ディラックコーン

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単層グラフェン電子構造。拡大図で示されるようなディラックコーンは、六角形の第一ブリュアンゾーンの頂点に対応して6つ存在する。

物理学において、ディラックコーン英語: Dirac cones)は、グラフェントポロジカル絶縁体などの物質にみられる、特異な電子輸送を記述する電子構造上の特徴である。[1][2][3]これらの材料では、フェルミ準位近傍において価電子帯伝導帯のバンドは円錐面の上下半分のような形状をとり、ディラック点と呼ばれる点で接する。

代表的な例としては、グラフェントポロジカル絶縁体、ビスマス、アンチモン薄膜、および新奇ナノ材料[1][4][5]が挙げられる。これらの物質は電子エネルギー運動量が線形な分散関係を持つため、フェルミ準位近傍では電子側で上向き、正孔側で下向きの円錐面をとる。この二つの円錐面は互いに接し、バンドギャップがゼロの半金属を形成する。

ディラックコーンの名称は、ポール・ディラックが提唱した、量子力学における相対論的粒子を記述するディラック方程式に由来する。グラフェンの等方的なディラックコーンは1947年P・R・ウォレス英語版が予言し、[6]2005年にノーベル賞受賞者であるアンドレ・ガイムコンスタンチン・ノボセロフによって実験的に観測された。[7]

運動量空間における傾いたディラクコーン。左端は傾きがないが、左から右に向かって傾きが増加している。右端はタイプⅡワイル半金属、それ以外はタイプⅠワイル半金属に対応する。

量子力学において、ディラックコーンは0次元ディラック点を除いて2次元逆格子空間で価電子帯と伝導帯が交差しない、反交差[8]の一種とみなせる。このコーンにより、電子伝導はキャリアである質量ゼロのフェルミ粒子の運動として記述され、理論的には相対論的なディラック方程式で扱われる。[9]質量のないフェルミ粒子は、量子ホール効果トポロジカル物質における磁気電気効果、高易動度をもたらす。[10][11]ディラックコーンは2008年から2009年にかけて、カリウムをインターカレートしたグラファイト化合物 [12]や、ビスマス系合金[13][14][11]において、角度分解光電子分光(ARPES)を用いることで観測された。

三次元物質において、ディラックコーンはエネルギーと結晶運動量の2成分(kx,ky)の線形な分散関係に基づく、二次元物質や表面状態の特徴である。これは三次元に拡張することも可能であり、エネルギーが(kx, ky,kz)のすべてに対して線形な分散関係を持つものはディラック半金属英語: Dirac semimetal)と定義される。これはk空間において、ディラック点で接する二重に縮退したバンドを持つ超円錐英語版)として現れる。[11]ディラック半金属は時間反転対称性空間反転対称性を保ち、一方が破れると二つのワイル点に分裂し、ワイル半金属となる。[15][16][17][18][19][20][21][22][23][24][25]2014年には、ディラック半金属であるヒ化カドミウムにおいて、ARPESを用いたバンド構造の直接観測が行われた。[26][27][28]

類似の系

ディラック点は、プラズモニクスフォノニクスナノフォトニクス微小共振器,[29]フォトニック結晶[30]など)といった多くの物理分野でも実現されている。

出典

参考文献

関連項目

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