toch)という[1][2]。このほか、1940年まではスバエク・トムの派生形といわれるスバエク・カンダル(Sbek Kandal)があった[2]

スバエク・トムの人形は、縦1.5メートルから2メートル、横1メートルから1.5メートル程度の縦長のパネル状で、可動部はなく、劇の一場面を切り取ったレリーフ・静止画のようなものとなっている[2][4]。幅10メートル前後のスクリーンの周りで語り手の話や音楽に合わせて人形を動かしていく[1][4]。宗教色が強く、演目はリアムケーのみであり、王族の誕生日や葬礼、寺院の建立や収穫祭などの祭礼の場面で演じられた[1][2]。スバエク・トムの人形は神聖なものとされ、牛の革に絵柄を彫る作業の前には祈りを捧げ、シヴァなどの特定の役柄の人形には自然死した牛の革のみを用いるなどの決まりがある[3]

スバエク・トーチュ(トーイ)の人形は、スバエク・トムよりも小ぶりで、人形の手や足を動かすことができる[2]。伝説や説話などを演目とし、主に民間の祝い事で演じられた[1][2]シェムリアップバタンバン周辺で継承されており、スバエク・トムとは別系統で発展したものと考えられている[1][2]。庶民的で娯楽要素が強く、即興やアドリブが多く盛り込まれる[1][2]

現状

20世紀に入ってからも伝統芸能の一つとして受け継がれてきたが、1970年代のカンボジア内戦の影響によって演者・芝居に用いる人形の多くを失う[2][3]1993年の新生カンボジア王国の成立以降、伝統的な民俗文化の復旧・再建が進められたことでプノンペンの国立劇場での上演も再開し、2008年にはスバエク・トムがユネスコの無形文化遺産に登録された[2][5]。無形文化遺産の登録以降、観光客向けの短時間の上映機会はある程度確保されているものの、伝統的な儀礼の場でスバエク・トムを演じる機会は減少しており、若年層への文化継承が課題となっている[4]

出典

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