ティーンズラブ
日本におけるアダルト創作物のジャンルのひとつ
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ジャンル傾向
1990年代後半に、レディースコミック(レディコミ)から派生したものであり、漫画作品あるいは雑誌の一ジャンルと捉えられている[2][3]。レディコミを刊行する出版社が主導し、レディコミと少女漫画の中間層に当たる年齢の女性をメインターゲットとして形成したジャンルということもあって、その定義・外縁は流動的でもある[3]。
年齢層からみると、ジャンルが成立した1990年代後半時点では、読者年齢は10代から20代を想定していたが、時代の経過とともに年齢層が上がり、ジャンル名との乖離が生じている[3]。2014年のティーンズラブ誌の編集者による座談会では、レディコミの読者年齢が40代から50代であるのに対し、ティーンズラブは30代が中心だとしている[4]。
作品の内容面では、絵柄は少女漫画のトレンドを追いつつも、性行為を含め恋愛物語を描くことが特徴とする[5]。性行為の描写についても、レディコミが快楽と欲望を前面に出すのに対し、ティーンズラブでは性行為に至るまでの恋愛や心情描写を重視する傾向がある[5][6]。作中では、読者である女性が共感できるものや憧れのシチュエーションを盛り込むことが好まれる[7]。痴漢やレイプなどの女性が忌避感情を抱く設定は避けられる[6]。性行為の場面も、男性から女性への前戯、言葉による愛情表現を描くことが重視される[8]。主人公には読者の反感を買わないキャラクターであることが求められ、ある種の弱みを持たせることも重要だとされている[4]。登場人物は、1990年代後半時点では10代の学生が多かったが、読者年齢が引き上がるとともに20代・30代の登場人物も増えていく[3]。
掲載雑誌は、当初からティーンズラブと銘打ったものもあれば、『恋愛白書パステル』のようにレディコミから路線変更したものもある[2]。堀あきこが2007年に実施した調査によれば、雑誌の表紙デザインにも違いがあり、レディコミは現実の人物モデルの写真を多用するのに対し、ティーンズラブはイラストを主体としている[9]。また、ティーンズラブジャンルの成立期には、少女漫画誌の側でも性行為を描く作品が増加するが、有害図書指定やゾーニングの強化から、2000年代半ばには、少女漫画誌はコンビニエンスストアなどでも販売可能な程度の描写、踏み込んだ描写をする場合はティーンズラブ誌と棲み分けが進んでいく[10]。
漫画以外では、ハーパー・コリンズジャパンの「ハーレクイン」、小説家になろう系列の「ムーンライトノベルズ」など小説にもティーンズラブに相当する作品群がある[11]。これらは、コミカライズの対象にもなりやすい[11]。
媒体
漫画
雑誌
ティーンズラブの専門誌としては、1998年に創刊された『エルティーンコミック』、『少女革命』が草分けとされる[2][3]。2007年の堀あきこの調査では、以下の8誌がティーンズラブ誌に分類されている[2]。
- Young Love Comic aya(宙出版)
- 恋愛白書パステル(宙出版)
- 絶対恋愛Sweet(笠倉出版社)
- 恋愛美人イフ(セブン新社)
- 無敵恋愛S*girl(ぶんか社)
- 恋愛天国れんあいパラダイス(竹書房)
- 恋愛熱情(ラブパッション)(一水社)
- 上級恋愛ミント(近代映画社)
また、2003年以降は、ケータイコミックへの移行も進んでいく[12]。アオヤギミホコは、家族に知られずに読みたいという読者心理電子書籍販売サービスのバナー広告経由で読者層が広がったとする[3]。2010年代以降、コミックシーモアの「恋するソワレ」など電子コミックレーベルも生まれていく[3]。
主な現在発行されている紙雑誌
主な現在発行されている電子雑誌
- 恋愛天国(れんあいぱらだいす)(竹書房) ※2020年よりWeb雑誌化
主な過去に発行されていた電子雑誌(休刊予定も含む)
- 恋愛ショコラ(forcs←ゲオインタラクティブ)※2023年休刊予定[13]
主な過去に発行されていた雑誌
- エルティーンコミック→上級恋愛ミント(近代映画社)
- エルティーンコミックぷちもも
- ピンクパンチ!(宙出版)
- 恋愛Revolution(らぶれぼ)
- 少女革命(一水社)
- 恋愛宣言ピンキッシュ(平和出版)
- 恋愛天使アンジェリーナ→プチアラモード→恋愛楽園プチアラモード(大都社→少年画報社)
- 恋愛天使Darlin(祥伝社)
- 恋愛果実apricot (祥伝社)
- 恋愛体験CANDYKISS(コアマガジン)
- 恋愛熱情(ラブパッション)(一水社)
- miniラブ(日本文芸社)
- mini Sherry(ミニ シェリー)(徳間書店)
- ミニパラ(竹書房)
- デラパラmini(竹書房)
- Sweetプチ→Sweet ロマンス(笠倉出版社)
- ル・ノエル(宙出版)
単行本
複数の出版社[14] がティーンズラブのレーベルから単行本を発行している。雑誌で発表された作品をまとめたものや書き下ろしたものの他に、読者投稿を複数の漫画家が描くアンソロジー形式の単行本も販売されている[15]。
ジャケ買いをする人に向けて、タイトルで設定がわかるよう、雑誌掲載時とはタイトルを変えているものも結構多い[16]。普通の少女漫画よりもそういうケースが多いと分析されている[16]。
電子書籍
電子書店によって、電子書籍の形式でも販売されている[17]。なお、後述の小説に関しても、この形式で発売されているものが少なくない。電子書籍市場においてティーンズラブの占める割合は大きく、特に黎明期においてはボーイズラブとティーンズラブで売上の過半数を占めていた。これは性描写を含むマンガや小説に興味はあるが恥ずかしいので店頭では買いたくないというニーズを掬い上げた結果と言われている。市場規模が飛躍的に拡大した現在においても各電子書店において専用のページを作るなど力をいれている。
同人誌
電子書籍の隆盛に伴って同人誌も拡大している。従来は同人誌を購入するには専門店を利用するかコミケなどの即売会に参加するかで敷居が高かったが電子書籍ならWeb上だけで購入可能であり、格段に買いやすくなっている。作家側にとっても原稿さえ用意すれば紙の同人誌を発行する必要が無い(例えば1000部発行しようとすれば数十万円の費用がかかるため、売れ残ったら大きな赤字を抱えるリスクがある)ので売れ残りリスクなどを気にせず参入することが可能になった。人気サークルのティーンズラブ同人誌は電子書籍だけで5万部10万部売れることも珍しくなく(例えば女性向けが強いDLsite.comにおいて2026年2月現在、売上ナンバーワンの『203号室の隣人は鍵束一つ残して消えた』は46万部売れており、ランキング71位までが10万部以上、ランキング100位でさえ7万部以上売れている)、また電子書籍サイトでの同人誌は作家の取り分が一般書籍の印税より高く(60%前後)1冊当たりの売上が1000部程度でもそれなりの収入になる(同人誌執筆に専念すればアシスタント無しでも月に20ページ程度なら書き上げることは可能であり、それが1000部売れれば30万~40万の収入になる)ため参入作家自体が増えている傾向にある。
なお、全年齢扱いが多い商業ティーンズラブに対して同人ティーンズラブは成人向け(18禁)となっているケースが多く、それにともなって『ぶっかけや子宮断面図など男性向けアダルト作品で好まれた過激な性描写の導入』や『おねショタや高校とおぼしき学校が舞台など年少者(といってもエルフや悪魔といった種族で実年齢が外見年齢より遥かに上という設定を用いていたりする)の性描写ありの作品』も数多く見られる。
小説
2002年から2003年にかけてティーンズラブ小説にあたるレーベルが創刊された歴史があるが、いずれも短期間で廃止になった。
その後、2009年6月にフランス書院がティアラ文庫を立ち上げた。以後、この分野への新規参入が活発に行われている。
他のレーベルと異なり、イラストはカバーのみのエタニティブックスのような大人の女性に向けた性描写のある作品もティーンズラブ小説の一種といえよう。
元々ティーンズラブ小説以外も扱っているレジーナブックスや講談社X文庫ホワイトハートのようなレーベルでもラインナップにも加わるようになった。
また、小説投稿サイト「小説家になろう」では2005年5月より女性向け18禁小説サイトたるムーンライトノベルズを開設しており(男性向けは「ノクターンノベルズ」)、そのうちティーンズラブ小説の投稿作品の書籍化を行うレーベルも2014年より登場している。
ティアラ文庫以降のジャンル傾向は現代日本を舞台としないものが寡占しておりティーンズラブ漫画とは傾向が異なっていたが、昨今では現代日本を舞台にしたものも復活傾向にある。
以下、レーベル名と版元、発刊年月を記す。ただし紙書籍に限る。
主な現在も発行されている小説レーベル
- ティアラ文庫(フランス書院、2009年6月)
- エタニティブックス(アルファポリス、2009年9月)
- レジーナブックス(アルファポリス、2011年7月からTLを取り扱い開始)
- 講談社X文庫ホワイトハート(講談社、2012年11月からTLを取り扱い開始)
- ソーニャ文庫(イースト・プレス、2013年2月)
- ヴァニラ文庫(ハーパーコリンズ・ジャパン(旧名称:ハーレクイン)、2013年8月)
- 派生レーベル:ヴァニラ文庫ミエル(2016年3月)
- 蜜猫文庫(竹書房、2014年2月)
- 派生レーベル:蜜猫novels(2017年8月)
- 派生レーベル:蜜猫F文庫
- 蜜夢文庫(2015年5月※紙書籍。これより以前は電子書籍レーベル)
- 蜜夢文庫派生レーベル:ムーンドロップス(2017年8月)
- ノーチェブックス(アルファポリス、2014年2月)
- ハニー文庫(二見書房、2014年3月)
- オパール文庫(フランス書院、2014年4月)
- レーベル内レーベル:オパール文庫ブラックオパール(2017年9月)
- ガブリエラ文庫(旧名称:メディアソフトグレース文庫)(発行:メディアソフト、販売:三交社、2014年5月 - 2020年5月)
- 派生レーベル:ガブリエラ文庫プラス(2016年2月 - 2020年12月)
- 派生レーベル:ガブリエラブックス(2018年11月)※当レーベルのみ継続中。上記の関連レーベルは終了
- ジュエルブックス(KADOKAWAアスキー・メディアワークス、2014年6月。2020年11月から新ブランド「ジュエルブックス ピュアキス」にて全年齢向け作品も扱っている)
- 派生レーベル:ジュエル文庫(2015年12月)
- メリッサ(一迅社、2015年5月)
- フェアリーキス ピンク(ジュリアンパブリッシング、2016年2月。同年3月から新ブランド「フェアリーキス ピュア」にて全年齢向け作品も扱っている)
- eロマンスロイヤル(KADOKAWAエンターブレイン、2016年12月※紙書籍。これより以前は電子書籍レーベル。2018年9月から新ブランド「eロマンスロイヤル ピーチ」にて官能度控えめの作品も扱っている)
- ルネッタブックス(ハーパーコリンズ・ジャパン、2020年10月)
主な過去に発行されていた小説レーベル
- ラブノベルズ(2002年1月-2002年6月)
- 光彩文庫ピンキーティーンズ♥ノベルズ(2002年10月-2003年3月刊)
- 大都ノベルズアンジェリーナシリーズ(2003年10月。1作品のみ)
- さらさ文庫(メディアックス、2011年7月-2011年9月。版元を変えた上でジュリエット文庫として新創刊)
- マリーローズ文庫(コスミック出版、2011年10月 - 2019年1月)
- ジュリエット文庫(インフォレスト、2012年4月-2014年1月刊。実質上記さらさ文庫からの引き継ぎ。休刊後は既刊のみを電子で版元を変えた上でガブリエラ文庫アルファが取り扱い)
- シフォン文庫(集英社、2012年5月-2015年8月刊で紙媒体の刊行を打ち切り、電子書籍限定に移行)
- プリエール文庫(大誠社、2013年4月 - 2017年12月刊。2016年4月より版元はブライト出版に移行。)
- エバーロマンス(オークラ出版、2013年7月-2017年7月刊)
- 派生レーベル:エバープリンセス(2014年9月 - 2017年6月刊)
- プリシラブックス(新潮社、2013年8月-2016年2月刊)
- フルール文庫ルージュライン(メディアファクトリー、ボーイズラブ系レーベルのフルール文庫ブルーラインと同時創刊。2013年9月-2015年3月刊で紙媒体の刊行を打ち切り、電子書籍限定に移行。電子も同年9月以後刊行なし。)
- ロイヤルキス文庫(ジュリアンパブリッシング、2013年11月 - 2018年12月刊刊で紙媒体の刊行を打ち切り、電子書籍限定に移行)
- 派生レーベル:チュールキス文庫(2015年10月 - 2018年12月刊刊で紙媒体の刊行を打ち切り、電子書籍限定に移行)
- 乙蜜ミルキィ文庫(リブレ出版、2013年11月-2017年3月刊)
- シンデレラノベルス(ホビージャパン、2015年7月-2016年6月刊)
- アンジェリカ(ハーパーコリンズ・ジャパン、2016年1月-2016年11月刊)
- ショコラシュクレノベルズ(キルタイムコミュニケーション、2016年4月-2016年5月刊)
- ディアノベルス(パラダイム、2017年1月 - 2019年1月刊)
新刊の活動停止はしたが電子書籍で既刊の取り扱いを続けている出版社もある。
上記のレーベル以外にも書籍として出版されず、電子書籍として販売されているレーベルも多数存在するようになった。
音声媒体
オーディオブック
オーディオブックに関しては、書籍としての出版されているものはなく音声データのみの商品が主である。2012年にティーンズラブを含むレディコミ誌を多く扱っている宙出版より創刊されたYLCスイートキス文庫[18] から端を発して、2014年にはおとめ堂のマカロンブックス[19] やオトバンクのラブスワン文庫[20] が参入し、いずれも日本最大のオーディオブック配信サイトだったFeBe(現在のaudiobook.jp)から配信された。日本でのオーディオブック配信サービスにAudibleが2015年に加わると、2017年からフランス書院のティアラ文庫、KADOKAWAのTLスイートノベルの作品が配信された。
ドラマCD
また、別の音声媒体としてドラマCDなどがあるが、とりわけ特徴的なのはその内のシチュエーションCDである。シチュエーションCDもある程度ストーリーがあるのは他のメディアと変わらないが、一対一で声をかけられて性的な行為に及んでいると想定される対象が、聞き手になっていて、これはキャラクターと自分が恋愛関係に至るのを好むいわゆる「夢女子」向けに作られている。昨今はCDに限らず、音声データのみの販売も増えたが、ドラマCDのデータ配信の形のものは、(上記のオーディオブック配信サイトにもいくつかあるが)アニメイトグループのポケットドラマCD(ただしスマートフォン用)、アイオウプラスのハピドラといったサイトが専門的で豊富である。
ティーンズラブ漫画のドラマCD化も2017年頃から『保護者失格。一線を越えた夜』『漫画家とヤクザ』等のように、増えてきた。
アニメ
2017年には初のアニメ化作品『僧侶と交わる色欲の夜に…』が制作された。その後も同じ放送枠にてTL作品がアニメ化されている。
大概のティーンズラブアニメは放送局により対象年齢が異なる通常版と年齢制限が存在する。