デイヴィド・ゴティエ
From Wikipedia, the free encyclopedia
思想
社会契約論的正義論についての著作である『合意による道徳』では、いかなる道徳原理にも依拠せず合理性の観念(私的効用の極大化)のみから道徳ルールを導出する試みを展開した[6]。同著において彼は、ホッブズ流の社会契約論を批判し、囚人のジレンマ状況を国家などの強制的メカニズムによらずとも解決できると主張した。すなわち、囚人のジレンマに直面した人々は必ずしも「単純な最大化追求者straightforward maximizer」として自己利益のために「裏切る」のではなく、「制約された最大化追求者constrained maximizer」として他者が協力する限りで「協力」する。したがって、囚人のジレンマにおいては互いに「協力」か互いに「裏切る」かの組み合わせしかなく、しかも前者は後者よりもパレート優位にあるため、全員が「協力」するという組み合わせが自然に得られるのである[7]。
ゴティエの議論はロバート・トリヴァースらの進化生物学の研究を社会契約状況に焼き直したものであり、その意味で必ずしも目新しいものではないが、進化生物学ではプレイヤーたち自身は自然選択の結果として利他的行動を身につけるのに対し、ゴティエにおいては合理的に譲歩を考えるというプロセスが想定されている[8]。
道徳理論についてのこれらの業績に加え哲学史にも造詣が深く、特にホッブズとルソーの思想に詳しい。哲学以外ではライトレールにも関心がある[2]。